投稿日:2025年8月17日

パレット規格のJISとISOをまたぐ最適解で混載適合率を高める出荷戦略

はじめに:パレット規格混在のリアル、現場の困りごと

パレットは、今やサプライチェーンの心臓部といえる存在です。

しかし、日本の物流現場や製造工場では、JIS規格(日本独自)とISO規格(国際標準)の両方が混在して使用されていることが珍しくありません。

この規格の違いが、輸送効率の低下や積載率の悪化といった、現場の「もったいない」問題につながっています。

パレット規格をまたぐ運用の非効率さに気付きながらも、昭和時代の商流や現場文化、サプライチェーン全体の変化の遅さが、改善の大きな障壁になっています。

本記事では、JISとISOが混在する現状の理由を整理しつつ、混載適合率を高めるための現実的かつ新しい出荷戦略を、現場目線で具体的に提案します。

バイヤー志望の方や、サプライヤーでバイヤーの思考を知りたい方にも役立つ内容を目指しています。

JISパレットとISOパレット、なぜ今も併存しているのか

日本の物流史とJIS規格の“強さ”

日本国内で主流の「JISパレット」とは、主に1100mm×1100mm(通称「イチイチ」)サイズが代表的です。

このサイズは、昭和後期の鉄道貨物やトラック流通網の拡大期に、“日本国内での効率”を最優先に設計された規格です。

内需中心の時代、日本特有の流通網には本当にベストな選択肢でした。

さらに、パレット循環組合(PCA)や各業界の協会標準が強固に根付いており、今でも多くの大手メーカーや卸、物流会社で採用されています。

原因の一つは「現場現実主義」であり、従来設備・ラック・フォークリフトとの親和性が強いため、新規格への完全移行には大きなコストがかかることも要因です。

国際化の荒波とISOパレットの台頭

グローバル化の進展にともない、「ISOパレット」規格(例:1200mm×1000mm、1200mm×800mmなど)が荷主や現場に押し寄せてきました。

海外との輸出入が増えたサプライヤーは、現地倉庫やコンテナサイズに合わせてISOパレットへと移行せざるを得ませんでした。

とはいえ、全ての品目やルートで完全移行することは難しく、多くの製造現場では「JIS中心+ISO併用」が現在も標準的です。

規格混在による課題:物流現場の見えない“損失”

規格の違いによって、トラックやコンテナへの混載効率が著しく下がるケースが多発しています。

例えば、
– パレット間の隙間増大による「死にスペース」
– 積載時の転倒・荷崩れリスク増
– 荷役作業員の手間・動線悪化
– 複数パレット種類の管理負担増

など、「なんとなくマイナスだけど諦め」が現場の雰囲気です。

パレット規格混在の中での“混載適合率”を考える

混載適合率とは何か?

「混載適合率」とは、異なるパレット規格の商品を一台のトラックやコンテナに積み合わせる際、どれだけ“無駄なく”、“安全に”積載できたかを示す指標です。

混載適合率の向上は、物流コスト削減、CO2排出抑制、現場作業の効率化など、多面的メリットを生みます。

特に現代は物流2024年問題やサステナビリティ要求が高まっており、混載適合率向上のインパクトは非常に大きくなっています。

現実的な“最適化”が求められる理由

現場では、JISからISOに完全移行する“理想論”だけでは回らないのが実情です。

サプライチェーン全体の事情、各メーカーの設備制約、取引先ごとのバラバラな要求に日々対応しなければなりません。

従って重要になるのは、「規格をまたいだベストミックス」を見つけて、現状の中でも最適な解(出荷戦略)を追求するラテラルシンキング=“水平思考”です。

パレット規格の混在を乗り越える出荷戦略:現場視点からの解決策

1. 荷姿(梱包・包装)の“多様化設計”

日本の製造業では、梱包サイズがパレット規格ありきで設計されてきました。

ここに一石を投じるのが、「出荷先・用途ごとに最適梱包寸法を柔軟に設計する」アプローチです。

● 国内輸送便はJISパレット前提で段ボールサイズ(合わせ箱・多段積み等)を設計
● 海外向けはISOパレット合わせ(またはPallet-In-Pallet技法)を採用
● 混載出荷が想定される場合、積載面積の最大効率化を目指した“ダブルサイズ”・“モジュール梱包”を準備

