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採用活動を外注しても製造人材が育たない理由

目次
はじめに:製造人材育成の現場感覚と採用活動の実態
日本の製造業界は、いまだに「人の力」が現場を支えています。
熟練の技術やものづくりの現場力は、一朝一夕で身につくものではありません。
多くの企業が人材難に直面する中、採用活動の外注化——すなわち、RPO(Recruitment Process Outsourcing)や人材紹介業者の活用が増えています。
しかし、どれほど効率化を図っても外注頼みでは本質的な製造人材は決して「育たない」のではないか、と現場からは疑問と不安の声が上がっています。
採用活動を外注することの効果、そしてなぜ「製造人材」は外注では育て上げられないのか、昭和的アナログ業界の根深い現実とともに深堀りしていきます。
外注化が広がる製造業の採用活動の現状
採用活動外注の背景と流れ
近年、専門の採用代行会社や求人媒体、エージェントサービスなど、採用の外注化は各業界で広く行われるようになりました。
とくに製造業では、景気に左右されやすい大量採用や急な人手不足を補うための短期的なスタッフ募集において、そのスピードやコスト面で一定の効果を上げています。
一方、技術者や生産現場の中核を担う人材——いわゆる「ものづくり人材」にまで、求人掲載や応募者との面談、選考フローまで丸ごと外部委託するケースも珍しくなくなりました。
なぜ外注化が進むのか
・自社のリソース不足
・専門ノウハウの欠如
・人事部門の慢性的な人手足りず
・短期的な採用ニーズへの対応
・採用コストの見える化(外注費化)
こうした現場の悩みを一挙に解決できるかのように見える「外注化」ですが、果たしてそれだけで本質的な人材育成ができているのでしょうか。
製造人材が“育つ”とは何か―求められる資質と現場適応力
ものづくり現場に必要な力とは
筆者が20年以上の現場キャリアで痛感しているのは、製造現場では「採用して終わり」ではなく、「配属してからが勝負」だということです。
単なる作業者やオペレーターであっても、
・異常時の判断力
・マニュアル外業務への柔軟な対応
・現場内コミュニケーション
・暗黙知に基づくノウハウ継承
など、「人」としての現場適応力が強く問われます。
これらは単なる人材スペックや履歴書情報、面接の受け答えだけでは見極めきれません。
また、入社後も早期離職せず、若手が定着し「芯のある人」に成長するためには、現場に浸透し、現地現物で学ぶ体験が決定的に重要です。
表には見えない“現場文化”の壁
製造業は往々にして「昭和のアナログ体質」が色濃く残っています。
職人肌の先輩たちによる厳しい指導、年功序列的な人間関係、失敗を“周囲と同調して乗り越える力”など、外部には伝わりにくい現場特有の文化があります。
外注企業はこうした空気感や現場独自の常識にはタッチできず、採用要件として明文化しきれない“居心地の良さ”や“人間的相性”まで判定するのは困難です。
採用活動外注で起こりがちな3つの問題点
1. 現場志向のずれによる“ミスマッチ増加”
採用外注会社が重視するのは「早期に書類要件を満たし、面接をクリアする人材」を集めることです。
一方、現場が求めているのは「本当に続けられる人間」や「現場の空気になじみ成長する資質を持つ人」です。
この“意識のズレ”は、配属後の高い離職率や即戦力化の遅れとして現れます。
人材紹介会社から“即戦力”として推薦された人が、実際には現場の厳しさや独特の人間関係についてこられず、早々に辞めてしまう——20年以上現場で見てきた典型的な構図です。
2. 採用〜教育が分断される“断絶”問題
社内で採用から配属、教育まで一貫して担当していれば、“誰がどんな期待をかけて採ったのか”“どんなバックグラウンドの人なのか”という情報が現場に共有されます。
外注会社に任せてしまうと、現場に来る時点で「ただの新入り」として認知されることが多いのです。
「誰が採ったか?どんな人か?」の文脈共有がないまま、現場では単なる作業補充要員として扱われ、本人も疎外感を感じやすく、やる気や定着度が下がります。
3. “育てる”文化と仕組みへの無関心
採用活動を外部委託して終わった気になってしまうと、自社の人材育成文化やOJT仕組みについて検討・改善するきっかけが失われがちです。
「人は集まったからあとはOJTで何とかなる」の精神論だけで回していると、若手の早期脱落や技術伝承の断絶が発生します。
外注採用では美しい採用ペルソナやスキルシートが共有されますが、「現場でどう育て、どう見守るか」の実践的アフターフォローが徹底されにくい点が最大の課題です。
現場目線で“人が育つ”ための採用と育成アプローチ
採用に現場メンバーが深く関わる意義
現場リーダーや班長・ベテラン社員が採用面談に同席し、「実際どういう雰囲気の現場で、何が大事なのか」を伝えきることは、応募者の本気度や現場適性を見るうえでも圧倒的に有効です。
同時に、現場側にも「この新人をどう支えて、一緒に仕事をしてくのか」という自覚が生まれ、受け入れる意識と準備が高まります。
アナログ現場でも通用する“人が育つ”工夫事例
・メンター/若手育成担当の制度化
・配属後1週間は毎日1on1面談
・フォローアップを現場・人事合同で実施
・現場の“えらい人”が新入りに積極的に話しかける文化作り
・小さな成功体験を意識的にフィードバックする
最新鋭のITツールやeラーニングに頼るだけでなく「人が見て・声をかけ・手を差し伸べる」アナログな仕掛けが、やはり製造現場ではもっとも効果的です。
中長期視点での“人材サプライチェーン最適化”
製造業の人材確保・育成は、「採用」➡「配属」➡「現場教育」➡「キャリアパス設計」と川上から川下まで一貫した設計が不可欠です。
外注で「入口」だけ高効率にしても、流れの中で詰まるポイント(育成断絶、モチベ低迷、スキル習得の壁)を人任せにしてきていないか、今一度見直す必要があります。
また、実は優秀な人材は「現場で鍛えられたい」「仕事を通して自分を成長させたい」と思っているものです。
採用時から「君はこの現場でどう鍛えられるのか」「どんな人間になれるのか」をしっかり伝えられれば、良い人が定着し育ちやすい環境ができあがります。
まとめ:製造業の発展のために“人を育てる現場志向”を
採用活動の外注は、確かに一時的な工数削減や効率化に役立ちます。
しかし「本当に現場で必要な人材」「現場になじんで育つ人間力」「技術の継承や暗黙知の深い部分」は、決してコスト換算できるものではありません。
現場の人間こそが「人を見る目」を養い、「人を迎え入れ、育てる文化」を守り続けること。
それが製造業にとって、時代が変わっても絶対に手放してはいけない価値だと考えています。
採用も育成も、現場の小さな積み重ね。「うちの工場ならでは」を大切にしながら、製造業の魅力と活力を次世代にバトンリレーしていきましょう。