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OEM商品の在庫リスクを最小化するための発注方式

目次
OEM商品の在庫リスクとは何か
OEM(Original Equipment Manufacturer)ビジネスは、他社ブランドの商品を製造することで多くのビジネスチャンスを創出しています。
一方で、OEM供給を行うには在庫を一定量確保し、相手先からの注文に迅速に対応する必要があり、「在庫リスク」を避けて通ることはできません。
在庫リスクとは、簡単に言えば市場の需要変動や発注者の事情により、製造した商品が引き取られず、余剰在庫として抱え込んでしまう危険性のことです。
このリスクが顕在化すると、資金繰りが悪化し、過剰在庫による保管コストや廃棄損失が発生します。
また、不良在庫が溜まることで経営判断が鈍り、新たな設備投資や開発への資源配分が困難になることもあります。
特に昭和時代から続くアナログ的な在庫管理や、昔の成功体験にとらわれて発注方式を見直せていない企業ほど、このリスクに無自覚な傾向があります。
ですから、OEMビジネスにおける在庫リスクの最小化は、単なる在庫量の適正化だけでなく、発注方式そのものを抜本的に見直すことが極めて重要です。
伝統的な発注方式の落とし穴
1. 都度発注方式の特徴と課題
最も簡便な発注方式は、「都度発注方式」です。
注文書を受領してから生産に着手するため、基本的には在庫リスクを最小化できるというメリットがあります。
しかし、OEMメーカーにとってはリードタイムの長期化、段取り替えの頻発、生産計画の不安定化といった問題を抱えます。
また、調達に時間のかかる素材や多品種少量生産体制では対応が難しく、「納期遅延」「柔軟性の欠如」という新たなリスクに直結します。
2. 見込生産方式のリスク
伝統的な日本の製造業の多くは、納期遵守や過去の実績を重視する傾向があり、一定量を「見込み生産」し在庫として保有しておく方式も根強く残っています。
この方法は大口の取引先が需要を読み切れない場合や、短納期が求められる場合に有効です。
しかし、適切な需要予測やバイヤーとの情報連携が不足すると、在庫過多や不良在庫の発生を招くこととなります。
特に、昨今の需要変動の激しい市場環境では、実績ベースでの生産はリスクが高まっています。
3. 契約発注方式の過信
近年増えてきているのが「契約発注方式」です。
バイヤーとサプライヤーが一定期間の供給契約を結び、その枠内で指定数量を分納する仕組みです。
一見、長期計画と安定供給を両立できるため、安心感があります。
しかし、「契約外のスポット需要」「バイヤーの急な方針転換」「契約通りに発生しない需要」といった現場目線でのリスクも潜在しています。
契約書面だけに依存する姿勢は、現場のフットワークを奪い、イレギュラーに弱い組織体質を生む原因となり得ます。
現場で実践できる在庫リスク最小化の発注方式
1. ジャストインタイム(JIT)発注の導入
トヨタ生産方式(TPS)に代表される「JIT(必要なものを、必要なときに、必要な量だけ)」は、理想的な在庫最小化の考えです。
この考え方に従い、バイヤー側との情報共有基盤(EDIやWeb-EDI、VMIシステム等)を強化し、需要予測から納品までのリードタイムを徹底して可視化することが第一歩となります。
発注データや生産スケジュールの“見える化”で、毎週・毎月の需要変動を即座に把握し、フレキシブルな生産体制を整えます。
JIT発注ではバイヤーとの連携が肝心ですが、現実には人間同士のコミュニケーションが不可欠です。
定期的な商談や相互訪問、困りごとのすり合わせを行うことで、需給双方の現場の「肌感」を価値ある情報として織り込みます。
昭和型の「会って話さなきゃ動かない」という習慣も、形を変えればJITには必要な“現場力”と言えるでしょう。
2. サプライヤー主導の需要予測型生産
情報技術が進歩した現代では、サプライヤー自らが過去データを解析し、需要動向や季節要因を分析することが可能です。
