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原本B/L紛失時のBank Guarantee発行とリスク最小化の流れ

目次
はじめに:原本B/L紛失の現実と製造業現場の課題
国際物流に従事する製造業にとって、B/L(船荷証券)は命綱とも言える重要書類です。
B/Lの取り扱いには、細心の注意が求められますが、どれだけ注意していても、「原本B/Lの紛失」は現実に発生するリスクです。
特に昭和からの流れを色濃く残すアナログ志向の現場では、B/Lの電子化が進まない中、書類管理の煩雑さが問題となっています。
この記事では、原本B/Lを紛失した際のBank Guarantee(銀行保証状)の発行手順や、再発防止・リスク最小化のためのポイントを、製造現場目線で深堀りします。
バイヤーやサプライヤーの双方、そして新たに製造業バイヤーを目指す方に役立つ実践的な知識をわかりやすく解説します。
原本B/L(船荷証券)紛失の実情と業界における位置付け
B/Lの役割と重要性
B/Lは、貨物が輸送される際に発行される証券であり、貨物の所有権移転や、貿易決済に直結します。
受取人が貨物を引き取るためには、原本のB/Lを船会社(または代理店)に提示する必要があり、「書類1枚」のミスが億単位の損失や、サプライチェーンの停滞につながりかねません。
なぜ紛失が起こるのか?製造現場の実情
製造業の現場では、日々の膨大な書類のやりとりや、複数部門を渡る伝票処理などによって、意図せぬ紛失リスクが高まります。
特に、
– 現場の紙文化(デジタル化遅延)
– 担当者の属人的な管理
– バイヤーとサプライヤー双方における確認不足
– 海外発送時の多拠点間連携の不徹底
…などが複合的な要因となっています。
これらは、アナログ主義が色濃く残る工場や、老舗商社とのやりとりにおいてしばしば発生します。
原本B/L紛失時のBank Guarantee発行手順
原本B/Lを万一紛失した場合、貨物引き取りのためには「Letter of Indemnity(LOI:損害賠償保証書)」とともに「Bank Guarantee(銀行保証状)」を用意し、船会社の承認を得て、貨物引き渡しを受ける方法が一般的です。
ここでは、Bank Guarantee発行までの流れと注意点を具体的に解説します。
1. まずは迅速な事実確認と関係者への連絡
B/L紛失が判明したら、まずは下記の対応を即座に行います。
– 発生状況の整理(どこで、誰が、どのように紛失したのか再現)
– 発行船会社・船舶代理店への報告と指示仰ぎ
– 社内関係者(調達購買、生産管理、営業部など)への情報共有
– サプライヤー(荷送り人)、バイヤー(荷受人)間での情報連携
– 必要であれば、保険会社への相談
緊急時によくある「うやむやな経路追跡」こそ失敗のもとです。
2. LOI(Letter of Indemnity)原案準備
船会社は、原本B/Lをなくしても貨物を引き渡せる根拠として、「損害賠償保証書(LOI)」の提出を求めます。
業界標準テンプレートを基に、以下を盛り込みます。
– 損害発生時の全額賠償義務
– B/L複製・二重引き渡し時の賠償範囲
– 保証期間(通常は1年-5年。船会社との交渉次第)
– 作成者・サイン責任(バイヤーのみ、またはサプライヤー/バイヤー双方)
書式不備やサインミス、責任範囲の曖昧さは現場トラブルの火種なので、必ずご担当法務部門などと二重チェックしましょう。
3. Bank Guarantee(銀行保証状)の発行依頼
多くの船会社は、LOIのみによる貨物引き渡しを認めておらず、商業銀行による「保証状」の添付を要求します。
手順は以下の流れです。
– 船会社指定のBank Guarantee書式テンプレートの入手
– 管轄銀行との協議(発行手数料・内容・保証額・保証期間など)
– LOIとの整合性、法的要件の確認
– バイヤーもしくはサプライヤーが銀行に正式依頼(信用格付けに応じて断られる場合もあり)
– 銀行から完成版BG入手後、船会社宛てに提出
