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お菓子袋の密封性を高めるヒートバー温度と圧力時間の最適化

目次
はじめに:お菓子袋の密封の重要性
お菓子の包装袋は、私たち消費者にとって商品の「顔」であり、味や香り、新鮮さを守り続けるための要です。
密封性が低ければ、湿気や酸化で品質が損なわれ、せっかくの美味しさが失われてしまいます。
また、どんなに高品質なお菓子であっても、袋が簡単に開いてしまうなどのトラブルがあれば、クレームにもつながりかねません。
特に現代社会では食品ロス・衛生意識の高まりから、包装品質への要求が一層厳しくなっています。
にもかかわらず、製造現場ではいまだ昭和的な“カンと経験”に頼りがちな面も見受けられます。
本記事では、お菓子袋の密封性を高めるためのヒートバー(シールバー)の「温度」「圧力」「加熱時間」の最適化について、現場での課題や最新動向も交えつつ、実践的なヒントを共有します。
お菓子袋の密封性はなぜ難しいのか
多様化する包装フィルムの素材
かつては単層のポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)が主流でした。
しかし、現在は内容物や保存期間に応じて、酸素バリア性の高いナイロンやエチレンビニルアルコール(EVOH)、耐熱・耐冷・耐油コーティングなど多層のラミネートフィルムが普及しています。
これら複合素材はそれぞれ“溶けやすさ(シール性)”や熱伝導率が異なるため、一筋縄ではいきません。
「昔からこの温度でやっている」「この圧力なら大丈夫」といった属人的な経験則が通用しなくなっています。
量産現場の“スピード”要求との兼ね合い
お菓子製造の現場は、とにかく生産スピード重視。
1分間に百袋単位で高速シールを行う場合、温度・圧力・時間のバランスが一瞬でも狂うと、密封不良や袋破れ、袋の焦げといった問題が連鎖します。
しかも、密封不良は外観からは分かりにくいため、出荷後の異物混入や品質クレームにまで波及するリスクがあります。
このように、多様化・高速化のはざまで、「再現性が高く・歩留まりよく・コストパフォーマンスに優れた密封」を実現するためには、科学的アプローチと現場の知見の両方が必要です。
ヒートバーシールとは何か?基礎知識の整理
ヒートバーシールの原理
ヒートバーシールとは、ヒーターが内蔵された金属バー(ヒーター付きアタッチメント)を使って、包装袋の口を加熱・加圧し、フィルムの樹脂層同士を熱で溶着させる技術です。
フィルムの種類や厚みに応じてバー温度を調整し、設定した圧力で決められた時間挟み込みます。
ヒートシールでは以下3要素が密接に絡み合います。
- 適切な加熱温度(T)
- 必要充分な圧力(P)
- 適正な保持時間(t)
この「T・P・t」の調和が取れていなければ、完全密封も高速生産も到底実現できません。
シール不良の主なパターン
製造現場で遭遇するシール不良は主に以下の通りです。
- シール部が開封しやすい(シール強度不足)
- 袋内に空気が漏れやすい(ピンホールやシール漏れ)
- 袋端が破れる(圧力過多・温度過多によるフィルム切れ)
- フィルムが波打つ、溶けすぎて外観不良(過加熱)
このような不具合は、多くの場合「T・P・t」のバランス崩壊や、フィルム素材との“相性”の齟齬で発生します。
ヒートバー温度の最適化ポイント
素材ごとの「融着温度」を把握する
多層フィルムの場合、表層や中間層の融点(溶ける温度)が違うため、袋の密封はシール層(一般的には最内層)が適切に溶けることが重要です。
例としてPE系樹脂であれば110~130℃、PP系なら130~150℃が目安。
高機能バリア材・耐熱材料なら更に高温が必要になる場合もあります。
現場では、フィルムメーカー提供の「融着開始温度」と「最適シール温度」を参考にしたうえで、実機テストでプラスマイナス5℃単位で温度レンジを調整するのがお勧めです。
加熱ムラをなくす装置点検の重要性
ヒートバーの機械部にも注意が必要です。
