投稿日:2025年2月20日

【PEI(ウルテム)積層造形】航空宇宙分野の高耐熱樹脂部品を短納期で試作

はじめに

3Dプリンティング技術の進化に伴い、製造業では高耐熱樹脂を用いた部品の製作が急速に普及しています。
特に、航空宇宙分野における高耐熱樹脂部品の需要は増加しており、その中でもPEI(ポリエーテルイミド)、通称ウルテムを利用した積層造形が注目を浴びています。
この技術は、短納期での試作や、生産プロセスの効率化に寄与する可能性を秘めています。
本稿では、ウルテムを利用した積層造形の特徴やメリット、航空宇宙分野における活用事例について詳しく解説します。

PEI(ウルテム)の特性

高耐熱性と機械特性

PEI(ウルテム)は、極めて優れた耐熱性を持つ樹脂材料で、通常の使用温度範囲である-40℃から180℃を超えて、200℃以上の環境下でも使用可能です。
そのため、航空機のエンジン周辺部品や、宇宙船の構造部材に適しています。
さらに、引張強度や耐衝撃性といった機械的な特性にも優れており、軽量化を図りつつ高い耐久性を実現できる材料として重宝されています。

化学薬品への耐性

ウルテムは、ガソリンやアルコールなどの溶剤、酸や塩基といった化学薬品への耐性も備えています。
この特性は、航空機の内装材としての利用や、燃料タンクの構造材としての採用を可能にしています。

積層造形技術のメリット

短納期での試作

積層造形技術を用いることで、従来の工程を大幅に短縮し、短納期での試作を実現することができます。
従来の金型を使用した製法では、試作に数週間から数か月を要することが多くありましたが、3Dプリンティングを活用することで、そのリードタイムが数日程度に縮小されます。
これにより、設計変更に迅速に対応し、製品開発のサイクルを加速させることが可能となっています。

コストの削減

積層造形では、金型製作のコストが不要となり、小ロットでの生産においても経済的に優位です。
さらに、材料の使用量を最小限に抑え、不必要な部分を削減することが可能であるため、材料費の削減にも寄与します。
特に高価なPEI(ウルテム)を用いた製造においては、このコスト削減効果がより顕著に現れます。

複雑形状の製作

3Dプリンティングは、複雑形状の部品を一度のプロセスで製作できるため、従来の加工技術では困難だったジオメトリを実現します。
これにより、製品の軽量化や、機能統合を含むカスタムデザインの提案が可能となり、航空宇宙分野における新たな設計の可能性を開拓しています。

航空宇宙分野における活用事例

機体骨格部品への活用

ウルテムの高耐熱性や軽量性を活かし、航空機の機体骨格部品における活用が進んでいます。
機体の軽量化は、燃費の向上やCO2排出削減に直結するため、航空業界からの関心は高まっています。
また、3Dプリンティングによる一体成形により、部品点数を削減し、組み立ての効率化を図る動きが活発化しています。

熱防護シールドとしての利用

ウルテムの優れた熱特性を活用し、航空宇宙機器の熱防護シールドとしての利用も期待されています。
これにより、極めて高温になる部位の保護が可能となり、広範な環境条件下での信頼性を向上させます。
また、これに伴うメンテナンスコストも削減され、ライフサイクルコストの低減が実現されます。

エレクトロニクス筐体の製作

電子機器の軽量化、耐熱化、耐薬品性が求められる航空機内のエレクトロニクス筐体にも、ウルテムが用いられています。
3Dプリンティングにより、実装される機器に応じたカスタムデザイン筐体の製作が可能となり、最適な熱放散設計の提案が可能です。

まとめ

PEI(ウルテム)を用いた積層造形は、その優れた特性を活かし、航空宇宙分野において新たな可能性を切り開いています。
高耐熱性や機械特性、化学薬品への耐性が求められる環境において、そのメリットは計り知れません。
短納期での試作やコスト削減、複雑形状の製作を実現する積層造形技術は、今後もさらなる発展が期待されます。
製造業においては、この技術を効果的に活用することで、新しい製品開発や市場競争力の向上が期待できるでしょう。

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