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ペンキのムラを防ぐ撹拌粘度管理と顔料分散制御

目次
はじめに―製造業現場目線で語るペンキ品質管理の重要性
製造業に携わる者として、ペンキや塗料の品質は最終製品の価値を大きく左右する要素です。
特に自動車や建材、電気機器など多様な業界で使われるペンキにおいて、「発色の良さ」「均一な膜厚」「耐久性の確保」「作業効率」のすべては現場での撹拌や分散など基本工程の徹底管理から生まれます。
しかし現実の工場現場では、「ペンキの塗りムラ」が後工程で発覚しクレームや再加工に繋がることも珍しくありません。
本記事では、長年の現場目線と管理職の経験、さらには最新の業界トレンドを交え、「撹拌粘度管理」と「顔料分散制御」の重要性、そして具体的な実践ポイントを解説します。
昭和以来根付くアナログな手順と、DX時代の最新技術活用―両者の“いいとこ取り”を目指す方針で、現場に活きる記事をお届けします。
なぜペンキの「ムラ」は発生するのか?その根本原因
顔料分散不良による色ムラ・濃淡の発生
ペンキの“ムラ”と一口に言っても、その原因は多岐にわたります。
中でも、最も見過ごされがちで抜本的な要因は「顔料が均一に分散されていない」ことです。
ペンキの主成分である顔料は、粒径や比重が異なることから、攪拌不十分だと沈降や偏在が生じます。
この状態で塗装を行えば、表面に濃淡ムラや発色のばらつきが現れます。
特に加圧送液や再循環が行われるラインでは、「途中での攪拌不足→工程内での分離」という状態が慢性化している工場も少なくありません。
粘度バラツキによる塗布量と“伸び”の不均一化
もう一つの大きな要因は「塗料粘度の適切な管理ができていない」ことです。
粘度とは、ペンキの“とろみ”であり、塗布のしやすさや厚み、乾燥速度、仕上がりの均一性に密接に関わっています。
原液状態では問題なくても、希釈不良や一時的な粘度調整ミスで、部品や時期ごとにバラツキが生じ、仕上げに大きな差が生まれます。
結果として、同じ品番の塗装品にもかかわらず「一つひとつ色味が違う」「部分的に塗布厚の差が激しい」といった現象が現場クレームの根本です。
現場・調達担当者が抑えておきたい撹拌粘度管理の実践ポイント
1. 原材料入庫時のダブルチェック体制
まず見逃せないのは、顔料の入庫時検査・仕入れ先管理です。
長年の実務経験から、「メーカー標準品だから安心」「伝票の成分値だけでOK」という慢心は禁物だと実感しています。
調達現場では、ペンキバッチ(ロット)ごとに必ず「粒径分布」「含水率」「異物混入」「原液粘度」などのダブルチェックを実施する仕組みを整えましょう。
異常時のロット隔離、仕入元への即時フィードバックもプロの現場対応です。
サプライヤーからの納入品も、実際の現場使用条件下での評価を都度行い、安定供給と品質のすり合わせを絶えず繰り返すことが信頼構築のカギです。
2. 現場での撹拌管理―「時間」と「回転数」を定量化
撹拌工程では、「今までもこうやってきた」「熟練者の勘所で回している」というアナログ手法に陥りがちです。
ですが、撹拌に最適な「時間」「回転数」「羽根の形状」はペンキの種類、ロット、温度、添加剤有無によって大きく異なります。
現場においては、マニュアルに数値化された「推奨撹拌条件」を明記し、作業者ごとのばらつきをなくすことが重要です。
さらに、撹拌中の温度上昇による成分分解や溶剤揮発にも注意が必要です。
ベテランから若手までが再現できる「見える化された手順書」を整備し、異常時には即対応できる管理基盤を作りましょう。
3. 粘度計・分散度チェッカーの活用と検査頻度管理
ペンキ工程では、「粘度計」や「分散度チェッカー(グラインドゲージ)」といった測定機器の活用が不可欠です。
昭和の現場では手触りや筆運びで判断してきた粘度を、現代では「デジタル粘度計」「自動分散度測定機」でデータ管理するケースが増えました。
具体的には、出荷前・工程切り替え時・保管後の都度、粘度や分散状況をサンプルチェックし、定められた値からの逸脱が生じないようモニタリングします。
