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過去トラ作成と有効活用検討項目作成ヒューマンエラーKYT活用事例と留意点

目次
はじめに
製造業においては、ミスやトラブルによる損失は決して小さくありません。
限られた人数、時間、そしてリソースで生産性や品質、安全性を高めないといけない現場では、ヒューマンエラーの発生リスクを最小化することが極めて重要となります。
今回は、「過去トラ作成と有効活用」「検討項目作成」「ヒューマンエラーKYTの活用事例と留意点」について、昭和体質が根強く残るアナログな現場でも実践できるポイントを交えながら、現場目線で深掘りします。
現場で培ったノウハウを広く共有し、製造業の底力向上に貢献するためのヒントになれば幸いです。
過去トラ作成の重要性と現場での実践ポイント
過去トラとは何か
「過去トラ」とは、過去に発生したトラブル(不良、事故、納期遅延、クレームなど)を体系立てて記録し、再発防止や現場の学びに活かすための重要なツールのひとつです。
過去トラ作成を通じて、個人に頼った属人的な知識や暗黙知を、組織で共有できる「形式知」とすることができます。
なぜ今、過去トラが見直されているのか
デジタル化が進む一方、現場レベルでは未だ「口伝え」「ノート・メモ」「その場しのぎ」が横行しているのが日本の製造業のリアルです。
しかし、技能伝承や世代交代、外部環境の変化(サプライチェーンの複雑化、人材流動化など)への対応力を高めるために、過去トラの体系的な蓄積と活用が経営層からも強く求められるようになってきました。
押さえておきたい過去トラ作成のコツ
1. 事実をありのままに、誰でも分かる言葉で記録する
2. 原因分析(なぜ、どこで、どうして)をしっかり残す
3. 具体的な対応措置や再発防止策を明文化する
4. 写真や図、フローチャートなど視覚情報も活用する
5. 必ず「あとから見返す」ことを想定し、検索や分類しやすい仕組みにする
特に重要なのは、「やってしまった人を責めない」ことです。
トラブルは宝です。
現場で実際に起きた“ヒヤリ・ハット”の声も含め、心理的安全性を確保したうえで等身大の事例を残しましょう。
有効活用のための検討項目設計
形骸化させないための検討項目とは
せっかく記録した過去トラも、「記録をするための記録」や「使われないノウハウ」では意味がありません。
有効活用につなげるためには、“今”の現場が求める視点で検討項目を設計する必要があります。
たとえば以下のポイントを押さえて設計しましょう。
1. どの工程、どのタイミングで起きたトラブルか
2. 発生のきっかけ(人為的・機械的・外的要因…)は何か
3. ヒューマンエラーの場合「どこで、なぜ判断ミスが起きたか」
4. 防げたポイントがなかったか(ヒヤリ箇所、チェックリスト)
5. 対策の即効性、持続性、現場への浸透状況の評価
6. 他部署、他品種でも応用できる知見かどうか
7. 記録した担当者名、状況や感情もフリーワードで残す
言い換えれば、「調査書式」を作る段階から現場の声や運用イメージを盛り込むということです。
とくに淡々とExcelで入力するだけでは現場の臨場感が伝わらず、「机上の安全対策」になりやすい点は要注意です。
デジタル化とアナログ現場の折衷案
製造現場ではいきなり全情報をデジタル化(クラウド、AI解析…)するのは難しいことがほとんどです。
紙やホワイトボードでヒアリングしながら入力し、現場朝礼でシェア、その後まとめてデータベースに整理…といった「アナログとデジタルのハイブリッド」が現実解となりやすいです。
重要なのは、情報が流れず、担当者ごとでノウハウが埋もれることを防ぐことです。
KYT(危険予知訓練)活用事例とヒューマンエラー防止への応用
KYTの基礎と現場での意義
KYT(Kiken Yochi Training:危険予知訓練)は、実際の作業現場や作業手順についてグループで議論し、潜在的なリスクやエラーを“予知”するための訓練手法です。
