投稿日:2025年7月8日

永久磁石特性と着磁設計でトラブルを防ぐ応用ポイント

はじめに:製造業の現場で広がる永久磁石応用の現実

永久磁石は、今やあらゆる産業で当たり前に活用されている部品の一つです。
モーターやセンサー、アクチュエーター、ポンプなど、ものづくりの根幹を担う多くの装置の“心臓部”とも言えます。
一方で、現場における永久磁石の扱いには独特のノウハウが求められ、特性や着磁設計を軽視した場合、思わぬトラブルや品質低下を招くことも珍しくありません。

バイヤーや調達担当はもちろん、サプライヤー側でも”なぜ要求仕様が厳しいのか”、”どこに落とし穴があるのか”を知ることで、相互理解が進み、より強固なパートナーシップを築くことができます。
この記事では、昭和から根強く残るアナログな現場流儀を踏まえつつ、時代が求める最先端の永久磁石活用とトラブルを未然に防ぐ着磁設計の応用ポイントを、具体事例を交えて解説していきます。

永久磁石の基礎とは―現場で重視すべき三大特性

1. 残留磁束密度(Br)

残留磁束密度、いわゆるBr値は「磁石そのものがどれだけ強い磁気を持つか」を示す最も基本的な値です。
Br値が高ければ高いほど、出力特性が大きくなります。
具体的な装置設計の際には「磁場の確保」という命題に直結し、部品のサイズやコストとのトレードオフにも深く関わります。
現場では、「磁気センサーの応答が鈍い」「思ったほどモーターのトルクが出ない」といった典型的なトラブルの根本が、Br値選定ミスにあることも多いです。

2. 保磁力(Hc)

保磁力とは、磁石が外部からの逆磁界や熱ストレスを受けても元の磁力を保ち続ける力を表します。
温度変動の激しい現場や、突発的な外来磁場が発生しやすい工場環境では、「思わぬ減磁」が量産不良を引き起こす要因となります。
たとえばアルニコ磁石やフェライト磁石などはHcが低めのため、厳しい工場現場では最初からネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石など高Hc品が指定されるケースが増えています。

3. 最大エネルギー積(BHmax)

最大エネルギー積は、磁石が発揮できる総合的な“力”の最適値を示します。
高性能部品や小型化が進む今、同じスペース内でどれだけ高効率な磁力を引き出せるかが問われているため、自動車、家電、ロボティクスなどではBHmaxが高い磁石の需要が高まっています。

昭和から続く“現場文化”と着磁トラブルの典型例

永久磁石は科学知識だけで語りきれない“現場の感覚”が重要です。
特に昭和からのベテラン技術者は経験則を重視するため、設計上の理論値と実際の制御・取扱いに違いが生まれやすいです。

以下はよくある着磁に関するトラブルとその本質です。

磁力の“斑(ムラ)”問題と組立ミス

着磁工程が甘かったり、ロット間差が大きく出たりすることで起きやすいのが「磁力ムラ」です。
この状況では本来機器が発揮するべきパフォーマンスが出ず、量産品でのバラツキや初期不良の原因となります。
工程管理が行き届かない下請け工場や、古い着磁ジグをそのまま流用しつづけている現場で特に多く発生する傾向があります。

着磁方向の取り違えによる品質低下

現場作業員による部品の向きの取り違え、もしくは設計段階での着磁方向指定のミスによって、逆極性不良・逆着磁不良が発生します。
自動化を進めていない工場や多品種少量生産の現場で、品種切替時にポカ除けが甘くなりやすく、トラブルが頻発します。

温度による減磁トラブルと設計不備

耐熱設計が甘い場合や、想定外の加熱ストレスを受ける現場で「思わぬ減磁」という形でトラブルが顕在化します。
想定外の異常停止や焙燥工程、落雷などの外乱でも磁石性能が大幅に落ち込むことがあり、「設計段階で気が付かなかった」と対応に追われる例が後を絶ちません。

