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JIS規格とISOのギャップを埋めて過剰仕様を削るコスト最適化

目次
JIS規格とISOのギャップを埋める意義とは
製造業におけるコスト最適化の重要性が年々高まっています。
経済環境の変化、原材料価格の高騰、サプライチェーンのリスク増大などの要因に加え、従来の「昭和モデル」からの脱却が迫られている今、企業は限られた資源で最大の価値を創出するための方策を模索しています。
その中核に位置するのがJIS規格とISO規格の「ギャップ」をどうマネジメントするか、すなわち国内特有の標準(ローカルルール)とグローバル規格の違いをどう扱うかという問題です。
過剰仕様、すなわち「本当に必要か?」と疑問符がつくほどの厳しいスペックや管理項目は、長年日本の製造現場の品質を支えてきた側面もありますが、一方でコストやリードタイムの足かせにもなっています。
本記事では、JIS規格とISO規格の特徴や違いをベースに、現場で実際にどのようなギャップが発生しているか、そしてその「過剰仕様」をどう見直し、コスト最適化につなげるかについて、実践的な視点で考察します。
JIS規格とISO規格、それぞれの特徴を正しく理解する
JIS規格の特性と現場での浸透度
JIS(日本産業規格)は、国産の製品や部材、プロセスの標準化を目的とした日本独自の規格です。
戦後の工業発展を強固に支えてきた歴史と実績があります。
JISには「安全」「互換性」「性能」「作業性」「品質保持」といった観点から、極めて厳密で緻密な基準値や検査方法が定められており、日本のモノづくり現場で長年重視されてきました。
製造現場においては、「JISに準拠していれば安心」という意識が深く浸透しています。
安全・安心・トラブル未然防止というメリットの裏側で、「JIS以上のことをしておけばクレームにならない」といった形式的安全志向から、不要なまでの検査や管理、過剰な材質・工程指定を生んでいる現状も数多く存在します。
ISO規格のグローバル目線と柔軟さ
ISO(国際標準化機構)の規格は、国際間の取引や品質保証のために設けられた共通基準です。
ISO9001(品質)、ISO14001(環境)など各テーマごとに規格が存在し、国を横断した市場で通用するための「共通言語」の役割を果たしています。
JISに比べて「最善よりも最適(適合)」を強調する傾向があり、個別企業や業界の事情に合わせた柔軟な運用が認められています。
そのため、同じ製品・構成部品であっても、グローバルプレーヤーはISOレベルでの仕様・管理にも対応できるスリムな現場運営を実践する企業が多い傾向があります。
JIS-ISOギャップ:どんな「過剰仕様」が現場に根付いているか
「JISお守り」に起因するダブルスタンダードの現実
例えばある自動車部品メーカーでは、海外展開する車両で「ISOベースの仕様書」を欧州拠点用に展開しつつ、国内生産向けでは「JIS+独自基準」の二重帳票・二重検査を長年続けていました。
これにより現場負荷が増大し、しかも抜本的なコストダウンが実現できない状態に陥っていました。
また調達側(バイヤー)は、部材コストをISOレベルで設計・発注していても、サプライヤー側(土着の現場)が「JISでなければ不安」というスタンスを崩さないため、商流のどこかで無駄な仕様書フォローや証明書提出が発生しがちです。
許容公差と品質の「オーバースペック」化
たとえば板金部品に関するサイズ公差や外観検査の基準を挙げてみます。
「規格上±0.1mmで良いはずのものを、過去クレームを恐れて±0.05mmにしている」「外観キズの検査基準をJIS規定より遥かに厳しく運用し、“不適合”が出るたびに再検査や再加工をしている」など、事実上の“オーバースペック”が常態化している現場は少なくありません。
このような慣習は品質を高める一方で、歩留まり低下、手直し工数増加、最悪の場合は本来の設計機能を満たしている部品が「不良」になってしまうなど、無駄なコストの温床となります。
現場目線でのギャップ解消・コスト最適化プロセス
現行仕様「なぜ・なぜ分析」による過剰仕様の棚卸し
