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紙支給図の持ち出し管理を受付撮影で代替する簡易セキュリティ

目次
はじめに:製造業に根強く残る「紙支給図」運用の現実
高度なデジタル技術が広まり、製造業でも「ペーパーレス化」の掛け声が叫ばれています。
しかし現場に目を向けると、いまだに紙の図面——通称「紙支給図」——が数多く利用されています。
設計意図が手書きの書き込みで補足されていたり、検査用に原寸大で必要だったりと、紙図面の「現場力」はまだまだ侮れません。
その一方で、図面は高度な知的財産です。
工場内での持ち出し管理や保全方法は、企業機密保持の観点からも一層重要性が増しています。
ところが現実には、「持ち出しノート」への手書き管理や、受付での受け渡しチェックなど、昭和の時代から変わらない運用も少なくありません。
では、限られたリソースで手軽に、かつ確実にセキュリティを高めるにはどうしたらよいのでしょうか。
本記事では、経験豊富な管理者目線で、受付での「撮影代行」という一工夫を用いた簡易セキュリティの方法を掘り下げて解説します。
なぜ紙支給図から脱却できないのか
紙図面の根強い利便性
設計・加工・検査の各現場で、紙図面には固有のメリットがあります。
折り畳んで持ち運びができ、油や汚れにも態度を変えない耐久性。
また、電子データと違い「紙一枚あればどこでも仕事が始められる」という安心感が、熟練者ほど身についています。
さらには、製造設備の近くで簡単にメモ書きや追記ができる点、現場特有の「知見」や「ノウハウ」共有に役立つという実用性もあります。
現場のデジタル化への壁
近年、図面データの電子化(PDF、CADデータ流通)、製品管理台帳のクラウド化が進んでいます。
ですが、現場スタッフのITリテラシーや、インフラ整備の遅れ、現場感覚とのギャップにより、完全な移行はなかなか実現しません。
クラウド端末を十分な数揃える予算的余裕がない。
また、工場現場の騒音・粉塵・油等の環境的制約からも、紙を前提とした運用を切り替えにくいという事情が根強く残っています。
紙支給図=リスク、その現実を直視する
紙支給図には「持ち出し」や「複製」のリスクが常につきまといます。
不正持ち出しで情報漏洩、競合他社への流出、意図せぬ紛失…。
これらは企業存続すら脅かす重大なリスクです。
もちろん、現場でも危機意識は持っています。
ですが、日々の「忙しさ」に紛れ、受付での記名や返却確認が「形だけ」になっていることも多いのが実情です。
従来のアナログ管理手法の限界
手書きノートの問題点
「図面No./氏名/部署/持出日/返却日」を記録する手書きノート。
しかし現場では、複数人で並行して作業すれば記帳漏れや記入ミスも発生します。
返却の取り違えや、筆跡が読めない、というようなトラブルも避けられません。
形式的チェックの形骸化
受付での「ハンコ」や「口頭確認」も、作業が立て込む時間帯にはおざなりになり、記録が曖昧に。
誰がいつ何を持ち出し、どう返却したか、万が一事故が起きた際のトレーサビリティが確保できません。
また、図面そのものに変更指示や赤入れが施された場合、その版管理・改訂管理もアナログだと滞りがちです。
「受付撮影」の発想で一歩進める簡易セキュリティ
受付での「持ち出し」撮影をルール化する
受付窓口にスマートフォン、もしくはタブレット端末を設置します。
図面を持ち出す際、必ず受付スタッフがその図面と持ち出し担当者を同じアングルに入れて写真撮影。
ファイル名の命名規則(例:yyyyMMdd_図面No_担当者名)を統一し、画像をチーム共有フォルダに即時アップロードする運用を徹底します。
この「受付撮影」スタイルは、アナログ現場でも無理なく導入が可能で、実施ハードルが低いのが大きな利点です。
記録の「証拠性」と「透明性」向上
写真データはデジタルタイムスタンプが自動で付与される上、改ざんが困難です。
「誰がどの図面をいつ持ち出したか」の記録が動画や顔認証レベルには至らないものの、「証拠」として十分な威力を持ちます。
また、画像による可視化で、受付スタッフの意識向上・持ち出しルールの形骸化防止効果も期待できます。
簡易な監査・トレーサビリティ構築が可能に
万が一紛失や事故が発生した際も、撮影データで「持出者が誰か」の特定・対応が迅速に行えます。
また、外部監査が入った場合にも証拠資料として活用しやすいのがポイントです。
現場での導入・運用で留意すべきポイント
セキュリティ・プライバシー観点にも配慮
撮影された情報の保存先フォルダはパスワード管理を行い、アクセス権限を限定しましょう。
また、撮影手順や画像利用目的を社内に明確に周知し、肖像権・個人情報保護の観点でも配慮を怠らないようにします。
撮影機材調達と運用フローの簡素化
専用端末がない場合は、受付業務用のタブレットや借り上げスマートフォンを活用しましょう。
また、 写真フォルダの命名規則や、保存〜期間満了後の削除(例:6ヶ月保存後消去)のプロセスを明文化し、運用ルールに落とし込みます。
現場スタッフに対しては「管理強化」ではなく、「自分たちの図面を守るための仕組み」として説明し、協力を得られる土壌作りが大切です。
ITリテラシー格差への対応
アナログ現場では、デジタル機器操作に不慣れなスタッフもいます。
写真撮影の手順をポスター化し、現場教育で必ずレクチャーを行い、誰でも使える状態を目指します。
トラブル時には「受付スタッフが撮影補助に回る」など、柔軟な対応も組み込んでください。
バイヤー/サプライヤー双方の立場から見るメリット
バイヤーにとっての管理効率向上
数十~数百枚単位で図面管理が発生するバイヤー現場において、「誰が・いつ・どの図面を確認したか」が即時に分かることで、余計な問い合わせや調整工数が大幅に削減されます。
また、万が一のインシデント時も迅速な説明責任対応が可能です。
サプライヤーにとって「信頼構築」の切り札に
受託側サプライヤーにとって、顧客からの図面管理体制は信頼獲得の指標です。
この「受付撮影」方式を明確に運用し、文書化しておくことで、
・顧客監査へのスムーズな対応
・「コストをかけずに知財管理を徹底している」という企業姿勢
・他社との差別化ポイント
としてプロモーションにも活用できます。
まとめ:現実的な「一歩」から職場のセキュリティ文化が変わる
紙支給図の管理を「理想論」でデジタル化一辺倒に進めることは、現場目線では非常に難しいのが正直な現実です。
しかし、昭和モデルの「手書きノート管理」から、簡単な「受付撮影」方式にワンステップ移行するだけでも、企業の機密管理レベルは飛躍的に向上します。
セキュリティ強化はもちろん、「守り」の品質を高めることで、結果的に「攻め」の提案力も育まれ、製造業全体の信頼感や価値向上につながっていきます。
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