投稿日:2025年10月18日

マウスパッドの滑り止めを強化するゴム配合比と表面摩擦測定の最適化

マウスパッドに求められる滑り止め性能とは

マウスパッドは、現代の業務環境やゲーミング用途においてなくてはならないアイテムです。

その中で重要なのが、マウスパッド本体が机上で滑らず、安定して使用できる「滑り止め性能」です。

この性能は、製品の快適さや操作性に直結するだけでなく、品質面やブランドイメージ、さらには事故防止にも寄与します。

昭和時代から続くアナログな生産現場では、ラバー素材の配合や、摩擦測定などに旧式の手法が根強く残っている現場も多いのが現状です。

ですが、少しの工夫と現場からの視点で、性能と生産効率を同時に高めることは十分可能です。

今回は、生産管理や品質管理の実務から得たノウハウも交え、マウスパッドの底面滑り止めに最適なゴム配合比と摩擦測定の実際について、深掘りしていきます。

滑り止めゴムの素材選定と配合設計の基本

なぜ“配合比”が重要なのか

滑り止めゴムに最適な素材を選ぶ際、ただ単に着色やコストで材料を選んでしまう現場も少なくありません。

しかし、滑り止め性能=摩擦係数や耐久性、耐油性、加硫速度などは、ゴム同士の配合や配合量によって大きく左右されます。

従来は天然ゴムにカーボンブラックを加えただけの単純な組成が多かったですが、近年は各種合成ゴムやフィラー、可塑剤、界面活性剤の最適設計で高機能化が進んでいます。

一般的な滑り止めゴムの主な材料

– 天然ゴム(NR):コスト重視・標準的な摩擦性能
– スチレンブタジエンゴム(SBR):バランス型・加工しやすい
– ニトリルゴム(NBR):耐油性が高い
– シリコーンゴム(Q):高い耐熱性・耐寒性

これに対して、ソフト感や吸着感を化学的に強化するための添加剤やフィラーを複雑に組み合わせていきます。

滑り止めと“柔らかさ・反発弾性”の微妙なバランス

滑り止めゴムの配合を考えるときには「単純に摩擦係数を上げればいい」というわけではありません。

マウスパッド裏面に使う場合、滑り止め性能(摩擦)と、机を傷つけずに安定するクッション性・反発弾性とのトレードオフが必ず発生します。

このため、配合比の設計では
– 硬度
– 発泡度合い
– 表面粗さ
を調整し、摩擦とソフトタッチの適正値を探ることが重要となります。

昭和型のベテラン職人は「経験で配合を決めてきた」人が多いですが、配合設計がブラックボックス化したままだと、再現性や品質保証が難しくなります。

この点も令和の品質管理現場では課題になりつつあり、データ主導への移行が加速しています。

マウスパッド滑り止め用ゴム配合比の最適化事例

私の現場体験:狙うは“摩擦係数 0.8~1.2”

20年以上の現場において、数々の滑り止め製品に携わってきました。

マウスパッド用滑り止めでは、最もキーポイントとなる値が「静止摩擦係数」です。

多くの現場では
– 静止摩擦係数0.8未満 → 机上で滑る・使い物にならない
– 1.2超え → 机材によっては強く貼り付いてストレス
と言われています。

私は過去に複数メーカーで比較検証しましたが、
「静止摩擦係数0.9~1.0」
程度に設計することで、広範囲な机材質に対応し、加圧時のズレも防げるなど最もユーザーフレンドリーな値となりました。

実際の配合例(NR/SBR系)

– 天然ゴム:60%
– スチレンブタジエンゴム:20%
– カーボンブラック:10%
– 微細シリカ:5%
– 可塑剤・軟化剤:3%
– 増粘剤・界面活性剤等:2%

