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特許調査が不十分でリリース直前に権利侵害リスクが判明する最悪の展開

目次
はじめに:ものづくりの根幹を揺るがす特許問題
製造業の現場では、良いモノを、安く、早く、安全に作ることが永遠の課題です。
しかし、時代の変化とともに技術や仕組みだけでなく「知的財産」という目に見えない価値の取り扱いも極めて重要になっています。
特に、製品リリース直前になって特許侵害のリスクが判明した場合、その損失は計り知れません。
数年かけて開発した製品が市場に出る直前で販売中止となれば、莫大な開発投資が露と消えます。
昭和の時代には、「うちには従来からの独自技術がある」「あの会社がやることは真似じゃない」と言われ続けてきた傾向が強くありましたが、グローバル化と共にこの楽観主義は命取りになっています。
ここでは、調達購買、生産管理、品質管理の現場、さらに長年工場で培った経験から実践的な視点で、特許調査の重要性とその失敗事例、回避策について詳しく解説します。
特許調査を怠った時の“最悪のシナリオ”
リリース直前の発覚が招く損失
特許調査が不十分なまま新製品リリースを進めると、発表寸前に「競合が既に権利を持っていた」という状況が発覚することがあります。
仮に量産直前だった場合、生産ラインの手配、部材調達、物流まで実施済みであれば、その損害額は数千万円~数十億円に及ぶことも珍しくありません。
また、発表済みで流通まで始まっていた場合は、損害賠償請求やリコール、ブランド毀損という連鎖的なダメージにも発展します。
実際、日本の大手メーカーが海外市場で訴訟を起こされ、数百億円の支払い命令を受けた事例も存在します。
特許調査の軽視は、現場でのコストリーダーシップや納期短縮という工場最大の命題に対しても大きな足かせとなり、時にはプロジェクト自体が水泡に帰す最悪の結末になるのです。
“開発優先”が生み出す視野の狭さ
多くの現場では、開発スピードが競争力そのもの、と捉えられる傾向が強いです。
特許調査や特許出願は「法務担当がやるもの」「そもそも研究所の専門領域」と分担され、実際の現場や調達部門で深く意識されていないケースも多く見受けられます。
しかし調達品や部品の設計段階で特許侵害リスクを見逃すと、後で購買やサプライヤーも巻き込んだ大混乱となります。
「現場に関係ない」と思われがちな特許調査ですが、製品開発サイクルの一丁目一番地から全体を巻き込むべきテーマだと痛感します。
なぜ、特許調査が軽視されるのか?
昭和的な“暗黙知”の弊害
日本の製造業には、現場で培った職人芸や「他社にできない芸当」が重視されてきました。
そのため、「うちらしいやり方なら大丈夫」という暗黙知や属人性が前提となりがちです。
これらは一見強みに見えますが、特許の世界では危険です。
他社が特許を取得してしまえば、独自ノウハウですら侵害とみなされる恐れがあります。
また、特許調査に必要なスキルや人材が現場、調達、品質、法務それぞれで断片化し、全体でリスク評価できないという業界特有の問題もありました。
リソース不足とコスト意識
特許調査には専門的な知識やツールが必要です。
知財部門以外では特許公報の読み方や調査ノウハウに乏しい、あるいは予算をつけたくない、という理由で後回しにされている例がたくさんあります。
中小企業や下請け・サプライヤーになるほど「そこまで手が回らない」「特許調査は発注元がやるもの」という意識が強く、結果的に大手メーカー側でもサプライチェーン全体のリスク管理が難しくなっています。
調達・購買視点でのリスクと本質的課題
サプライヤー・バイヤー双方の“見えないリスク”
調達購買の現場から見ると、採用する部品・モジュール・材料に特許が絡んでいないかの調査は不可欠です。
「何年も使っている部品だから」「サプライヤーの信頼ブランドだから」と油断してしまい後から侵害品だったことが分かるケースもあります。
また、海外からの調達やODM部品の比率が増える現代では、現地で既に特許が取得済みだった事案にも十分な注意が必要です。
調達購買担当者が行うべきことは、「ただ安く仕入れる」のではなく、知財リスクも織り込んで契約条件や仕様確認を徹底することです。
適切な特許調査なくして調達の最適化は成立しません。
バイヤーとサプライヤーの情報連携の重要性
バイヤーは自社製品の設計図や仕様書に対して“どの特許が適用されるか”の情報をサプライヤーに共有する責任があります。
また、サプライヤー側も「この部品・工程にはどんな知財上の注意点があるか」を明示し、トラブル回避のための情報開示を積極的に行うべきです。
実際,大手メーカーでは契約時に「知財保証条項」を設け、供給品に万一特許侵害があればサプライヤーも損害賠償の一部を負担するルールが一般的になっています。
曖昧な情報管理のまま進めると、双方が泥沼の責任追及を始めるリスクが高まります。
現場で実践する具体的な特許調査・対策のポイント
1. 設計段階から全員が知財意識を持つ
製品ごとに「特許クリアランス」の担当者を早期に決定し、設計会議や購買会議に知財部門・法務部門・現場管理者も加える体制を作ることが重要です。
開発の全段階で特許関連のToDoを明文化し、進捗管理しましょう。
2. “特許マップ”でリスク可視化
主要な部品や工程ごとにどのような特許リスクが存在するかを特許マップとして可視化します。
その上で、“どの特許が、どの市場、どの競合と関連するか”をリストアップしておくと、法務・調達・設計・営業の全員が共有しやすくなります。
3. サプライヤー連携による二重チェック体制
主要サプライヤーとの情報連携を密にし、「該当部品の特許調査をサプライヤー自身でも実施しているか」を確認しましょう。
また、エンドユーザーに近いバイヤーサイドでも“独自の視点”で再度調査を行い、双方の調査結果を突き合わせることで、漏れやミスを極小化できます。
4. 社内教育と文化醸成の推進
現場や事務系職場でも定期的な知財教育を実施し、「毎回特許調査が当たり前」という組織風土を根付かせましょう。
特許だけでなく商標・意匠・著作権など広い観点で危ない領域を具体的事例と共に伝えることが効果的です。
知財リスクの“早期発見”がもたらす好循環
特許調査を徹底し、リリース前に潜在リスクを先回りして検知できれば、設計の見直しや代替部品の選定、人材リソースの変更なども計画的に実施できます。
“泥縄”の事後対応から脱却し、開発・調達全体の競争力強化にもつながります。
また、現場で「特許リスクに強い会社」だと評価されれば、新規取引やグローバル展開でも顧客やパートナーから高い信頼を得られます。
まとめ:「知財リスク管理」こそ現場力の時代へ
今や、ものづくりの現場力は「特許調査・知財マネジメント」を避けて通ることはできません。
特許侵害リスクは設計や調達、品質、サプライヤー管理と密接に絡み、誰もが当事者である時代です。
昭和型の暗黙知から脱却し、チームや組織の垣根を超えて知恵を出し合い、「起きてから慌てる」から「起きる前に撃つ」現場力を高めましょう。
未来の製造現場を守り、発展させるために、今こそ知財リテラシーの底上げが必要です。
特許調査とリスク管理を徹底し、グローバルに戦える強い日本のものづくりを一緒に築いていきましょう。
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