投稿日:2025年10月15日

お茶ペットボトルの風味を保つ脱酸素・殺菌・充填工程

はじめに:お茶ペットボトルの風味を守る重要性

お茶を含む清涼飲料の市場は、年々多様化しつつも、消費者からは「いつでもどこでも淹れたてのような風味を楽しみたい」という期待が根強くあります。

特に日本市場では、お茶本来の香りや旨み、色合いに対する繊細なこだわりが強く、ペットボトル入りの緑茶や烏龍茶商品の品質保持は、メーカーにとって重要な命題です。

今回は、脱酸素、殺菌、充填という三大工程にスポットを当て、現場でどんな工夫や技術が行われているのか、また現場目線だからこそ語れる課題やトレンドを交えて解説します。

バイヤーやサプライヤーにとっては、購買交渉や価値提案にも直結する内容ですので、ぜひご一読ください。

お茶飲料の品質保持が難しい理由

お茶は酸化や高温による劣化のスピードが速く、その繊細な香りと味を長期間保つには高度な管理が必要です。

工場では、製造工程のどこか一点でも品質管理に隙があると、数日後の出荷ではすでに香りや味が落ちてしまう、ということも珍しくありません。

特に昭和時代からのアナログな業界体質が残る現場では「なんとなく昔からやっている」で対応している場合も少なくなく、最新品質保証要求とのギャップが現場レベルでは大きな悩みとなっています。

工程全体の流れと品質保持のポイント

茶葉抽出〜濾過

ペットボトル用のお茶は、まず大量の茶葉を専用の抽出機に投入し、お湯で一気に成分を抽出します。

この際、「味」と「香り」と「色」をどこまで引き出すかが最大のポイントです。

濾過工程では微細な茶葉片や不純物をできる限り取り除きます。

微粒子の残り具合も風味保持に大きく影響するため、最適な濾過設定やフィルター選定に現場のノウハウが求められます。

脱酸素工程の重要性と技術トレンド

お茶の劣化速度を飛躍的に高める原因の一つが酸素です。

茶葉から抽出したお茶には、どうしてもある程度の酸素が溶け込んでおり、これが渋みや色褪せ、香りの劣化を引き起こします。

現在主流のペットボトル緑茶や烏龍茶では「脱酸素」工程が必須です。

現場では、液中の酸素濃度を1ppm以下、理想的には0.5ppm以下にコントロールすることが求められています。

脱気タンクや窒素バブリング(液体に窒素ガスを吹き込み酸素を追い出す)、専用の真空ポンプなど、現場向け専用設備が活躍します。

また、充填時に液面を窒素充填することで、空間の酸素を排除する「窒素置換」技術も並行して使われています。

ここでのポイントは、設備投資を惜しまず、定期的なメンテナンスや機器校正を継続すること。

一時的なコスト増が見えるものの、不良品発生率減少や返品リスク低減により、結果的にトータルコストは押さえられる傾向があります。

殺菌工程:現場での苦労と最新動向

ペットボトルのお茶では、微生物による品質劣化や食中毒リスクを完全に排除すべく、高温殺菌が基本です。

代表的なのは、UHT(Ultra High Temperature)殺菌方式や、ホットパック方式。

お茶を130〜140℃まで加熱し、数秒で殺菌することで、品質や風味の変化を最小限に抑えつつ、長期保存を可能にしています。

殺菌工程で現場管理者が最も苦労するのは「殺菌条件と風味保持の両立」です。

殺菌温度や時間が高すぎれば、お茶特有の清涼感や香りが飛んでしまい、逆に条件が甘いと微生物問題が発生します。

ここに、現場ならではの“勘” —経験値— が活きてくるポイントがあります。

加えて、最近では非加熱殺菌(紫外線、オゾン等)や風味保持フィルターなど新技術も登場し、現場でどこまで導入に踏み切るかがサプライヤー、バイヤー間の議題にもなっています。

無菌充填:昭和時代の常識を打破する自動化の波

殺菌が済んだお茶は、直ちに無菌クリーンルームでペットボトルに充填されます。

ここの無菌状態維持は“昭和流の手作業・経験則”では通用しない、非常にシビアな現代の品質要求となっています。

最新の自動化工場では、ロボティクスとAIセンサリングを活用した無人充填ラインが増加傾向です。

微粒子、菌数、空間酸素・窒素濃度、充填速度などを全センサーでリアルタイム監視し、逸脱時は自動でラインストップ。

このような仕組みは設備価格も桁違いですが、コンプライアンス対応、顧客要求増大への打ち手として全国の大手・中堅メーカーで急速に導入されています。

バイヤー・サプライヤー目線で見た脱酸素・殺菌・充填のキーポイント

コスト管理:安易な削減は品質リスク増加に

調達購買・バイヤーとしては、サプライヤー選定時に設備の新旧、メンテナンス状況、品質維持のための管理レベルを必ずチェックすべきです。

安易なコストダウン要求は、殺菌機・脱酸素装置の手抜きメンテ→品質・風味低下→返品・ロス増加という“負のループ”につながります。

現場見学や実ライン監査を地道に行い、設備仕様や実際の操業管理をしっかり押さえておくことが、自分とお客様のブランド価値を守ります。

トレーサビリティとデータ取得:昭和の現場からDX現場へ

近年、全製造工程のデータ記録・トレーサビリティへの要求が激増しています。

過去は「経験あるベテランが帳面で記録」、今は「IoT装置やクラウド連携で全てを自動記録」です。

万一の品質クレーム対応や、流通先からの質問にも迅速に応じられる仕組みは、商談時の強力な差別化要素となります。

製造現場のIT/DX投資が進んでいないサプライヤーは、今後選ばれにくくなっていくでしょう。

現場・購買・品質の三位一体がブランド維持のカギ

品質部門だけでも、現場だけでも、購買だけでも「顧客満足」は実現できません。

脱酸素・殺菌・充填のどこかで一つ妥協をしてしまえば、結果として消費者や流通が離れてしまいます。

だからこそ、定期的な現場観察と部門横断のプロジェクト型改善が“ペットボトル茶の真価”を決める最大要素といえるのです。

先進事例と今後の方向性

一部大手メーカーでは、AIとビッグデータを組み合わせた“風味劣化予測モデル”を構築し、原料から出荷までの各ポイントで最適条件を自動アドバイスする仕組みを実装しています。

また、環境対応としてペットボトル素材自体の進化(酸素バリア性樹脂やリサイクル素材の採用)、無加熱殺菌と組み合わせた新製法も続々と実用化されています。

今後は、単なる工場自動化だけでなく、一次サプライヤー(茶葉農家・資材メーカー)含む全体最適と、SDGs型購買が加速することは間違いありません。

まとめ

お茶ペットボトルの製造現場は「脱酸素・殺菌・充填」という三大工程を如何にバランス良くマネジメントするかに全てがかかっています。

見えにくい部分にこそ現場の技術・知見が蓄積され、バイヤーやサプライヤーの適切な関与が、最終商品価値を大きく左右する時代です。

製造業界の昭和体質を打破し、高度な現場力とデジタル化の両輪で、真においしいお茶の安定供給を目指しましょう。

それが、現場・購買・品質の三者にとって最大の価値創出となるはずです。

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