アウトドアクールロールマットOEMが断熱＋通気48Dフォーム採用

アウトドアクールロールマットOEMが断熱＋通気48Dフォーム採用：製造業の現場目線で見る市場トレンド

アウトドア市場において近年、高性能なクールロールマットのOEM提案が活発になっています。
特に「断熱＋通気機能を備えた48Dフォーム」の採用は、業界全体の大きな動向となっています。
本記事では、長年製造業の現場で培った視点から、この市場動向と技術革新、バイヤー・サプライヤーそれぞれの考え方、そして今後の戦略ポイントについて解説します。

48Dフォームとは何か？現場を知る者が語るスペックとメリット

48Dフォームとは：マットの「心臓部」

48Dフォームとは、発泡倍率約48倍の高密度ポリエチレンフォームを指します。
「D」はデンシティ（密度）の略です。
従来のフォームが30D～40Dだったのに対し、48Dは明らかに一線を画します。

この高密度により、優れた断熱性能とクッション性を両立することができます。
キャンプや車中泊用マットで「底冷えしにくい」「座り心地が長続きする」と評価されるのは、大抵この種の高密度フォームが秘密です。

断熱性能と通気性の同時実現

一般に断熱性と通気性はトレードオフの関係です。
密度が高ければ断熱力は上がるものの、通気性が失われ蒸れやすくなりがちです。
しかし48Dフォームは、独自の発泡技術と、内側に微細なセル構造を兼ね備えているため、「熱を遮断しつつ湿気を逃がす」という相反する要件をクリアします。

これは高度な自動発泡制御技術や、組成比率の最適化から実現されています。
昭和時代の手作業主体の製造現場では難しかったことですが、現代の設備と技能の進化の結晶です。

OEM（相手先ブランド供給）の意味と、製造業が参入すべき理由

バイヤーの視点：なぜOEM先に求めるのか

現在のアウトドア用品市場は、ブランドごとに差別化が激化しています。
大型専業ブランドだけでなく、EC専販の新興ブランドや異業種参入企業も増えています。

こうしたバイヤーが求めているのは、
「自社オリジナル製品」「他社に先んじるスペック」
です。
高性能な48Dフォーム採用のマットをOEMにより作れれば、ブランド力を一段押し上げられます。

またバイヤーの調達現場から見れば、サプライヤーに期待することは、ただの安価な大量生産ではありません。
・企画段階からの技術提案力
・安定供給できる生産キャパ
・独自仕様への柔軟対応
こうした「プラスワン」の魅力を備えたサプライヤーが選ばれます。

サプライヤーの視点：OEM参入のメリット・デメリット

サプライヤーがOEM生産に取り組むメリットは、多様な顧客ネットワークの獲得や新規技術への挑戦機会です。
また、量産ノウハウを他社ブランドの成長とリンクできるため、業界変革の波を乗りこなす足掛かりになります。

一方、OEMは納期・コスト・品質といったバランス管理が難しい面もあります。
バイヤーによる仕様変更や想定外の注文増など、現場管理能力が問われる場面が多いです。
ここでも「昭和時代のアナログ現場」から脱却した、柔軟な生産計画や多能工シフトが求められます。

断熱・通気技術が生む新たな価値提案

現場で重視される品質管理のポイント

現場で「アウトドアクールロールマット」に要求されるのは見た目や触感だけではありません。
・断熱性（熱伝導率）
・通気性（透湿度）
・復元性、圧縮永久歪み
・耐摩耗性・耐久性
など複数の品質項目が連動しています。

特に近年は、エンドユーザーがネットで「スペック比較」をくまなくチェックします。
試験成績書やJIS準拠など、工程内の測定データを整備し、バイヤーへも開示できる体制は不可欠です。
品質管理も昔ながらの「勘」や「経験値」ではなく、データドリブンな運用が生き残りの鍵を握ります。