このような“柔らかい設計思想”をサプライチェーン全体で共有すると、パレット混載時の隙間・無駄の大幅低減が可能です。

2. 共通部材パレットとアダプタ、リサイクルパレット利用

複数規格のパレット利用が不可避な場合、
・両規格のサイズをカバーできる「共通アダプタボード」
・リサイクル/再生パレットを一時的緩衝材にする
・コーナーパッドやスペーサーを積極活用
といった手法が有効です。

工場現場で再利用・簡易補修できる部材の運用ルールを設けることも、SDGs視点・現実的コスト両面で大きな効果があります。

3. 混載シミュレーションツールの導入

昨今は“パレット積み付けシミュレーション”などのICTツールの精度が飛躍的に向上しています。

パレット規格混在下で、
・混載可能な最大積載パターン探索
・転倒・荷崩れリスクをAIで予測
・現場作業員のミス防止

といった観点で、ぜひ活用を検討してください。

誰もが使える操作性のツールを、現場リーダーから管理職・バイヤーまで事前打ち合わせや物流会社との連携に役立てることで、“ベストミックス”を現実化できます。

4. サプライヤー・バイヤー間でのパレット規格ガイドライン共創

パレット規格の最適化は現場任せだけでなく、サプライヤー/バイヤー間での「標準化協議」が重要です。

・一部得意商品は国内国外共通規格への段階的切り替え
・主要出荷ルート別に“積載優先順位表”を策定
・サプライヤー側もバイヤーの輸送コスト構造を理解=提案力向上

など、「共通ルールの合意形成」が安定した調達・供給の要となります。

大手量販店やグローバルメーカーの中には、「パレット持込規定」「規格混載NG」など厳しい条件をつける場合もあります。

これに機械的に従うのではなく、パートナー関係を築き、現場で蓄積したデータや“やってみて分かった知見”をフィードバックし合うことで、パレット規格問題の“最適解”創出が進みます。

5. 必須観点:長持ち・SDGs・働き方改革

古いJISパレット使い回しは、劣化や欠損で現場事故や異物混入を招くこともあり、品質・安全の要になります。

また、パレット軽量化や再生利用は運送業界のドライバー不足問題、働き方改革推進(重労働緩和)にも直結します。

SDGs目標(12.つくる責任、使う責任/13.気候変動対策)にもリンクするため、担当者・管理者は「パレット業務=未来のサプライチェーンづくり」の一部であるという認識を持って取り組むべきです。

これからのパレット規格戦略、“超実践”のススメ

未来志向の仕組みづくり、現場の声を活かす

現場では「昔からこうだから」「決まっているから従うしかない」と諦めがちでした。

しかし、サプライチェーン全体の最適化にとって、「最前線で起きているリアル」「何が本当に困るのか」という生の声ほど、強力な変革の種はありません。

現場での“トライ&エラー”、積み重ねた経験知のデータ化、ICT活用によるシミュレーションとフィードバック、それをもとにした標準化ルールの改善を、20年後・30年後も持続可能なサプライチェーンのために回していきましょう。

ラテラルシンキングで新境地を切り拓く

パレット規格に正解はない――。ですが、
「どのサイズが一番効率的か」
「現場の工夫で何がどこまでできるか」
「サプライヤー/バイヤー間で本音をぶつけ合えるか」
こうした水平思考(ラテラルシンキング)で現場の課題を徹底的に掘り下げ、未来志向で組み立て直すことが、業界全体の発展に貢献する最も確実な道です。

まとめ:誰もが「動ける」「変えられる」パレット改革へ

パレット規格問題は、決して一部の専門家に留まるテーマではありません。

製造現場・バイヤー・サプライヤー、さらには物流・環境に至るあらゆるステークホルダーが、
“目の前の現状”を直視し、“柔軟かつ実践的な最適化”を積み重ねていくことで、必ずや全体の効率化と持続可能性向上へつながります。

この記事をきっかけに、現場の「声」と「アイデア」をもとに一歩踏み出し、パレット規格混在を超えた日本のものづくり・物流の未来を共に創造していきましょう。

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