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パーカーのフードが立体的に見えるためのパターン設計

目次
パーカーのフードが立体的に見えるためのパターン設計とは
パーカーは、カジュアルなファッションに欠かせないアイテムです。
その中でも、フードの「立体感」が全体の見栄えや着心地を大きく左右します。
なぜなら、フードの形状が美しく立体的ならば、被ったときはもちろん、脱いでいるときでもパーカー全体のバランスが良く「着たい・使いたい」と感じさせるからです。
それでは、この立体的なフードを実現するためにはどのようなパターン設計や縫製技術が必要なのでしょうか。
本記事では、長年製造業の現場で培ったノウハウを元に、現場目線で分かりやすく解説していきます。
フードの「立体感」とは何か
平面的なフードと立体的なフードの違い
多くの粗悪なパーカーを観察すると、フードはだらんと下向きに垂れ下がり、立体感がありません。
これは「平面的なフード」です。
逆に、質の良いパーカーはフードが丸みを帯びて頭のカーブになじみ、自然に立体的なフォルムを保ちます。
これが「立体的なフード」です。
この違いは、見た目の高級感だけでなく、実際にフードをかぶったときのフィット感や着心地にも大きく影響します。
なぜ立体感が重要なのか
ファッション性という見地だけでなく、実用面(防寒性や雨除け効果)でもフードがしっかり立体を保っていることは重要です。
特に昨今ではSNSの普及で「着用した姿」を気にする人が増えており、単なる実用品ではなく「生活を彩るアイテム」としての価値が求められています。
立体的なフードを作るための基本設計
パターン設計の基本思想
洋服のパターンは基本的に平面から作られるため、いかに立体的に見せるかが熟練の技術にかかっています。
立体的なフードに必要なのは、「頭部の丸み」「首周りの傾斜」「後頭部~肩口の丸み」の3点です。
頭の丸みに沿わせるパネル分割
もっとも平凡なフードは、いわゆる「一枚パーツで二つ折りにして脇を縫う」だけの構造です。
これでは頭のカーブに沿うことなく、フードは平べったく不自然になってしまいます。
そこで重要なのが「三枚接ぎパターン」や「中央に接ぎを設ける二枚接ぎパターン」です。
三枚接ぎパターンでは、左右の側面パーツに頭頂をおおう中央パーツを縫い付けます。
このとき、中央パーツの頭頂部にわずかなふくらみ(丸み)を持たせ、頭の立体曲線に合わせる設計をします。
この工夫一つで、フードは自然な丸みを持ち、頭と首周りに美しく沿うことができるのです。
首元~肩へのなじみ
首周り~肩のラインは、意外と大きなカーブを描いています。
この部分の設計には、内側だけでなく外側にも“えぐり”を入れ、着用時に「首後ろに沿う丸み」をパターン段階で付け加えます。
また、見返しやパイピングを工夫することで縫い代のゴワつきを抑え、首に自然となじませます。
工場現場でのパターン設計実例
現場で多い失敗事例
現場ではよく「コスト優先」「大量生産重視」でパターンが簡略化されがちです。
最小限の縫製で済む“フード一体型”や“一枚仕立て”が用いられると、必ずといってよいほど仕上がりが平面的になり、着用時にフードが立ち上がりません。
これでは顧客の満足度は上がらず、リピートに繋がらなくなります。
品質管理の観点からも“商品づくりの省略化”には徹底注意が必要です。
設備と自動化が進む現代の課題
近年はCADソフトウェアや自動裁断機の導入が進み、「パターン設計の効率化」が叫ばれています。
一方で、こうした自動化設備は平面展開の設計能力が前提となるため、「熟練の立体感覚」が後回しにされがちなのが事実です。
すなわち、パーカーのフードパターンは「クラフトマンシップ」と「先進設備」の両立が求められる難しい領域となっています。
バイヤー視点の要求仕様とパターン設計のすり合わせ
なぜ立体感パターンが選ばれるのか
バイヤーは、消費者の細やかなニーズを敏感に察知しています。
例えば、展示会やECサイトの商品撮影時にパーカーのフードが独特の丸みを帯びて「写真映え」するかどうかは、商品の売れ行きに直結します。
そのため、バイヤーがサプライヤーに発注をかける段階で「立体感パターン採用」や「サンプル確認会での立体検証」を必須要件に盛り込むケースが増えています。
サプライヤーが提案すべき視点
サプライヤーとして差別化を図るには、単に指示されたパターンを量産形で納めるだけでなく、「この部分にボリュームを持たせることで、写真測定でも立体感が損なわれない」といった根拠付きの改善提案が不可欠です。
また、原材料ロスや縫製ラインの制約をクリアしつつ「現場目線での量産しやすさ」と「バイヤーの設計ニーズ」をどう両立させるかに日々頭を悩ませているのが製造現場です。
昭和的アナログ設計との決別と新地平
伝統技術とデジタル設計の共存
いまだに「前のパターンをそのまま使う」「職人的な目分量で丸みだけ足す」…といった昭和から続くアナログ手法も根強く残っています。
しかし、現代消費者の目は厳しく、「いつもの通り」では通じなくなっています。
そこでデジタル(CAD/CAM)と職人の“現物検証”をあわせて行う「半自動型プロトタイピング」が注目を集めています。
実際に作ったサンプルを3Dスキャナで計測し、CAD設計に戻してデータ解析する工程が、品質改善と効率化の両立に役立っています。
材料選定の進化
パターンだけでなく、材料面でも重要です。
張りやコシの強い裏毛素材や、芯地を適切に配すことで更なる立体感が演出できます。
設計段階でこういった素材提案を織り込むことで、バイヤーや最終ユーザーからの信頼を獲得できます。
まとめ:現場目線のパターン設計の価値とは
立体的なフード設計は、単に「カッコよく見える」だけでなく、工場工程の工夫、バイヤー/サプライヤー間の深い協業、素材や設備投資など、製造業の全体最適化とも直結しています。
消費者の目がどんどん厳しく、かつ「オリジナリティ」や「着用感」に高い価値を置く時代、昭和型アナログから脱却した現場目線のパターン開発こそ、製造業の未来を支えるキーコンピタンスといえるでしょう。
現場の経験を活かして、設計・調達・生産・品質の全員が一丸となり、より付加価値の高いパーカーを生みだすこと。
それこそが、製造業全体の底上げと、お客様・バイヤー・サプライヤーすべての満足度向上に繋がっていきます。
本記事が、皆様の現場やものづくりの改善ヒントとなれば幸いです。
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