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投稿日:2026年1月6日

抽出装置用Oリング部材の材料選定で見落としがちな点

はじめに:なぜ抽出装置用Oリングの材料選定は重要なのか

抽出装置は、食品、医薬、化学、半導体など多くの製造現場で重要な役割を果たしています。

その中で、Oリングは装置の稼働を支えるキーパーツです。

しかし、Oリングの材料選定に際し、意外と見落としがちなポイントが多々あります。

現場で20年以上、直接Oリングのトラブルや納期遅延に悩まされてきた管理職の立場から、現場目線での実践的な注意点や、業界ならではの固定観念を破る考え方まで、徹底解説します。

Oリング材料選定で「よくある失敗」とその背景

よくある材料選定失敗例

Oリングの材質選定で一番多いのは、「カタログスペック」だけで最適だと判断してしまうことです。

耐熱温度範囲、耐薬品性、JIS規格適合、価格などの表面的な数値情報のみで決めてしまい、現場独自の微妙な条件や装置の「クセ」を考慮しないパターンが多く見受けられます。

その結果、
・短期間で膨潤や硬化などの不具合が発生
・交換サイクルが想定より早まる
・仕入れたロットごとにばらつきが出る
といったトラブルが起きやすくなります。

なぜ失敗が繰り返されるのか――アナログ依存の構造要因

昭和のアナログ全盛期に築かれた「仕入実績品=安心」というカルチャーや、ベテランの職人頼みの“暗黙知”が、未だに根強く残っています。

また、設備投資を抑えたい、テスト検証に工数・時間・コストをかけたくない――そんな現場心理が判断のバイアスとなり、新規の材料や実験的な選定プロセスへの消極姿勢につながっています。

営業やバイヤーも、この「無難な前例主義」を尊重し、サプライヤーも“現場に逆らわない”情報だけを出しがちです。

見落としがちな要注意ポイント:現場経験から学ぶ5つの視点

1. 実際の使用環境との「ズレ」

Oリングは単なる丸いゴムではありません。

例えば同じバイトン(フッ素ゴム)でも、メーカー・ロット・化学処方で膨潤度や引張強度、耐圧性能、熱老化傾向が異なります。

純水・薬品・乾燥空気・真空 など流体別や、パルス運転(ON/OFF頻繁)・連続運転、急激な温度変動など、実際の現場の動きを細かくイメージした上で木目細かな選択が重要です。

現場でありがちなのが「カタログ耐薬品表」で○が付いていても、混合溶液や微量の不純物混入、析出物との反応で想定外の不具合が起きるケースです。

2. 材質・硬度だけでなく「製法・後加工」もチェック

Oリングはゴムのコンパウンド(配合)、架橋剤、混練方法、表面のバリ取り、脱脂洗浄、梱包・保管状態まで、信じられないほど多くの違いがあります。

特に装置の初期不良や、少量頻回生産サイクルでの短寿命トラブルは、材料の製法や品質管理体制まで掘り下げることで解決する場合が多いです。

量産品とカスタム品、グレード設定(工業用・食品用・医薬用など)の違いも注意が必要です。

3. 「バイヤー」「現場」「サプライヤー」のコミュニケーションロス

バイヤーが価格と納期だけで業者を選び、現場は「とにかく早く使えるものを」と要望を伝える。

サプライヤーは在庫があるもの、知っているものを推奨する――。

その結果「本当に必要な品質情報」が伝わらず、なぜか毎年のように同じトラブルが繰り返される、という企業も多いはずです。

材料や納入仕様の“抜き合わせ”を、1回の現場検証だけで済ませてしまうのも大きな要注意ポイントです。

4. 洗浄性・パーティクル・アウトガスまで考慮する時代へ

とくに半導体、医薬、食品分野では、単なる耐薬品や耐熱性能だけでなく、
・洗浄後のパーティクル(微粒子)脱落性
・アウトガス(揮発成分)の発生量
・イオンクリーン度や重金属不純物
など、より高度なクリーン性能が必須となってきています。

「材料に含まれる添加剤」や「製造環境のクリーン度」まで、現場が積極的に仕様を細かく指定することで、無駄なトラブル・歩留まり低下・再鑑定コストを大幅に削減できます。

5. 「テストピース」から「現場実機テスト」へのシフト

試験片(テストピース)での耐薬品性テストや物性評価だけでなく、実際の装置に組み込んだ状態でどの程度の変化が起きるのか(物理的摩耗、形状崩壊、経時変化、抜き差し後の再シール性など)、現場主導で実機検証を徹底するのがベストプラクティスです。

工場ごとの環境や作業者の手技、メンテナンス頻度まで視野に入れることが、安定生産や歩留まり維持への近道です。

昭和的アナログの強みも、現場発アイデアで活かす

現場第一主義は決して古臭いだけのものではありません。

Oリング一つで工程全体の安定性が変わるため、経験値にもとづいた
「交換推奨周期早見表」
「よく使う液種・温度帯別注意リスト」
「実際に発生したトラブル事例集」
などを現場の協力会社や装置メーカーと共有する文化を作るとよいでしょう。

また、「比較的安価な材料でも現場テストで十分な実績が得られた」、「本来高価な高機能材だが、ここではコストパフォーマンスが出せた」という逆転現象も起こります。

これからの時代のOリング調達・バイヤー戦略

バイヤーや調達担当者に求められる視点

価格や納期に目が行きがちですが、現場が本当に望んでいる“安定稼働・品質維持・省メンテ”を支援するのがバイヤーの最大の価値です。

そのためには
・装置や製品の全体設計
・過去トラブル履歴
・今後必要になりそうな規制変更
・サプライヤーの技術力・管理力
まで把握する、いわば「現場ワンチーム型」の調達へ変わる必要があります。

サプライヤーの立場でバイヤー視点を活かすには

単なる材質証明書や耐薬品表の提供にとどまらず、より現場目線で
・現場見学やラインヒアリングを積極的に実施
・実装条件に合わせたカスタム品提案
・トラブル事例を積極的に情報共有
・代替材料や新技術の早期試作・評価サポート
など、価値提案型の営業が必要です。

バイヤーから「何が困っているか」「何を優先したいか」を主体的にヒアリングし、短納期・多品種少量対応も含めて柔軟に体制を作ることが、競争力強化につながります。

Oリング選定の新しい地平線 ― ラテラルシンキングで差をつける

ありきたりな材料スペック選びでは、製品ライフサイクルの短縮や現場の激変に対応できません。

発想を広げるラテラルシンキングの例を紹介します。

・オンラインDXと組み合わせ、リアルタイム寿命予測や使用履歴管理
・工場内サーキュラーエコノミー対応、リサイクル材活用やサステナビリティ調達
・他分野(例えば水処理・バイオ・航空宇宙)で実績の新規材料を応用導入
・3Dプリントやデジタルプロトを使った現場即対応カスタムOリング
これらの新しい視点が、「現場力×材料科学×調達変革」の新たな地平線を切り拓きます。

まとめ:Oリングの「見落とし」をなくし、現場力で製造業をアップデートしよう

Oリング材料選定は、地味なようで総合的な現場力と調達視点の融合が必要です。

昭和的な前例主義、価格競争だけの購買から脱却し、最新の技術・サプライヤーとの連携、現場プロセスの深掘りを徹底しましょう。

「思い込み(バイアス)」や「現場の声なき声」にこそ、真の改善ヒントがあります。

材料選定の新常識を実践し、日本のものづくり現場をアップデートしてください。

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