経年劣化やヒーターの断線、センサーのズレで、実際には設定温度よりも低かったり、熱ムラが局所的に発生するケースも珍しくありません。
面倒でも年2回程度は温度分布の実測やサーモグラフィによる点検を行うことで、歩留まり向上につながります。
最適な圧力と圧力時間の見極め方
「高圧」こそリスク 〜やりすぎ注意〜
「しっかり密封したいから圧力を高く」と考えがちですが、加圧しすぎることでフィルムが薄くなりすぎたり、内部構造が劣化し、逆にピンホールやシール破壊を招くことがあります。
1平方センチあたり0.1〜0.4Nが一般的な目安ですが、最近はより薄肉・高バリアな素材が増えており、必要以上に圧力をかけないことが事故防止につながります。
シール時間を短縮しすぎないコツ
生産性アップの名目で、シール時間(圧着時間)を極端に短くすると、しっかり溶着する前に冷却が始まり、接着不足の原因に。
繰り返し実装テストを行い、最小限のシール時間で「脱気後もしっかり保持されるか」を必ずチェックしましょう。
シール品質を左右する“見落としがちな”現場要因
フィルム原反のロット差
同じメーカー・同じ品番のフィルムであっても、製造ロットごとで若干の厚み差・樹脂グレード差が発生することがあります。
この「見えない誤差」が現場で“突然歩留まりが落ちる”主因になることもあるので、ロット替え時には必ず条件再確認しましょう。
製造現場の温湿度変化
冬場の乾燥や、夏場の高湿は、フィルムの静電気や気泡発生・接着性低下の要因になります。
ヒートバーの温度管理だけでなく、製造室のエアコンや加湿器による安定した環境整備も密封向上には不可欠です。
異物混入・粉や油分による密封不良
お菓子によく付着する微細な粉や油分が、シール部にはさまると部分的にくっつきが悪くなり易いです。
前工程でしっかり払う、フィルム供給コンベアの清掃を徹底するなど、小さな工夫が大きな品質差に直結します。
新時代の密封性向上策~最新動向とラテラルシンキングのすすめ
AI・IoTの導入効果
最先端の工場では、ヒートバーの「温度・圧力・時間」をセンサーで常時監視し、AIで最適値を即座に算出・自動補正するシステム導入が進みつつあります。
シール不良のパターン学習や、未来の歩留まり予測にも役立つため、属人的な“カン頼りのものづくり”から脱却する大きな突破口となるでしょう。
アナログ現場の“ちいさな一歩”改革
一方、まだアナログ主流の中小工場でもできる工夫としては、下記のような着実な積み重ねが有効です。
- 毎日の「シール強度」10袋抜き取り検査(簡易引っ張り試験)
- 過去のトラブル事例と写真付きの現場マニュアル蓄積
- 現場スタッフからの“小さな気づき”の見える化・共有
ラテラルシンキング的発想で、「現場のお困りごと」や「異常データ」をムダとせず、日々改善の種として捉え続けることが、品質革命への道となります。
サプライヤー・バイヤーにとっての最適化とは
サプライヤー側は、フィルムの「適正シール温度・圧力範囲」を明確にデータ提示することで、ユーザー現場の条件出しを強力にサポートできます。
一方、バイヤーは、密封性と生産効率、原価・環境性能のバランスを見極める“審美眼”が求められています。
現場と開発・経営層、さらには原材料サプライヤーの三者が「密封条件=品質の基準点」として情報共有しあうことこそが、これからの製造業・調達バイヤーの鍵になるのです。
まとめ:密封性最適化は現場×知恵×データの三位一体で
お菓子袋の密封性最適化は、ヒートバーの温度・圧力・時間の科学的な追求はもちろん、現場環境や改善活動、素材メーカーとの〈共創〉によってさらに引き上げられます。
そして、現場スタッフ一人ひとりのカン・経験・発想力を大切にしながら、既存の考えにとらわれないラテラルシンキングで品質革命につなげていきましょう。
どんなにAIやデジタルが進歩しても、最後は「現場を知る人」の目線と“深掘りする力”が、製造業の未来を切り開くのです。
製造現場の皆さん、サプライヤー・バイヤーの皆さん、一歩先の密封品質改革にぜひチャレンジしていきませんか。
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