主に労働安全衛生の分野で導入され、日本の現場文化としても定着しています。
しかし、近年では不良防止や納期遅延防止、設備停止回避など、「安全」に限らず幅広い現場の“失敗回避”にも応用されています。
KYTの基本フロー
1. 対象業務の「状況観察」:写真や実情を皆で確認
2. 「どんな危険が潜んでいるか」をグループで洗い出す
3. 「最も重要な危険」「見落としやすい危険」に着目する
4. 「どうすれば防げるか」を一人ひとり発表→討議
5. 意見をまとめ「具体的指差し呼称」で復唱、実践へ
KYT×ヒューマンエラー対策 活用事例
たとえば、ある工場の出荷前検品工程では、バーコード読み取り作業の“ダブルチェック”が形骸化、「検品漏れ」が連続発生しました。
そこでKYTを実施し、「忙しい時こそ二度読みデータが見逃されやすい」「昼休み明けは集中力が切れがち」といったヒューマンエラー要因を現場から洗い出しました。
実施結果を基に「作業手順書にチェックリストを追加」「交代時に声かけルールを徹底」「一定時間ごとにリーダーが現地確認」を即時導入。
結果として、月間の検品ミス発生率が1/10まで低減した事例があります。
また、生産設備メンテナンス現場では「設備停止後の電源確認」「手順誤りによる再起動ミス」をKYTで徹底討議。
若手・ベテラン混合のメンバーで意見を出し合うことで、「現場経験値の差」や「書類の読み飛ばし」リスクが浮き彫りとなりました。
「作業開始時の指差し呼称運動」「現場に常時貼り出すKYTイラスト化」に取り組んだことで、ヒューマンエラーの件数が半減しました。
このように、KYTは「みんなで考える・気付く・創る」ことで、潜在化しがちなヒューマンエラーを掘り起こし、“現場起点”で実効性の高い対策につなげることができます。
KYT導入・運用の留意点
形だけのKYTにならないためには
KYTが形骸化しやすい最大の要因は、「管理側の独りよがり」で運用することです。
配布されたマニュアルを“こなすだけ”になり、現場の本音や気付きが吸い上げられないと、本質的なエラー防止にはつながりません。
効果的なKYT実践には以下の視点も重要です。
・やらされ感を減らし、現場主導の議論を重視する
・若手や外部人材も意見を出しやすい心理的安全性を確保する
・ヒヤリ・ハット、軽微な事象も責めずに記録する
・日常業務の流れに馴染ませ“自然な習慣”にする
・定期的に過去のKYT内容を見返し、「良い失敗」や「成功事例」として全社にシェアする
サプライチェーン/他業界との連携の視点
昨今は、サプライチェーン全体でのリスク管理や、異業種連携(例:半導体製造と自動車部品、医薬品工場と食品工場 など)も求められています。
KYTや過去トラを現場単位にとどめず、「取引先」「サプライヤー」「関連会社」と相互フィードバックすることで、バイヤー・サプライヤー双方の強靭なパートナーシップ構築にもつながります。
たとえば、バイヤー視点では「取引先工場のリスク可視化」「依頼先へのトラブル情報のタイムリーな共有」。
サプライヤー視点では「顧客が何を懸念しているか」「先回り防止策の構築」など、多面的な価値の拡張が期待できます。
まとめ:小さな“現場知”を積み上げて「失敗しない現場」へ
製造業の現場で、ヒューマンエラーやトラブルゼロを目指すことは理想論だけでなく、現実的な生産・品質・安全性向上への第一歩です。
過去トラの蓄積、有効な検討項目設計、KYTを実効性ある形で回し続けることで、アナログな現場でこそ「現場起点の改革」「失敗からの学びの仕組み化」を実現できます。
バイヤー、サプライヤー問わず情報の壁を越え、“これまでの当たり前”を打ち破るには、従来の思考の枠(縦割り・属人化・日常業務優先)を越えた新しい地平線を目指すラテラルシンキングが不可欠です。
一人ひとりの現場力が、やがて日本のものづくり全体の底力につながる――。
そんな時代こそ、小さな過去トラ・地道なKYTの積み上げを、今日から一歩ずつ実践していきましょう。
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