測定データは全数履歴(トレーサビリティ)として記録し、クレームや品質異常発生時の“原因遡及”に役立てます。
この一連の流れが現場品質管理の確実な土台となります。
顔料分散制御の実務的アプローチと最新トレンド
1. ビーズミル・三本ロールの使い分けと自動化装置導入
ペンキの顔料分散には「ビーズミル」「ボールミル」「三本ロール」など、装置の選定や設定が品質の出来を左右します。
例えば顔料が硬質・凝集性が高い場合は「高剪断力型ビーズミル」、炭酸カルシウムなど軟質顔料では「三本ロール」が適しています。
導入コストだけでなく、将来的なメンテナンス性やランニングコストまで見越した設備投資が求められます。
最近では各社でIoT対応の自動撹拌・分散ラインが増加しつつあり、「異常値の自動アラーム」「データ解析による最適条件の自動提示」など、本来熟練工が担っていた役割を機械化する動きも顕著です。
2. AI・画像解析技術を活用した新しい品質保証
DX推進の波を受け、顔料分散状態の判定や、最終塗膜の色ムラ抽出に「AI画像解析」が活用されるようになっています。
ライン上カメラで塗装面の“微細なムラ”や“異常光沢”をリアルタイムで捉え、NG時は自動的に工程停止・アラートを出す仕組みを持つ工場も増加中です。
現場の熟練技術とデジタル技術を補完し合うことで、従来の“ダブルチェック”“見逃しの排除”が次のレベルに進化しています。
3. サプライヤー―バイヤー間の共創型品質保証体制
調達・購買の視点からは「サプライヤー任せ」ではなく「共創型の品質管理」が今後必須となります。
現場の粘度・分散チェックデータをサプライヤーと共有し、原材料ロットごとのパフォーマンスを可視化。
トラブル発生時にはPDCAのサイクルを共に回すことで、相手のプロセス改善提案も受けやすくなります。
またバイヤー側も、顔料分散評価に関する知見や工程管理ノウハウを積極的に吸収し、市場動向や新規技術導入への眼を養うことが今後大きな競争力を生みます。
昭和的アナログ管理のメリット・デメリット
熟練作業者の勘所を「標準化」する視点
長年現場にいると、「あのベテランの感覚はすごい」というケースを何度も目にします。
粘度や分散状態を“ひと目”で見抜く熟練者の勘所が強みだったのは、手作業が多かった昭和・平成前期の現場ならではです。
しかし、これをマニュアルとして新人に引き継ぐには限界があります。
今後は、熟練作業者の所作や判断基準を「動画撮影」「標準操作手順書(SOP)」「トラブル対応フロー」として言語化・標準化し、誰が見ても再現できる知的財産とする視点が不可欠です。
属人化からの脱却・多能工化へのシフト
アナログ的な管理のデメリットは、作業者への“属人化”です。
1人の異動・退職で現場力が一気に低下する事例は今なお各地の工場で発生しています。
粘度・分散の測定、攪拌工程操作、異常時対応を「全員が理解し実践できる」体制にするためにも、“見える化”と“交代制管理”を徹底しましょう。
多能工化や現場へのOJT体制強化が、デジタル時代とアナログ現場の橋渡しとなります。
まとめ―撹拌粘度管理と顔料分散制御で実現する現場品質革新
ペンキの「ムラ」を防ぐ品質管理の本質は、粘度・分散・温度・工程時間といった“当たり前”の細部を徹底することに尽きます。
調達・購買担当には、「良い素材選び」と「サプライヤーとの共創」による品質安定化の視点が不可欠です。
一方、現場目線では「定量管理」「検査頻度の最適化」「デジタル機器活用」「異常時の即時是正」こそが再発防止の鍵です。
また、業界全体の流れとしては、AIや自動化技術の導入が加速し、昔ながらの勘所と新しいテクノロジーが融合し始めています。
サプライヤー・バイヤー・製造現場が“三位一体”で品質保証に取り組むことが、アナログ業界から一段抜け出した“競争力”を実現します。
経験と新技術の橋渡し役として、現場で学び、考え、共有し合う姿勢を、製造業すべての仲間に伝え続けたいと思います。
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