エコ・サスティナブル志向との両立

アウトドア用品分野では、環境負荷低減の声が高まっています。
48Dフォームといえど原料は石油由来ですが、リサイクル対応や有害物質フリー化など各社工夫が進んでいます。
・フォーム屑の再生材化
・VOC（揮発性有機化合物）の低減
・グリーン調達基準への対応
こうした「付加価値」が、バイヤーから選ばれる新たな基準になるでしょう。

差別化ポイント：価格競争からの脱却

機能・ブランド協働型の商品企画

価格だけではOEM競争に勝ち続けられません。
実際、ECサイトで見かける激安ノーブランドマットは、粗悪な仕様や回収リスクを孕んでいます。
「アウトドアクールロールマット」の本質は、ユーザーが年中使い倒せる品質と、ブランドを介した体験価値にあります。

バイヤーとサプライヤーが早い段階から「共同企画会議」を行い、フォルム・パターン・カラー展開、梱包サイズ、付属品（収納袋等）、タグ情報などまで詰めていくことで真のオリジナル商品が生まれます。
サプライヤーの現場力を活かす場面です。

QCD＋ESG対応の“新・日本品質”を目指す

従来、製造業の現場ではQCD（Quality：品質、Cost：コスト、Delivery：納期）こそ三大要素でした。
しかし今や、それだけでは評価されません。
企業の社会的責任（ESG・SDGs）を考慮し、「高性能48Dフォーム」＋「環境配慮」＋「労働安全・公正な取引」まで一気通貫で対応できる体制が、差別化の決め手となります。

この観点から自社を磨き直すことが、OEMプロジェクト成功の絶対条件です。

昭和の「慣習」と現代DX推進：現場が感じるリアルな課題感

アナログ主体の現場体質からの脱却

長く続く製造業、特に老舗中小工場の現場では、紙帳票・電話・FAXなどアナログ慣習が根強く残っています。
「手作業でサンプルカット」
「ベテラン職人の感覚検査」
「工程ごとの伝票紛失」
こうした昭和体質が、OEMのスピードや品質精度の足を引っ張る場面は今なお多いです。

一方で、バイヤーは短納期・多品種・高カスタマイズを求めます。
「うちは昔ながらのやり方で十分」は、もう通用しません。
デジタル発注管理や社内コミュニケーションツールの刷新、IoTセンサー導入による工程監視など、
一歩一歩現場からDX（デジタルトランスフォーメーション）を推し進める必要があります。

ヒューマンスキルと現場力の融合

とはいえ、すべての工程を「機械化」「自動化」すればよいわけでもありません。
48Dフォームの品質やカッティングには、人の繊細な目や手が大きな役割を果たす場面もあります。
現場で積み重ねられたノウハウと、ICTを組み合わせることで初めて「昭和伝統×令和技術」という最強のものづくり体制が築けます。

現場の力を最大限に発揮しつつ、若手・未経験者でも即戦力化できる環境整備が大きなポイントです。

今後の展望：アウトドア市場の変化とバイヤーの未来像

コロナ禍で加速した「ソロキャンプ」特需とその先

コロナ禍以降、爆発的に伸びたキャンプ市場。
中でも「ソロ」「家族・少人数」需要が定着しています。
今後も、軽量・高断熱・高通気の「アウトドアクールロールマット」へのニーズは続くでしょう。

同時に、防災・BCP（事業継続計画）向けの備品や、企業福利厚生のレクリエーショングッズとしても、採用事例が広がっています。
バイヤーやサプライヤーは、こうした新市場の動向にも敏感にアンテナを張る必要があります。

グローバルサプライチェーン再構築の波

コロナや地政学リスクも背景に、原材料・部属品の調達難は常態化しています。
OEM生産でも「国内外の生産シフト」「複数ベンダー確保」「BCP観点での在庫戦略」といった総合的な調達力が問われます。
「調達購買」「品質保証」「生産技術」といった部門横断型の知見を備えることが、バイヤー・サプライヤー双方における生き残りの条件です。