お菓子袋のパリッと音を生むフィルム厚と多層構造の最適化

はじめに―パリッと音が生まれるまでの現場視点

お菓子の袋を開けたとき、その「パリッ」と響く小気味いい音。
実はこの音、ユーザー体験や製品イメージの観点から非常に注目されています。
おいしさや新鮮さを感じさせる視覚・味覚・嗅覚はもちろん、聴覚が与えるインパクトが意外と大きいことが、近年の調査でも分かってきました。

製造業の現場としては、「パリッと音を出す」ために、ただフィルムを厚くするだけが正解ではありません。
最適なフィルム厚、多層構造の設計により、品質とコスト、加工性、そしてユーザビリティのバランスを実現する必要があります。
この記事では、現場管理者の目線から具体的な工程や課題、その対策までを深く掘り下げて解説します。

フィルムの役割とパリッと音の関係性

パッケージフィルムに求められる基本性能

お菓子の袋に使われるフィルムには、次のような基本機能が求められます。

– バリア性：湿気や酸素を通さず、お菓子の品質を守る
– 機械的強度：流通・陳列時に破れない
– 加工性：自動包装機に適応しやすい
– 印刷適正：鮮やかなパッケージデザインのための表面性
– 開封のしやすさ：ミシン目や切り口で、消費者が開けやすい

この中でも「パリッ」という音は、主にフィルムの厚み・構造と深い関係があります。

「パリッ」音、実は機能訴求の重要ポイント

お菓子メーカーやパッケージサプライヤーにとって、「パリッと音がするフィルム」は、単なる付加価値ではありません。
消費者心理に直接働きかける感覚品質として重視されています。
パリッと開けることで、お菓子が「新鮮である」「密封されていた」印象を強く与えられます。
音がしない、または鈍い袋は、おいしさへの期待を下げてしまい、ブランドイメージさえ損なう恐れがあります。

フィルム厚と多層構造の最適化の実際

フィルム厚の決め方

お菓子袋の標準的なフィルム厚は、約30～60ミクロン（μm）が多く用いられています。
フィルム厚が薄いと、包材コストや環境負荷は下がりますが、「パリッ」とした音や機械的強度が犠牲になりやすいです。
逆に厚くしすぎればコスト増加や加工性の低下、お菓子の開封時に必要以上の力がいるなど、ユーザー体験が損なわれやすくなります。

現場では次の3つの観点から厚みを決定します。

1. 製品保護性能（バリア性・層数とのバランス）
2. 加工ラインでの安定稼働
3. パリッと音の発生具合とユーザビリティの両立

ですので、安易な厚さの変更やコストダウンで音が弱くなると、販売に直接影響しかねません。

多層構造フィルム設計の工夫

パリッと音を生み出す主なポイントは多層フィルム構造にあります。
現場で多く用いられるのは以下のような組み合わせです。

– 表層：PET（ポリエチレンテレフタレート）やOPP（延伸ポリプロピレン）
– 中間バリア層：アルミ蒸着、エボキシ、EVOH樹脂層
– シール層：リエチレン系樹脂（LLDPE等）

種類や順番、各層の厚みを微調整することで、開封時に「パリッ」と響く音を高めやすくなります。

パリッと音にこだわる現場実務

実験・シミュレーションの現場

新たなお菓子の袋を開発する際、パッケージサプライヤーと製品開発チームは、サンプルを何度も作成・開封を繰り返します。
そして、音質や音量を数値化したり、官能評価（人による評価）を行ったりして最適化を進めます。

近年は、数値的な音響評価システムも取り入れられており、データに基づく設計も進化しています。

1. フィルムサンプルを定量的に開封
2. マイク・録音装置・解析ソフトで音波データを取得
3. 音の強度・周波数特性・残響性などを計測
4. パネルによる主観評価との比較

こうした地道な積み重ねから、理想とする開封音に近づけていきます。

加工合理化と「昭和的」課題の共存

製菓業界の現場では今なお、現場対応力やベテランの「勘」が重要な役割を担っています。
デジタル化・自動化が進む一方、フィルムのわずかな違い、印刷工程での静電気やしわ、製袋機の調整といったアナログ的試行錯誤も残っています。
これは昭和から続く現場文化の良さであり、時には非効率とも感じられがちですが、精緻な味付けや包材開発には欠かせない部分です。

一方、海外の大規模ラインや自動倉庫では、よりシステム化されたプロセスが急速に普及しています。
国際競争力をつけるためにも、両者の長所を活かしたラテラルシンキング（水平思考）が今後ますます求められるでしょう。