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ODM開発における“試作回数”の最適化

目次
はじめに:ODM開発現場が直面する「試作回数」の課題
ODM(Original Design Manufacturing)は、日本の製造業にとって今や重要なビジネスモデルの一つです。
クライアントのブランドで製品を設計・製造するODM開発は、単なる受託製造(OEM)に比べて、設計力や生産管理、調達力に加え、市場のニーズを的確に捉える力が問われます。
そんなODM開発で避けて通れないのが、「試作(プロトタイプ)」です。
新規開発製品においてクオリティ、コスト、納期を満たすため、私たちはどれだけの試作回数を設定すべきなのか――。
現場では「とりあえず何回かやってみて、うまくいくまで繰り返す」ケースも少なくありません。
ですが、「試作回数の最適化」は利益にも納期にもクライアント満足にも大きく関わる重要事項です。
この記事では、製造業の現場で20年以上培ったノウハウと、昭和から令和に至るまで変わらぬ現場の実情も交えつつ、「ODM開発における試作回数の最適化」について実践的な視点から深掘りしていきます。
なぜ試作が不可欠なのか――ODMならではの事情
ODMプロセスの全体像
ODMでは、受託側が設計、部品調達、生産プロセス、品質保証まで主導します。
ブランド側が提示するだけでは曖昧なニーズを、設計仕様や製造方法といった形に具体化する作業は、しばしば「現場合わせ」の連続です。
この際、要件定義→設計→試作→検証→量産へという一連の流れの中で、現物で確認しなければ分からない・決めきれない事項が多数発生します。
“一発OK”はほぼありえない
設計書やシミュレーションだけでは解決できない「作ってみないと分からない」課題――すなわち
– 意図通りの機能・性能が実現できているか
– 部品調達制約への対応力
– 生産性・歩留まり問題
– コストとの兼ね合い
こうした問題は、試作によって“実際のモノ”に起きる挙動を検証するプロセス抜きにはクリアできません。
と同時に、「何度もやり直すことで品質が上がる」という現場発想も根強く残っています。
しかし、いたずらに試作回数を増やせばコストも納期も膨れ上がり、本来のODMの価値が損なわれる結果となりかねません。
試作回数を最適化するための基本論点
どこまで詰めるか? ―設計&要件定義の段階から勝負は始まっている
試作回数を最適化するキーポイントの一つが、「設計および要件定義段階で、どこまで精度を上げられるか」です。
以下の工夫が試作の効率に直結します。
– 市場・競合動向、必要なコスト・機能の明確化
– 開発フェーズごとの“確認ポイント”をビジュアル化
– 発注側・受託側のコミュニケーションレベル向上
– 既存部品・共通設計思想の最大活用
設計情報の「ボヤけ」が後工程での手戻り(=追加試作)を生むことを、バイヤー・サプライヤー双方が強く認識する必要があります。
昭和的現場の“カンと経験”が機能する場面・しない場面
「昔からウチはこの手順で3回試作すればだいたいOKだった」
こうした昭和的な属人的運用も、アナログ業界の現場ではまだ色濃く残っています。
もちろん、過去の膨大な試作データやベテランの経験則は極めて有益です。
しかし近年は、複雑化する電子部品の調達リスクや短納期対応、多様化する顧客要件のために「カンだけで回す」時代は終わりつつあります。
経験則を活かしつつ、デジタルシミュレーションやAI解析、工程FMEA等の手法も並行活用することが大きな差を生みます。
ODM試作回数は「何回」が正解なのか?
一般的な開発フローにおける試作回数モデル
多くのODM現場で、下記のような試作回数モデルが見られます。
1. 一次試作(設計妥当性検証):設計通りに動くかを確認
2. 二次試作(量産性・歩留まり検証):製造工程が成立するかを確認
3. 最終試作(品質・信頼性検証):外観、機能、信頼性など最終評価
この「3回モデル」が現場の暗黙知として根付いています。
しかし、実際には
– 量産相当部品の調達リードタイム
– サブサプライヤーの技術力
– 顧客要望の曖昧さ
– 現場の工程制約
など多数の要因が状況ごとに絡み合い、回数だけで語るのは実態に即していません。
先進現場で進む「試作レス開発」への挑戦
AI/CAE活用が進む自動車やエレクトロニクスの世界では「バーチャル試作」や「シミュレーション駆動開発」が台頭してきました。
3Dプリンターによるスピード試作や、設計段階でのデジタルツイン活用によって、現物試作を「1回だけ」に絞り込むフローも生まれています。
ただし
– クライアントの文化や現場の納得感
– 認証・認定試験に現物が必須
– 部品メーカーの選定・評価
など、現時点で100%試作レス化できる案件は限られます。
現実的な最適回数の決定手順
実践的な現場では、「1回で済ませるのは理想、3回が現実的、4回目以降は緊急事態」と考えています。
重要なのは、
– 試作ごとの目的を徹底明確化
– 全試作スケジュールへの天井設定
– 大型修正が起きたら試作フロー全体を見直す
これを漏れなく実行することです。
ODM現場での試作回数削減テクニック
発注者・バイヤー側ができること
– 仕様変更や要望変更を極力抑制
– 試作時点での判定基準を明文化
– 初期段階でサプライヤーと十分な情報交換実施
– 工場見学や現場工程の実地確認を奨励
これらは、“そもそも無駄な試作を生まない”最も効果的な打ち手です。
サプライヤー側ができること
– 過去試作データベースの活用
– デジタルシミュレーションの標準化
– 試作計画の“見える化”と進捗管理
– 工程内異常や不具合のリアルタイム共有
– 分析力の高さを提案資料や現物で示す
これらを遂行することで、発注側の信頼を高め、「次回の試作なし」への合意形成が進みます。
ODM現場に強く根付くアナログ思考の“罠”と、それでも活きる知恵
昭和から続くアナログな慣例には、「現物主義」「とにかくやってみる」「報連相の文化」など、今の開発現場に通じる良い部分も多々あります。
一方で、無目的な追加試作、属人的な進め方、データ未活用など、スピード経営を阻害する要素も明確です。
「なぜこの試作が必要か」と立ち止まって再考し、現場知とデジタルツールのハイブリッド活用を進めることで、“昭和”のノウハウが「令和」の現場で高付加価値の武器となります。
まとめ:ODM開発における試作回数最適化の新しい地平へ
ODM開発の本質は、発注者の曖昧な意向・市場要求を現場でシッカリ形にし、競争力あるモノづくりを実現することです。
試作回数は「とにかく減らせば良いもの」ではなく、各開発段階の目的や現場制約を総合的に見極めて“最適化”してこそ真価を発揮します。
発注者(バイヤー)側は、仕様決定・情報共有の徹底で余計な試作を減らす工夫を。
サプライヤー側は、過去データやデジタルツール、現場知を駆使した「一発勝負の品質作り」に挑戦を。
双方が試作回数最適化に本気で取り組めば、ODMビジネスは利益・顧客満足・現場力、いずれも最大化できるポテンシャルを持っています。
「昭和のカン」と「令和のデータ」――その両軸を持つ現場こそが、これからの製造業を牽引するキープレイヤーになるはずです。
製造業の現場最前線から、一歩一歩、新しい地平線を切り開いていきましょう。
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