ギャップ解消するための第一歩は、「なぜその仕様にしているのか」「誰がその基準を求めているのか」をエビデンス付きで掘り下げていく作業です。
設計・技術・品質保証・製造・調達など、それぞれの部署が個別に防衛線を張ると「前例踏襲」や「暗黙のルール」が独り歩きしがちです。
ここで有効なのが、トヨタでも用いられる「なぜを5回問う」手法です。
たとえば「この検査工程はなぜ3回もやっているのか?」「本当にJIS以上の厳しい基準でなければいけないのか?」など、事実・データ・顧客要望を根拠に徹底的に洗い出し、現場管理者・サプライヤーが一体となって俯瞰的な見直しを行います。
バイヤー・サプライヤー間での「根拠ある合意形成」
バイヤー側は「適合すれば問題ない」というグローバル目線を持ちつつ、サプライヤーの「これまでの安心・安全」を100%否定するのではなく、根拠をもとに着地点を共に探る姿勢が重要です。
たとえば、重要管理点については「JISとISOの両方でどんな違いがあるか?」を比較表で見える化し、「なぜ日本独自項目が必要なのか」「どこまでISOベースに寄せられるか」現場ヒアリングも交えた議論を持ちます。
その上で、納入仕様書や図面に「この公差までは国際標準、もし超えるなら顧客特性に応じ再考する」と明記することで、不必要なコストを事前に排除できるのです。
品質トラブルの本質と「部分最適vs全体最適」のジレンマ
ギャップ解消の途上では、短期的には「何かトラブルが出たらどうする?」という現場目線のリスク懸念が噴出します。
しかし、大切なのは「全体最適」の視点、すなわち「顧客満足×品質保証×コスト効率」の三つ巴バランスを高みから俯瞰し、部分的な最善(個人の安心感)に沿いすぎないことです。
たとえば、ISO基準に一本化したことで一時的に不良率が上がったケースでも、真因が設計や工程の異常要因であれば、過剰管理ではなく「本質的な再発防止策」で乗り越えられる環境づくりが成長ドライバーとなります。
進化する工場とアナログ業界の課題:DX時代の標準化戦略
昭和モデル脱却への第一歩は「データで語る文化」
昭和モデルの工場現場では、ベテランの知見や勘・コツが重視される場面が今なお多く存在します。
仕様見直しに関しても「前回同じ仕様で運用できたから大丈夫」「今までこれでトラブルがなかった」といったフィーリングベースの判断が色濃く残ります。
しかし、デジタル化・DXの波は着実に進んでいます。
過剰仕様を排除していくには、工程データ・不具合発生率・コストインパクトなど「見える化された情報」を軸に現場設計者やバイヤー、サプライヤーがオープンに語り合う文化への変革が必要です。
これによって、「何となくの安心感」というアナログ的感覚に依存せず、「事実とデータをもとに最適仕様を追求する」意識が醸成されていきます。
デジタルツール活用による仕様最適化のすすめ
最近注目されているのが、AIやIoTデバイスを用いた「実データに基づく工程管理」や、「異常検知アルゴリズムによる品質保証」です。
かつては人手頼みだった検査工程も、画像処理AIによる安定運用が進み、「どのレベルの瑕疵ならば影響がないか?」を大量データから客観的に算出できるようになっています。
これにより、「JISだから安心」といった従来型判断を脱し、「本当に必要な品質基準はどこか?」を動的に見直すことが可能になっています。
まとめ:ギャップ管理がもたらす製造業の新しい地平線
JIS規格とISO規格のギャップ、そして過剰仕様の問題は、一朝一夕で解決するテーマではありません。
しかし、「なぜそれをするのか」を現場・経営層・バイヤー・サプライヤーが共通言語として持ち、根拠ある合意形成・設計変更を追求することができれば、無駄なコスト・工数の削減、全体最適の生産体制構築が現実のものとなります。
アナログな慣習に根ざした業界ほど、「なぜ?」を問うラテラルシンキングと、デジタル活用による事実分析が新たなブレイクスルーの鍵となるのです。
昭和の伝統と令和の革新を融合させ、製造業の発展と次世代のバイヤー・サプライヤーがともに成長できる組織づくりを目指して、今こそ現場から「過剰仕様の見直し」に一歩を踏み出しましょう。
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