投稿日:2026年1月13日

コーターマシンで使うロール被覆部材の剥離課題

コーターマシンで使うロール被覆部材の剥離課題

コーターマシンは製造業の現場で多彩な機能を果たしています。
特にフィルムや紙、金属箔などへ均一なコーティングを施す工法は、製品の品質向上と生産性の向上を同時に実現できるため、多くの現場で必須の設備となっています。
その一方で、現場担当者や設備管理者を常に悩ませてきたのが“ロール被覆部材の剥離”という問題です。

この課題は単なる設備トラブルに留まらず、不良率の増加、ダウンタイムの発生、部品交換コストの増大といった形で企業の収益力に大きな影響を与えています。
本記事では、私の工場長や生産管理責任者としての経験を交えつつ、現場目線からコーターマシンで使うロール被覆部材の剥離課題を掘り下げます。
また、昭和時代から変化を渋っているアナログな製造業界における根強い慣習にも着目し、今後の改善・革新へのヒントも提示します。

ロール被覆部材の選択とコーターマシンの関係

そもそもロール被覆部材とは

コーターマシンで使われるロールには、製品表面に直接触れる「被覆部材」が装着されています。
この被覆部材は主としてラバー、シリコン、ウレタン、フッ素樹脂などの素材で構成され、コーティングの種類や求められる表面特性によって最適なものが選択されます。

ただし、現場では「コスト」「耐久性」「離型性」を天秤にかけつつ、定期的な交換やメンテナンスを行い続ける必要があります。

昭和から続く“消耗品管理”という発想

日本の製造業は、コスト抑制や超現場主義の浸透とともに「部材の長寿命化」や「管理容易性」を強く追求してきました。
特にバブル崩壊以降“コストダウン命令”が厳しかったこともあり、現場では対処療法的に被覆部材の更新頻度延長や代替品の適用が多く見られます。
この背景には、設備担当者任せにされがちな“現場まかせ文化”も根強く影響しています。

一方で、海外や自動化先進工場のようなIoTやAIを活用した「リアルタイムモニタリング」や「データ予兆保全」を取り入れる動きは、未だ一部のハイエンド工場にとどまっています。
このギャップが、部材剥離によって思わぬ品質事故や生産大幅ロスが発生する業界構造を温存しているのです。

なぜロール被覆部材は剥離するのか?メカニズムと現場事例

主な剥離要因の洗い出し

剥離現象には材料工学的な理由と運用上の問題が複合的に絡みます。
代表的な要因は以下の通りです。

– 原材料やコーティング剤の化学反応による溶解・膨潤
– 長期使用による加水分解や熱劣化
– ロールと部材の密着不良(加硫不良、ボンディング不良など)
– 設備調整不備による局所的な過荷重や摩擦熱
– 清掃時の薬品・溶剤による攻撃

現場で多いのは「特定のバッチだけ剥離が早く進む」「同じ被覆材でもロットによって耐久性が違う」「ある時期から突然トラブルが増加した」といった傾向です。

生産現場で実際に発生した典型的なケース

私が経験した印象的な事例として、某大手化学メーカーのフィルムコート工程での剥離問題がありました。

ライン投入するコーティング剤のバインダー調達先が変わった途端、ロール被覆部材の剥離寿命が急激に短くなったのです。
調査の結果、微細なpH値や含有溶媒の違いが被覆ラバーを徐々に化学的に侵し、想定以上の速度で加水分解を引き起こしていることが判明しました。

また、別の自動車内装材メーカーでは、作業員が省力化のため強めの溶剤で清掃を繰り返した結果、ラバー被覆表面の微細なひび割れから剥離が連鎖し、週単位でのロール全交換が避けられなくなりました。

これらから言えることは、被覆材単体の耐久性管理だけでなく、「材料」「工法」「運用」「メンテナンス」全てが相互に作用しているという現実です。

ロール被覆材の剥離課題解決アプローチ

1. 設備と工程間のホリスティック見直し

被覆材剥離の根本対策には、単なる「より強い被覆材」への切替だけではなく、全体最適の観点が不可欠です。
たとえば、

– コーティング剤の化学性状と被覆材適正の再評価
– ロール表面温度や負荷のデータ化と長期傾向分析
– 装置メーカー・被覆材サプライヤー・材料メーカーを巻き込んだ三者検討

