- お役立ち記事
- パートナーシップ構築宣言を出した会社の調達で守ること
パートナーシップ構築宣言を出した会社の調達で守ること

この記事のポイント(結論先出し)
2026 年 10 月時点の整理である。パートナーシップ構築宣言は、発注者の立場から、代表権のある者の名前で、サプライチェーン全体の共存共栄と、受託中小企業振興法に基づく「振興基準」の遵守を宣言するものである[1]。2026 年 1 月 1 日から施行された公表要領では、取適法に基づく勧告や独占禁止法の排除措置命令、振興法に基づく指導・助言などを受けると、宣言の掲載が取りやめになりうると定められた[2]。振興基準は、宣言をした委託事業者が、宣言の内容を営業・調達の現場の担当者まで浸透させるよう努めるものとしている(努力規定)[5]。宣言は経営者の名前で出すが、守れるかどうかを決めるのは日々の発注を出している調達部門である。
目次
宣言は何を約束するものか
宣言のポータルサイトは、パートナーシップ構築宣言を「事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、『発注者』側の立場から、『代表権のある者の名前』で宣言するもの」と説明している[1]。導入が決まったのは 2020 年 5 月 18 日で、経団連会長、日商会頭、連合会長と関係大臣をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の場だった[3]。宣言は(公財)全国中小企業振興機関協会が運営するポータルサイトに掲載される[3]。
2026 年 1 月版のひな形は、3 つの柱で構成されている[4]。
1. サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携:直接の取引先だけでなくサプライチェーンの深い層の取引先に働きかけ、全体の付加価値向上を目指す。個別項目として、企業間の連携、IT 実装支援、専門人材マッチング、グリーン化の取組、健康経営に関する取組、BCP・事業継続の 6 つが挙げられ、そこから取り組む項目を選んで具体的に書く。
2. 「振興基準」の遵守:発注方法の改善、対価の決定方法の改善、代金の支払方法の改善、型等に係る取引条件の改善、知的財産の保護と取引の適正化などを含む望ましい取引慣行を遵守し、パートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組む。
3. その他(任意記載):記載例として、直接の取引先のさらに先まで価格転嫁が可能となる価格決定を行うこと、取引先満足度調査の実施、成果配分を取引先との間で 50 対 50 とすること、そして約束手形の利用の廃止に向けて、大企業間取引も含め、現金払いや電子記録債権への移行に取り組むことなどが示されている。
ひな形の注釈には、中小受託取引以外の企業間取引についても、取引上の立場に優劣がある企業間での取引の適正化を図る場合はその旨を書くよう求める一文がある[4]。宣言の 2 本目の柱が調達部門の仕事そのものであることは、文面から明らかである。
📄 実務で使うなら — 取適法 違反しない発注のしかた(全 5 章・無料サンプルあり)
宣言の出し方と、登録の前に確かめること
宣言は企業ごとに出す。記載要領は、冒頭を「当社グループは」とするなど、企業グループとして宣言する形での公表は受け付けていないと明記している[3]。署名欄には代表権を有する者の役職・氏名を入力し、手書きは不可とされる[6]。登録すると、企業名と代表者名を含む宣言文がポータルサイトに公開され、修正依頼がなければ登録の約 10 日後に公開される[6]。登録の案内は、宣言には振興基準の遵守が含まれるため、登録前に振興基準の内容を確かめるよう求めている[6]。
公表要領は、掲載の申込みに宣誓書を添付することを求め、宣誓の項目として次の 5 つを挙げている[2]。
1. 役員に暴力団員等がいないこと。
2. 暴力団員等が事業活動を支配していないこと。
3. 申請前 1 年間に取適法第 10 条の勧告、フリーランス法第 8 条第 1 項・第 2 項の勧告、独占禁止法第 20 条の排除措置命令を受けていた場合は、その内容を履行していること。
4. 申請前 1 年間に振興法第 4 条の指導・助言・勧奨を受けていた場合は、業所管省庁に報告した直近の改善案を履行していること。
5. 掲載が取りやめになったことがある場合は、取りやめから 1 年を経過し、原因となった事由に適切に対応している旨を業所管省庁に十分説明していること。
どんなときに掲載が取りやめになるか
2026 年 1 月施行の公表要領は、宣言企業が宣言を履行していないと認めるとき、業所管省庁が中小企業庁を通じてポータルの運営団体に掲載の取りやめを求めることができると定める[2]。履行していないと認める例として挙がっているのは次の 4 つである。
| 取りやめの例(公表要領) | 根拠となる法令 | 調達部門が日常で関わる行為(実務の整理) |
|---|---|---|
| 勧告を受けたとき | 取適法第 10 条 | 減額、買いたたき、支払遅延、型の無償保管など |