トラブルを防ぐための着磁設計の応用ポイント

現場で起こる問題の多くは「設計段階」と「現場作業」両方に原因があります。
ここでは、最近の工場自動化動向やDXの潮流も踏まえ、トラブルを最小化するための着磁設計のポイントを紹介します。

1. 要求仕様の明文化と図面徹底

現場と設計部門、さらにはサプライヤーとの間で「こんなはずじゃなかった」を防ぐため、着磁方向、着磁パターン、許容バラツキ、温度特性などを図面で明確に記載しましょう。
口頭やメールベースの「だいたいこの範囲でOKです」は誤解や思い込みの温床です。
図面や仕様書で着磁面や方向をカラー表示する、管理寸法とセットで記載するなど、実践的な工夫が有効です。

2. マグネットチェッカー・異常検知機の導入推進

着磁パターンや磁力値は目で見えません。
目視検査だけでは限界があります。
着磁後の全数検査をルール化し、磁気チェッカー・フラックスゲージ・アナライザーなどの設備投資を惜しまないことが大切です。
異常値が残る仕掛品の流出を防ぎ、後戻り・再作業のリスクを断然低減できます。

3. アナログ現場でも“デジタル化”で着磁ジグ管理

着磁ジグや治具の摩耗・劣化は、“気合と根性”に頼りがちな現場では見過ごされがちです。
IoTタグや保守履歴管理システムの導入により、着磁ジグの使用履歴や点検周期を「見える化」しましょう。
特に多品種切替や段取り替えの多い工場では、ジグの履歴管理が不良低減の肝となります。

4. 加熱ストレス・環境要因の徹底検証

試作段階での環境ストレス試験(高温・低温・落下衝撃等)は必須です。
サプライヤーにラボレベルの環境試験設備がない場合は、バイヤー側が主導で共同評価を推進するのが理想です。
多忙な現場こそ初期段階での“想定外”を洗い出すことが、リードタイム短縮やトータルコスト低減に直結します。

バイヤー・調達担当が押さえるべき購買現場の着磁トラブルと対策

調達購買担当者は、磁石部品は“ただの購入部品”ではなく、全体パフォーマンスを左右する戦略部材だという認識が不可欠です。
安易な単価交渉やスペックダウンは、潜在的なクレームリスクや品質問題の火種になりかねません。

着磁失敗品の受入・返品対応の教訓

現場での磁力検査やロットトレース体制が不十分なまま納入された場合、出荷後の受入不良や顧客クレーム、場合によっては全ロット交換となる例が絶えません。
「磁力値の保証」や「着磁パターン毎のロット管理」といった“見えない品質”まで含めた購買条件を定めることが大切です。

現場の“アナログ慣行”と新たな自動化潮流の融合を

従来の職人芸的な着磁作業も、大量生産工程やハイエンド製品では既に自動化へのシフトが進んでいます。
“人”のノウハウに依存する領域と、“設備”や“データ”を活用すべき領域を明確に分け、現場と設計部門、サプライヤーと共に最適な体制を作ることが今後の発展に不可欠です。

今後の永久磁石活用と着磁設計の展望

EV車やFAロボットなど、さらなる高効率・小型化が求められる次世代産業分野では、超高性能永久磁石や複雑な多極着磁・傾斜着磁設計もますます一般化するでしょう。
同時に、これまでアナログだった管理領域も一気にDX化が進むことで、磁石管理は「現場勘+データ+自動化」が三位一体で進化していくと予想されます。

まとめ

永久磁石特性と着磁設計は、決して設計部門やサプライヤー側だけで完結するテーマではありません。
厳しい品質要求や現場のリアルを知るバイヤーや調達担当者こそ、業界の進化をけん引する存在です。
昭和から続く現場文化の良さを活かしつつ、最先端技術と着磁設計の知見を両輪で磨いていく――
そんな製造業現場の“新たな地平線”を、ぜひあなた自身の手で切り拓いてください。

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