といった中長期の仕組みを構築しましょう。

現代であれば、IoTセンサーによる異常摩耗や温度上昇のリアルタイム検知、デジタルツインによる工程シミュレーションも有効です。

2. サプライヤーとの“現場感ある”パートナーシップ構築

サプライヤーとの関係を“値引き交渉のみ”で終わらせていませんか?
昨今は中国・東南アジア系の材料調達が活発化していますが、ロール被覆材のように“現場要求”が重視される部材ほど、「メーカー直・技術指導ありの長期パートナーシップ」が強みになります。

たとえば
– 実際の不良サンプルをサプライヤー技術者に持ち込み、化学分析や加工プロセス再検討につなげる
– 年1回の共催勉強会にて、“現場の生の声×サプライヤー技術”の直接対話を持つ
など、アナログ現場力とメーカー開発力の融合を常に意識しましょう。

3. バイヤーと現場の連携・知見共有強化

予算や納期・仕様が先行するバイヤー部門が、どうしてもコストダウンのため新たなロールベンダーをテスト導入することがあります。
そこで重要なのは
– 品質管理部や現場管理者の納得を得た上でのトライアル設計
– 不良発生時は「バイヤー・現場・サプライヤー」3者対話で課題抽出と解決策の合意を行う
です。

特に「コストカットのために安価な海外被覆材を使いたいが、現場が反発している」といったギャップの放置は、長期的な信頼損失や重大不良につながりかねません。
“現場が主役”の意識を持ち、組織を横断する知見共有が非常に重要です。

今後の展望と新たな業界動向

デジタル・DX対応と被覆材メンテの関係

2020年代に入り、多くのコーターマシン工場でIoT化・DX化が急速に進み始めています。
– 摩耗・剥離のデータ可視化
– 生産と品質情報の一元管理
– 被覆材のLCA(ライフサイクルアセスメント)管理

これらが進むことにより、「いつ、どんな原因で剥離が進行したか」という問題解明が飛躍的に楽になります。
また、AIが推奨する最適タイミングでの部材交換や、材料処方変更トレンドの予測も現実味を帯びてきています。

エコ・SDGs対応への業界要請

被覆材の繰り返し剥離は、廃棄物増加や製品ロスの温床となります。
昨今はESG経営、CO2削減の観点から「長寿命・省資源」の被覆材や再生材応用を模索する動きも増えています。
– 被覆材リサイクル事業者との連携
– 再生可能マテリアル採用の事例調査
– グリーン調達ガイドラインの見直し

といったアプローチも、今後ますます不可欠となるでしょう。

まとめ:剥離課題に現場・バイヤー・サプライヤーが“共創”で挑む時代へ

ロール被覆部材の剥離課題は、単なる部品の摩耗では片付かない「製造業全体の守りの要」だと言えます。
昭和・平成の“現場の知恵”に、現代のIoT・AI・サプライチェーンの知見を掛け合わせることで、今まで見過ごされてきたロスやトラブル原因を根本的に改善する土壌が整いつつあります。

バイヤーとして、現場目線のお困りごとや工程要素をしっかり理解すること。
サプライヤーとしては、耐久性ばかりでなく「現場での使われ方」「ロールのライフタイム全体」を見据えた技術開発・情報共有を深めること。
そして現場は、従来の思い込みや慣習から一歩踏み出し、新たなサプライヤーやバイヤーとの対話を増やすこと。

全員参加型の“現場提案型ものづくり”こそが、剥離課題を乗り越える唯一の道筋だと考えています。

ロール被覆部材の剥離対策は一朝一夕に解決できるテーマではありませんが、「現場主導×技術連携×デジタル知見」で、強い現場・高収益体質づくりへつなげていきましょう。

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