| 勧告を受けたとき | フリーランス法第 8 条第 1 項・第 2 項 | 個人への設計・加工の外注での取引条件の明示や支払 |
| 排除措置命令を受けたとき | 独占禁止法第 20 条 | 取適法の対象外の取引での優越的地位の濫用など |
| 指導・助言・勧奨を受けるなど、掲載継続が適切でないと認めるとき | 振興法第 4 条 | 価格協議の運用、支払条件、検査条件の事前協議など |
このほか、宣言後に宣誓書と異なる状況にある可能性を業所管省庁が把握した場合、宣言企業に説明を求め、十分な説明がなければ取りやめを求めることができる[2]。ひな形の備考も、主務大臣から振興基準に基づく指導または助言が行われた場合など、宣言が履行されていないと認められる場合には掲載が取りやめになることがあると書いている[4]。
4 段目は見落とされやすい。振興法に基づく大臣名の指導・助言は、価格交渉促進月間のフォローアップ調査で状況が芳しくなかった発注者にも行われている。調査の仕組みは価格交渉促進月間とフォローアップ調査にまとめた。取適法の勧告や公表の流れは違反するとどうなるかで扱っている。
振興基準が宣言企業に求めていること
振興基準は、宣言について次のように定めている[5]。委託事業者は、ポータルサイトに掲載されたひな形を基に宣言を行うよう努めるものとし、宣言を行った委託事業者は、取引の適正化に向けた施策の進展や取引環境の変化を踏まえて定期的に宣言内容の見直しを行うよう努めるものとする。さらに、宣言を行った委託事業者は、社内の広報・訓示・研修などを通じて、営業・調達などの現場の担当者まで宣言が浸透するよう努め、中小受託事業者に対しても宣言を行っている旨と内容の周知に努めるものとする。
研修の体制は別の規定にも出てくる。委託事業者は、調達の責任者から担当者に至るまで、独占禁止法、取適法、フリーランス法、振興基準、そして宣言をしている場合はパートナーシップ構築宣言について理解を深めるよう、研修・啓発・教育を十分に実施する体制を整備するものとされる[5]。後者は「〜するものとする」の形で書かれている点で、前者の努力規定より重い。振興基準の規定の読み分け方は振興基準の改正で、発注側に求められていることで扱う。
2026 年 6 月の振興基準の改正で、守る中身も増えた
宣言の 2 本目の柱は「振興基準の遵守」なので、振興基準が改正されれば、宣言で守ると約束した中身も変わる。経済産業省は 2026 年 6 月 24 日、知的財産の取引、型等の無償保管、調達担当者の人事評価にかかわる規定を加える振興基準の改正を公表した[8]。
宣言文そのものを書き換える必要はなくても、宣言を出した時点の振興基準しか社内に周知していなければ、現場の運用は古いままになる。仕入先に預けている型の扱いと、調達担当者の評価項目は、とくに改正の影響を受ける。2026 年版の中小企業白書も、令和 8 年度に講じる施策として「パートナーシップ構築宣言」の拡大と実効性の向上を挙げている[9]。数を増やす段階から、宣言した会社が守れているかを確かめる段階に移っていると読める。
経済 3 団体が求めていること
日本経済団体連合会・日本商工会議所・経済同友会は 2026 年 1 月 15 日、連名で宣言の実効性向上を求める要請を出した。2023 年 1 月以来 3 年連続で共同要請を出してきたこと、宣言企業数が約 5 倍に増えたことに触れたうえで、価格転嫁はいまだ道半ばだとしている[7]。要請が会員企業に求めている内容は、調達部門の運用に直結する[7]。
まず、経営者が先頭に立って宣言を公表し、社内に周知し、実行とフォローのための社内体制を明確に示すこと。宣言後も実行状況を把握し、宣言内容を見直すこと。直接の取引先を通じてその先の取引先へ働きかけること。そして、調達部門などの実務者が価格転嫁を受け入れても不利益を被ることのない人事評価制度の整備に努めることである[7]。
調達部門で決めておくこと
宣言の文言は抽象的なので、そのままでは現場で守れているかを確かめられない。ひな形は「1. サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携」「2. 振興基準の遵守」「3. その他(任意記載)」の 3 つの柱でできている[4]。自社の宣言文を柱ごとに読み、書いたことを調達の手順と記録に置き換えておくとよい。次の表は実務の提案である。
| 宣言のどこに書いたか | 調達部門でやること | 確かめる記録 |
|---|---|---|
| 1 の柱:深い層の取引先への働きかけと、自社が特定した個別項目 | 特定した個別項目ごとに担当部署と取組の中身を決める。一次仕入先との協議に、二次以降の取引先の状況を尋ねる項目を入れる | 個別項目ごとの取組記録、協議の議事メモ |
| 2 の柱:振興基準の遵守 | 協議・支払・型・検査の運用を振興基準の規定ごとに整え、2026 年 6 月の改正分を反映する | 振興基準の規定ごとの点検の記録 |
| 2 の柱の追記:取適法の対象外の取引にも広げる旨 | 取引上の立場に優劣がある取引先には、取適法の対象かどうかにかかわらず同じ協議・支払の運用を当てる | 取引先区分ごとの運用の一覧 |
| 3 の任意記載:約束手形の利用の廃止など | 手形払が残る取引先を洗い出し、切り替えの時期を決める | 切替計画と合意書 |
