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保冷剤の凍結持続時間を延ばすゲル組成と充填比率の最適化

目次
保冷剤の凍結持続時間を延ばすゲル組成と充填比率の最適化
はじめに ― 製造現場で「保冷剤」はなぜ重要か
製造業、物流業、そして食品・医薬品など幅広い分野で、保冷剤は現場の“縁の下の力持ち”として根強い存在感を誇ります。
特に近年は、厳格な温度管理を求めるコールドチェーンの需要が著しく高まる中で、保冷剤の性能向上は各現場において喫緊の課題となっています。
中でも「凍結持続時間」、すなわち溶けずに冷却効果を提供し続ける時間は、物流クレームの削減や品質維持に直結するため重要指標です。
本記事では、保冷剤の凍結持続時間向上において、現場で実際に効果があった「ゲル組成」と「充填比率」の最適化ノウハウを、実践目線で詳しくご紹介します。
昭和末期から令和にかけ、アナログ慣行から抜け出せていない点や業界ならではの悩みにも言及しつつ、サプライヤー、バイヤー双方に役立つ知見の深掘りを目指します。
1. 保冷剤の基礎:一般的なゲル成分と充填の特徴
一般的なゲル組成の主流成分
保冷剤は、内部に水や吸水ポリマー(高分子ゲル)、防腐剤、安定剤などを配合しており、主成分の多くが水です。
従来主流だったのは以下の通りです。
– 精製水
– ポリアクリル酸ナトリウム(超吸水性ポリマー)
– グリセリン
– プロピレングリコール
– セルロース系安定剤
これらをブレンドすることで、保冷剤の「保水性」「保形性」「漏れ防止」などの機能が調整されています。
充填比率と物性の関係
保冷剤の袋内にどの程度ゲルを詰めるか、いわゆる「充填比率」についても現場では議論が絶えません。
充填し過ぎれば重く、経済性が悪化します。
逆に充填が薄いと早く溶けてしまい、「使い物にならない」クレームが出ます。
この絶妙なバランスを決する要点は、単純な量ではなく凍結持続時間と現場用途、物流ルートと連動したトータル最適化の目線です。
2. 凍結持続時間を延ばすためのラテラル思考
ラテラルシンキングで発想する組成最適化
「凍結持続時間=ただ水分量を増やせばよい」と考えがちですが、現場ではむしろ逆の現象も起きます。
なぜなら単水ゲルでは氷解後に液体が流動し、冷却接触面が減るためです。
ここでラテラル思考の出番です。
– 相変化素材(PCM※)の活用
– 多層ゲル構造の設計
– 架橋密度の操作による比熱容量の制御
これらの応用によって、単なる「保水ゲル」から「熱エネルギーを長く溜める蓄冷素材」に進化させることができます。
※PCM…Phase Change Material(潜熱蓄熱材)
複合ゲルの事例――耐久・衛生・物理特性のトレードオフ
生鮮食品向け、医薬品向け、高温・長距離流通向けなど、用途ごとに最適な複合素材が求められてきました。
代表的な機能性付加の例には次のようなものがあります。
– PCM添加:比熱容量と融解潜熱を拡大し、同重量で凍結持続時間が20%以上延長
– 疎水性ポリマー混合:結露や漏れのリスクを大幅に低減
– 抗菌・防腐成分配合:再利用や安全対策強化
これらは材料費の増大や充填加工時の粘度制御が課題となる一方、結果的な品質ロスと再納品コストの削減効果の方が上回る場面が増えつつあります。
3. 充填比率の最適化 ― 業界ごとの慣行と改革のポイント
昭和から続く「見かけ量重視」の落とし穴
多くの老舗メーカーでは「大きく、重く」の美学が根強く残っています。
「この製品にはこれだけ必要」と決めてしまい、10年単位で設計変更がない例も珍しくありません。
しかし実態は、輸送箱や外装梱包の断熱スペック、輸送時間や温度帯のシミュレーションなど多角的な視点が欠かせません。
最新の最適化事例:AI・IoT活用の局所改善
ある欧州大手メーカーでは、輸送温度計測センサーを搭載したロガー情報を基に、「使われ方」を蓄積し、新規ゲル組成と充填比率のABテストを繰り返しています。
日本国内でも、最近になって生産管理システムやMESと連動した「現場ヒアリング→配合見直し→短期ロットリリース→フィードバック回収」といったイテレーティブな開発が増えています。
– 出荷前の凍結時間管理
– 物流経路ごとの温度分布解析
– 反復改善のPDCAサイクル
このような取り組みを“負けず嫌い”の現場職人と管理職が一丸となって行えば、たとえ中小工場でも大資本に負けない独自競争力を確立できるのです。
4. 保存・使用現場での運用改善もセットで考える
「溶けにくさ=温度管理全体」で最適化を
どんなに優れたゲル組成や充填比率でも、「出荷時の凍結不足」「庫内の温度ムラ」「実際の使用タイミングのバラつき」など現場運用の課題が残ると、持続時間の優位性は発揮されません。
冷凍ストッカーの開閉頻度や、出荷直前の凍結庫内予冷、適切な冷却ガイドの同梱――こうした地味な工夫も、現場全体の保冷パフォーマンス向上には大きな要素となります。
「使い方提案」まで含めた営業力が付加価値に
サプライヤー側が納品時に「この保冷剤はこう使ってほしい」「詰め方で違いが出ます」とエビデンス付きで提案できる企業は、価格競争だけに陥らない“選ばれるパートナー”になっています。
ちょっとしたノウハウ提供が、「御社の保冷剤は安心して任せられるよ」という現場の信頼を生むのです。
5. バイヤー・サプライヤーそれぞれが知っておきたい最適化のコツ
バイヤー視点 ― コストだけでなくTCO発想へ
従来は単価、ロット、納期を軸に選ばれてきました。
しかし、凍結持続性能にムラがあると、品質保証・再出荷・顧客クレームなど目に見えないコスト(TCO=トータルコスト)に跳ね返ります。
「凍結持続試験データ」「使用現場での比較レポート」「用途別推奨品」の情報開示を積極的に求め、“安いだけ”から脱却したバイイングがこれからは重要です。
サプライヤー視点 ― 他社に先駆けた新提案を
昭和の「言われた通り作る」から、令和の「使い勝手や現場困りごとに踏み込む」営業力へ。
たとえば、
– 競合品より20%長持ちする実証データ提示
– 印刷や封入物で「正しい使い方」を明示
– 再凍結・可変型保冷剤など小さなイノベーション
こうした現場密着型の改善提案は“古い業界と思われがちな保冷材”の印象を一新し、差別化の武器となります。
6. まとめ ― 凍結持続時間最適化のための3つの具体的アクション
1. ゲル組成そのものの機能性アップ、相変化素材や複合高分子の導入
2. 充填比率の定量化&用途に応じた運用改善の徹底
3. 使い方・運用現場の情報収集と共有による現場起点の最適化
アナログな現場慣行を脱し、プロとして“ラテラル(水平)発想”で最適化し続けることが、これからの製造業、物流業の競争優位の源泉となります。
正解は現場とともに進化します。
日本のものづくり現場から、次世代の保冷剤価値創造を一緒に切り拓いていきましょう。
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