ここで重要なのは、「会社の信用」と「事前準備」です。
与信力が低い場合、そもそもBank Guaranteeの発行自体を断られることもありえます。
また、銀行によってはカバー範囲や、記載内容の違いで発行を渋ることもあり、該当銀行と過去の取引履歴を把握しておくことが肝要です。
4. 船会社による審査と貨物引き渡し手続き
書類が全て揃った段階で、船会社の確認・内部審査を経て、貨物の引き渡しが行われます。
この審査段階で不備が発覚した場合は大幅なリードタイム延長となるため、「問い合わせどころ」と「担当者の連帯」を社内で明確化しておきましょう。
場合によっては、官公庁や関税当局の追加対応が必要になるケースもあるため、想定されるリスクを常に周知しておくことが現場管理職の務めです。
リスク最小化と再発防止のためのポイント
デジタル化による書類管理の徹底推進
昭和以降、紙文化が根強く残る製造現場ですが、B/L電子化(eB/L)の採用が進みつつあります。
電子B/Lは、紙よりも圧倒的に紛失リスクが低く、スピーディなやりとりが可能です。
自社のみならず、取引先(特にアジア各国や新興国のサプライヤー)にも採用を働きかけましょう。
中国、韓国、ヨーロッパ系船会社ではeB/Lシステムが日常化しているため、国内バイヤーが及び腰になる理由はありません。
フローとマニュアルの抜本的見直し
どれだけ管理体制を整えても、現場の実作業とマニュアルの乖離は生じるものです。
– 書類管理のプロセス標準化(責任者の明確化)
– 部門横断による定期的な現場検証(ウォークスルーの徹底)
– 誰が・いつ・どこで書類をどう扱うかのトレーサビリティ強化
– 紛失発生時の「自責カルチャー」脱却と「事実に基づく透明化」
が非常に重要です。
購買・調達部門任せにせず、「現場、生産、品質、営業、出荷」全工程を巻き込む意識改革が再発防止の鍵を握ります。
サプライヤー/バイヤー間コミュニケーションの強化
B/L紛失時は、サプライヤー・バイヤー・フォワーダー・銀行など多くの関係者が絡みます。
ミスや不祥事の隠蔽、責任のなすりつけ合いは、関係悪化だけでなく納期遅延や将来の信用失墜に直結します。
– リアルタイムでの情報共有体制
– サプライヤーとの事前合意(B/L受渡しルールの明確化、万一の対応フロー)
– 万一の場合の保険適用可否、自己負担分の発生有無
…などを、契約段階から合意する姿勢が大切です。
現場目線で考える:Bank Guarantee発行の”実質コスト”と経営への波及
Bank Guaranteeの発行には実際に下記のような「見えないコスト」が発生します。
– 銀行手数料(数万~数十万円規模、会社によって大きく異なる)
– 発行作業にかかる人件費・付帯コスト
– 追加の法務リスク、および内部審査・承認プロセス
– 船会社からの信用低下と、将来条件の悪化(書類の一部払い渡し不可など)
また、品目や納期の都合上、サプライチェーン全体の停止という大きな損失も発生しかねません。
「たかが書類一枚」では済みません。
現場基点で、こうした実質コストとリスクをトップマネジメントに見えるように報告し、「現場力」に頼らない再発防止に組織全体で取り組むことが最も大切です。
まとめ:原本B/L紛失リスクは現場から最小化できる
原本B/L紛失時のBank Guarantee発行は、製造業におけるリスクマネジメントの縮図です。
サプライチェーンの最前線で起きる一見些細なミスが、巨額の損失や信用失墜につながるのが「現実」です。
昭和型の「現場の勘と経験」だけに頼らず、デジタル化・フロー見直し・社内外連携による多層的なリスクヘッジが重要となります。
購買やバイヤーを目指す方、そしてサプライヤーとしてバイヤーの内情を知りたい方は、この「原本B/Lリスク」に無関心でいてはいけません。
現場での実践知と新たな時代の組織改革、この両輪を常に意識しながら、「日本の製造業」を進化させていきましょう。
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