| 宣言全体:現場への浸透 | 宣言文を調達担当者の研修資料に入れ、取引先にも宣言していることと内容を伝える | 研修の実施記録、取引先への通知 |
2 の柱の中身にあたる協議・支払・型・検査を、規定ごとに調達の手順へ写す点検表は振興基準の改正で、発注側に求められていることに置いた。宣言をしている会社も、していない会社も、そちらの表が共通の土台になる。
価格の申し入れの受け方は仕入先から値上げの申し入れが来たらに、型の扱いは有償支給材と金型代に、支払手段の切り替えは紙の約束手形の廃止に向けてにまとめてある。任意記載に手形の廃止を書いている会社は、表の 4 行目を先に片づけておきたい。
よくある質問
グループ会社をまとめて 1 つの宣言にできますか
できない。記載要領は企業グループとしての宣言を受け付けておらず、同じグループ内でも企業ごとに宣言するよう求めている[3]。グループで調達部門を共有している場合は、どの会社の名義で発注しているかと、どの会社の宣言が及ぶかを合わせておく必要がある。
宣言は法的な義務ですか
義務ではない。振興基準も、ひな形を基に宣言を行うよう「努めるものとする」と書いている[5]。ただし、いったん宣言すると、上の表のとおり勧告や指導・助言を受けたときに掲載が取りやめになりうる[2]。宣言の有無よりも、宣言した内容を現場が守れているかのほうが問われる。
宣言の内容は見直したほうがよいのですか
振興基準は、取引の適正化に向けた施策の進展や取引環境の変化を踏まえ、定期的に宣言内容の見直しを行うよう努めるものとしている[5]。ひな形は 2026 年 1 月版に改められており[4]、取適法の施行前に宣言した会社は、現行のひな形と自社の宣言文を見比べておくとよい。
まとめ
パートナーシップ構築宣言は、発注者として代表者の名前で共存共栄と振興基準の遵守を約束するものである[1]。2026 年 1 月施行の公表要領で、取適法やフリーランス法の勧告、独占禁止法の排除措置命令、振興法の指導・助言などを受けると掲載が取りやめになりうることがはっきりした[2]。振興基準は宣言の内容を調達の現場まで浸透させるよう努めるものとし[5]、経済 3 団体は実行とフォローの体制と、価格転嫁を受け入れた実務者が不利益を被らない人事評価を求めている[7]。自社の宣言文を柱ごとに読み、書いた取組を手順と記録に置き換え、振興基準の遵守にあたる部分は規定ごとの点検で裏づけておくことが、宣言を出した会社の調達部門の仕事である。
出典・参考資料
- パートナーシップ構築宣言とは(パートナーシップ構築宣言ポータルサイト)
- パートナーシップ構築宣言公表要領(未来を拓くパートナーシップ構築推進会議/令和 7 年 12 月 15 日・令和 8 年 1 月 1 日施行)
- パートナーシップ構築宣言 記載要領(未来を拓くパートナーシップ構築推進会議 事務局/2020 年 6 月・2026 年 1 月改正)
- 「パートナーシップ構築宣言」のひな形(2026 年 1 月版・注釈あり)(パートナーシップ構築宣言ポータルサイト)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 登録方法(パートナーシップ構築宣言ポータルサイト)
- 「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上に向けて(日本経済団体連合会・日本商工会議所・経済同友会/2026 年 1 月 15 日)
- 受託中小企業振興法に基づく「振興基準」を改正しました(経済産業省/2026 年 6 月 24 日)
- 2026年版 中小企業白書 官公需も含めた価格転嫁・取引適正化の更なる徹底(中小企業庁)
宣言の中身を、調達担当者の教育に使える形にするなら
NEWJI総研は、製造業の購買・調達を中心とする実務と法令・規格の動きを調べ、研修テキストや実務書式、改訂対応の資料にまとめている調査の場です。取適法の改正に対応した法令改訂対応パックの棚もあります。
この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント
製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。
FREE DOCUMENT — サービス資料(PDF・無料)
見積依頼から比較まで、
ひとつの画面にまとめる方法
Newji one は、製造業の調達・受発注に特化したクラウド/AIエージェント。見積依頼・発注書作成・進捗管理・承認をひとつの画面に集約し、AIが比較と異常検知を担当。最後の「GO」だけ人が押す仕組みです。
▶ 見積依頼から比較までをひとつの画面にまとめる方法を、資料で見る(PDF・無料)
- 見積〜発注〜納期を一元管理。催促・転記のムダをゼロに
- AIが相見積もり比較と異常検知。あなたは判断だけに集中
- 取引先は「招待」で完全無料。自社コストだけで取引先ごとデジタル化
※ 取引先から招待された企業様は完全無料でご利用いただけます
見積・発注クラウド Newji one
受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。