バイヤーからの発注情報だけに頼らず、市場動向や過去のバイヤー発注パターンをAIやBIツールで分析し、生産計画に生かす「サプライヤー主導の需要予測」方式が浸透し始めています。
この方式の強みは、自社の設備稼働率や購買先のリードタイム最適化を主軸にしながらも「在庫水準は最小・欠品率も最小」を両立できる点です。
単なる量の最適化だけでなく、部材構成ごと・最終製品ごとの需給バランスを見極め、計画的に“コントロールされた在庫”を構築します。
これにより、急な増産要請にも在庫ロス最小で対応できます。
3. フレキシブル発注(ローリング方式)の活用
日系OEM企業の多くは毎月の生産計画を立て、一度決めたら“変更不可”とする傾向が強いですが、これは在庫リスクを高めます。
そこで有効なのが「フレキシブル発注方式(ローリングフォーキャスト)」です。
例えば、3か月~6か月の納入計画を立て、当月分のみ“確定”、以降数か月は“予定”として発注情報をローリングで更新します。
受注予測と対比しながら柔軟に計画修正し、不良在庫や欠品リスクを最小化できます。
この方式はバイヤーにも計画的な調整余地、サプライヤーにも生産のゆとりを生みます。
サプライチェーン全体の適正化(SCM改善)につながるばかりか、製造現場の段取りロスも大きく減少します。
バイヤーの本音とサプライヤーの対策
バイヤーが発注方式で重視するポイント
OEMビジネスのバイヤーが最も気にしているのは「納期の厳守」「安定した品質」「コスト競争力」の3点です。
一方で、短納期化や小ロット化、量産開始後の柔軟な仕様変更対応など、サプライヤー側の負担を増やす要求が年々強まっています。
バイヤーの多くは「小口分納・短納期対応」でリスクをサプライヤーに転嫁しがちです。
ですが、事情が変われば「生産柔軟性」「在庫対応力」も評価ポイントとなります。
OEMサプライヤーの視点からの対策
サプライヤーは、バイヤーの本音を的確に読み取りつつ、「単なる従属」ではなく「対等なSCMパートナー」として振る舞う姿勢が重要です。
具体的には、
・サンプル出荷や試作対応の段階から、端数や予備部材の抱え込みによる在庫ロスを「見える化」し、対策を共有
・数量契約、年間発注協定などでバイヤーにも一定のリスクシェアを求める
・情報開示を積極的に働きかけ、納期・数量の精度向上に取り組む
・AIやITツールを活用し、柔軟な需給調整・適正在庫の科学的管理を社内標準にする
「無理な納期・数量変更」は毅然とNOと言える交渉力も現場経験から磨くべきでしょう。
昭和から続くアナログ発注文化からの脱却
現在でも、「FAX注文書」「電話口での数量変更」「手書きの現場伝票」など、昭和的な運用が色濃く残る工場も少なくありません。
このような環境下では、情報伝達ミスや生産指示の遅れによる在庫トラブルが後を絶ちません。
今こそアナログ発注文化を見直し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進する必要があります。
すべての発注情報をデータ化・一元化し、現場→生産管理→調達部門のコミュニケーションギャップをなくす環境が、在庫リスク最小化の土台となります。
また、デジタル運用が進んだ現場では「在庫の自動補充」「AIによる自動発注」「遠隔地サプライヤーとのクラウド連携」など、新しい発注方式も容易に導入できます。
まとめ:新たな境地を切り開く発注方式の未来
OEM商品の在庫リスクは、従来型の“経験と勘”だけではコントロールしきれなくなっています。
発注方式そのものを現場目線で再設計し、JIT化・需要予測主導・フレキシブル発注といった最新の考え方を柔軟に取り入れることが、サプライチェーン全体の競争力向上につながります。
昭和時代に築かれたアナログ文化の良さも一部継承しつつ、現場の声とデジタルの力を掛け合わせ、在庫リスク最小化の「新たな地平線」を切り開いていきましょう。
これからのOEMビジネスには、単なる“発注対応力”ではなく、「リスクを価値に変える現場力」が求められています。
その取り組みの積み重ねが、製造業全体のサスティナブルな発展に不可欠です。
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