この組成によって、耐久性・耐候性・柔軟性・吸着性・コストがバランスよく両立できました。

フィラー量を増やしすぎると表面がザラつき、摩擦係数は上がるが耐摩耗性や経年劣化が進むので、可塑剤と界面活性剤でうまくバランスを取ることが肝要です。

令和流の配合調整の進化

近年では「発泡ラバー」構造を採用する例が増えています。

発泡度合い(気泡率)を細かく調節することで
– 摩擦力アップ
– 軽量化
– クッション性向上
を同時に実現できるようになってきました。

また、異種材料(例:シリコーンと合成ゴムの積層)も増えており、調達購買部門は「同じサプライヤーでもロット間バラつき」を細かく監視する必要もあるのが実態です。

滑り止め表面摩擦測定の実務ポイント

工場現場での“旧式”摩擦測定法

今でも意外とよく見かけるのが
「300gの重りを乗せて引っ張る」
「定荷重で引きずってみて『これなら大丈夫』と感覚確認」
といった、昭和の手作業方式です。

確かに装置コストはゼロですが、品質データとしての再現性・正当性・ロット間補償が著しく劣ります。

標準化された測定法“JIS法”とそのメリット

現在、多くの先進的なメーカー・現場では
– JIS K 6251(ゴムの摩擦係数測定方法)
– ISO 4649(摩耗性試験)
をベースにした「摩擦測定器」や「トライボメーター」を採用しています。

これによって、
– 正確な数値
– 温度・湿度・速度等の条件管理
– データ記録とトレーサビリティ
– ベンチマーク試験(他社製品との公平比較)
が可能になります。

品質マネジメントやISO審査でも、摩擦係数のサンプルデータが必ず問われるため、すでに自社導入が済んでいない場合、早期の自動・標準化は必須と言えるでしょう。

現場で摩擦測定値が安定しないときの対策

摩擦係数測定でデータが分散しやすい場合、現場目線では下記のポイントを疑うべきです。
– 素材表面の個体差(水分・油分・粉残りなど)
– 試験荷重や速度のばらつき
– 机表面の化学的な劣化

サプライヤーの立場でバイヤーへの信頼性を強調したい場合、JIS法によるダブルチェックや、摩擦性能証明書(ロット管理書)の発行が、極めて強力な販促材料となります。

調達購買・生産管理の最新動向と現場で活かす“DX”

バイヤーが重視する購買ポイントとは

バイヤーを目指す方、あるいはサプライヤーの営業担当者は、現代の調達購買現場の“評価軸”を押さえることが必須です。

かつては「コストと納期」だけでしたが、2020年代以降は
– 摩擦係数の安定度
– 安定供給体制
– データトレーサビリティ
– 原材料のサステナビリティ対応
– 革新的な滑り止め技術(例:抗菌・帯電防止など)
が大きなウエイトを占めるようになっています。

また、中国・東南アジア等の調達先の多様化と地政学的リスク対応のため、「セカンドサプライヤーとの性能ギャップ」も常に見られている点が従来と異なる現代要請です。

アナログ現場の“昭和的慣習”を打破するDX活用

未だに「長年の勘」「ベテランの肌感覚」が幅を利かせる現場も多いですが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れは確実に波及しています。

滑り止めゴムの配合管理や摩擦データも、
– 配合比データベース化
– 生産機械の自動化
– 測定・検品記録のクラウド連携
– 異常検知AIによるフィードバック
などを活用することで、品質検証や現場負荷の大幅低減が実現できます。

今後は「配合や測定のノウハウ自体を企業価値とみなしていく」動きも活発化し、競争力の源泉となるはずです。

まとめ:現場発の知恵で最適解を再設計する

マウスパッドの滑り止めは、単なるゴム素材の選択・配合だけでなく、「机上で安定的に使えるための科学的根拠」や「サプライヤーとしての信頼性」「データ管理とトレーサビリティ」まで、幅広い知見が要求される領域です。

昭和の職人技と、令和の生産管理デジタル化――この両輪をうまく組み合わせ、
「現場目線」で最適な配合比・測定手法・品質保証体制を作り込むことで、サプライヤーやバイヤーとして、他社に先んじた価値を提供できるようになります。

モノづくりの現場は、まだまだ進化の余地と可能性に満ちています。

自身の経験や工夫を「型」として残し、次世代へとつなぐことこそ、製造業の発展への最大の貢献です。

現場で働く全ての方々が、挑戦者として新しい地平を切り拓いていけることを、心から願っています。

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