投稿日:2025年9月9日

ULDビルド時の荷重集中でパレット破損を防ぐ積付けガイド

ULDビルド時の荷重集中でパレット破損を防ぐ積付けガイド

航空貨物業界やグローバル製造業に欠かせないULD(Unit Load Device)は、効率的な荷役と輸送を可能にする重要な存在です。
特に、パレット型ULDは大量貨物の一括運搬に不可欠ですが、その積付け(パレタイズ)方法次第で、しばしば荷重集中によるパレット破損や貨物事故が発生します。
本記事では、昭和以来のアナログな現場でも即応用でき、現実の工場や物流現場で今すぐ使えるULDビルド(組み立て・積付け)の最適化ノウハウを、管理職・品質・調達の観点から詳しくご案内します。

なぜULDの積付けでパレット破損が起こりやすいのか?

パレット型ULDの構造とその限界

パレット型ULDは、数百kg~1tにも及ぶ多様な貨物をまとめて輸送するためのプラットフォームです。
アルミ製であることが多く、強度は高く設計されている反面、金属疲労や曲げには注意が必要です。
最大搭載重量を超えずとも、不均等な荷重集中が部分的な“たわみ”や“へこみ”を招き、想定外のダメージ蓄積によってパレットの破損が多発します。

荷重集中の要因とよくある積付けミス

実際の現場では、以下のような積付けミスがしばしば起こります。

・重い貨物を1カ所に寄せて積む
・貨物の下部に隙間やアンバランスな配置がある
・非均質な箱サイズのまま積む
・“時間がない”を言い訳にパレットがたわんでいるのを放置する

結果として、パレット中央部や角部分に局所的な荷重が集中し、破損の原因となるのです。

パレット破損の被害-企業が失う3つのリスク

1:貨物損傷による顧客信頼低下

積荷の下部や側面にかかった異常な荷重が梱包箱を潰し、中の製品破損や液漏れ事故につながります。
顧客にとっては信頼失墜要因となり、クレーム対応や損害賠償に発展するリスクを孕みます。

2:フライト・輸送遅延によるサプライチェーン混乱

ULDパレットの破損が発覚すれば航空会社側が再パレタイズを指示し、最悪の場合は出荷延期に。
最終納期に追われる日本企業では致命的なタイムロスの原因となります。

3:コストアップと人的作業負担増

パレットの交換・補修費用だけでなく、荷役作業員の負担増や管理帳票の追記など、本来不要なコストが重なります。
現場のモチベーション低下を招く点も見逃せません。

ULDパレット破損をカバーする積付けガイドの実践ポイント

1.「面」で支える定石を徹底

パレットは「点」より「面」で荷重を支えなければなりません。
重い貨物・箱は必ずパレットベース全体(できれば中央線と角にバランスよく)に分散しましょう。
下部に最も重い貨物、その上に軽い貨物を配する“黄金則”を遵守してください。
特に中央部分に過度な荷重がかかりがちなので要注意です。

2.極力「隙間」を作らない積付け

ULDパレットの荷重分散は“ピッタリ感”が命です。
バラバラの箱が当たっているようで実は隙間が空いていることが多いため、現場ではダンボールの残材や専用スペーサーを使って隙間を埋める工夫も有効です。
異型の箱や製品も平積みできる冶具を活用するとよいでしょう。

3.荷札や取扱注意マークの着目

精密機器や液体など、特定の取り扱い指示がある梱包には必ず対応しましょう。
天地無用、横積み不可のシンボルがある場合は、荷重のかかる方向や積み上げ数に注意を払ってください。
積み方ひとつで品質クレームの根源を断てます。

4.パレット自体の健全性を事前チェック

意外に見落としがちなのがULDパレット自体の“疲労”です。
一見正常でも溶接部のクラックや過去の補修跡、目視できないたわみが潜んでいます。
積付け前の「いつものパレット」も、作業前に現場リーダーが目視チェックし、異常時は即交換しましょう。

5.積付け後の「自重テスト」と写真記録

積み終わったパレットは人が上に乗る、人力で軽く押すなどの“自重テスト”で不自然なたわみや揺れがないか簡易的に点検しましょう。
現場では「ここがポイント」と思った積み方は必ず写真で記録し、品質管理や納品立会の際にエビデンス資料としてください。
これがトラブル時の強い盾となります。

アナログ現場での工夫とラテラルシンキングの視点

“よその工場”の知恵・失敗例を盗め

昭和から続く現場文化でも、積付けの工夫には“よその現場”だからこそ生まれた知見がたくさんあります。
現場同士の合同勉強会や、お取引先とのトラブル未然防止事例の共有、SNSなどでの情報発信が、日々の工場改善のきっかけになります。

AIやIoT時代への移行と「人」の価値

積付け最適化ソフトや、パレット重量センサーなど“先端機器”導入が進みつつありますが、最終的な現場判断は「人」の眼力が支えています。
積付け工程での「違和感」や長年のカン・経験値が、パレット破損回避の最後の砦です。
若い世代や技能伝承において、このアナログ知見の「なぜそうするのか」を定義し言語化していくことも大切です。

バイヤー・サプライヤー双方が知るべき積付けリスクと最適化

バイヤーの視点:コストダウンVSリスク管理

資材や貨物の運搬を外注するバイヤーとしては「輸送コスト最安」に目が行きがちですが、ULDやパレットの破損リスクを事前に伝えておくことは重要です。
「最大積載重量」だけではなく「最大面積」「積付けスタイル」の指定、「実地検証」の提案がベストプラクティスです。

サプライヤーの視点:現場実態のフィードバック力

サプライヤー側はパレット破損クレームの発生メカニズムや、現場目線での積付け難易点を小まめにバイヤーへフィードバックするのがよいでしょう。
積付けガイドラインの定期見直し提案や専用冶具の提供、写真や事例集として見える化することで、サプライチェーン全体の底上げにつながります。

まとめ:ULD積付けこそ現場と調達の協調がカギ

航空会社や輸送事業者はもちろん、荷主である製造業の調達や現場担当も、ULDパレット積付けの最適化に一丸となる姿勢が求められます。
現場の「なぜこうするのか」「一見非効率だが事故を防ぐための一手」を言語化し、バイヤー・サプライヤーの双方で知識を蓄積・共有する文化を醸成しましょう。
これが将来のAI自動化時代にも耐えうる現場力であり、世界に誇れる日本の製造業の新たな地平線をひらくヒントとなります。

ULD積付けを侮るなかれ。
“点”で支える失敗、“面”で支える実践。
現場知見と最新技術の共存が、未来のサプライチェーンを強固にします。

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