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属人化した検査で顧客クレームが長期化する問題

目次
はじめに:属人化検査が引き起こす顧客クレーム長期化の本質
製造業の現場において、品質検査は製品の信頼性を支える要の業務です。
しかし現実には、検査業務が一部の熟練者に依存し、「属人化」することで様々な課題が発生しています。
その最たるものが「顧客クレームの長期化」です。
この記事では、なぜ属人化した検査によって顧客対応がスムーズに進まなくなるのか。
そして、その問題の本質や解決に向けたラテラルな発想、現場目線ならではの実践策を解説します。
バイヤーを目指す方や、サプライヤーに属する方々にも「バイヤーの立場から何が求められるのか」を分かりやすく伝えます。
また「昭和」的なアナログ体質の現場にも響く、即実践可能なヒントを散りばめています。
属人化した検査業務の現状と業界背景
なぜ製造業の現場は検査が属人化しやすいのか
製造業、とりわけ日本の工場では、ベテランの検査員が長年の経験と勘に頼って品質を判断してきました。
一見すると職人技のようで頼りになりますが、これは可視化されないノウハウの「属人化」を意味します。
たとえば、製品の目視検査や寸法測定などは、同じ検査員でも日や体調により判断がブレることがあります。
こうした属人的な判断は「歴史と実績」を持つ現場ほど根強く、組織全体で基準化、標準化、デジタル化が遅れやすい要因でもあります。
業界構造が生み出すアナログの壁
一つの製造ラインに何十年も勤める従業員。
設備更新やIT化よりも「マンパワーでカバー」することが美徳とされてきた歴史。
こうした慣習は、日本の製造業が品質大国として世界をリードしてきた裏返しでもあります。
しかしグローバル化によるサプライチェーンの複雑化、生産拠点の多拠点化に伴い、「人」起点の検査スキルだけでは限界に直面するようになりました。
これが、顧客からのクレームが発生した際に「検査員個人しか詳細を説明できない」「真因が特定できない」といった問題を生んでいるのです。
属人化の影響:顧客クレームが長期化するプロセス
クレーム発生から初動対応までの遅れ
顧客が自社製品の不具合を指摘。
現場で同じ検査を再現しようとしても、「あの人でないと分からない」状態では対応が一向に進みません。
また、作業日報や検査記録がアナログ(紙)中心で、必要な情報が散逸していることも多いため、「原因調査のために現場担当者本人の記憶に頼る」しかありません。
この初動の遅さが、不信感や二次クレームに繋がりやすくなります。
検査基準や記録の曖昧さが真因究明を妨げる
属人化した現場では「何となくOK」「このくらいなら大丈夫」といった曖昧な判定もまかり通ります。
このため、クレーム品の現物を検証しても、当時どのような基準で合格とされたか明確な裏付けが取れません。
これでは顧客に対して根拠を持った説明ができず、責任の所在が不明瞭になり、「再発防止策も示せない」結果に陥ります。
顧客側としては、いつ原因究明されるのか、どんな再発防止策が取られるのか見えない状態が長く続くため、最終的に信頼失墜とビジネス機会の損失へとつながります。
社内・協力会社間での責任分担にも悪影響
製造業のサプライチェーンは多層構造です。
自社だけでなく、関連部門やサプライヤーの検査体制が同じように属人化しているケースも多くあります。
原因追及チームを立ち上げても、検査工程ごとに担当者の判断が属人的で、それぞれが「自分の範囲では問題なかった」と主張し合う構図もよく見かけます。
これにより、組織横断での情報共有や部門間連携が滞り、顧客対応が迷走しやすくなります。
現場目線で考える属人化解消のヒント
現場ヒヤリングと「見える化」の徹底
検査基準や手順を現場に落とし込む場合、経営層や品質部門で一方的にマニュアルを作っても形骸化しやすいものです。
そこで有効なのは、「現場の声」を起点としたヒヤリングです。
実際に検査員がどんな感覚やノウハウで判定しているのか、なぜその手順が必要なのかを徹底的に言語化し、「見える化」します。
経験知を動画や写真、チェックリストなど多様な形式で残し、誰でも判定できる状態に変えていくことが第一歩です。
毎日の振り返り・ダブルチェック文化の醸成
現場が忙しいと、検査業務が「流れ作業」になりがちです。
それを防ぐために、1日の終わりや定期的なタイミングで検査結果の見直し、ダブルチェックの機会を設けましょう。
「〇〇さんだけが分かる」ではなく、「誰でも、いつでも、同じ基準で判断できる」仕組みを少しずつ定着させます。
こうした棚卸しや気づきを、現場の改善提案として積極的に吸い上げることも属人化の解消に有効です。
アナログ現場だからこその「カイゼン」の発想
デジタル化が進まない現場だとしても、「記録の一元管理」を紙から始めることは十分可能です。
例えば、『検査記録ノート』を工程ごとに用意し、検査員の所感や気づきを簡単に書き留めてもらいます。
最初は手書きでも、「どこで」「誰が」「どんな判断」でOKとしたかを残すだけでも、いざクレーム対応時の手がかりになります。
徐々にExcelやクラウド管理に移行していく足掛かりと位置づけましょう。
最新技術も味方につける:画像解析やAIの活用
大手メーカーや先進的な中小工場では、昨今AIによる画像解析や、IoTセンサー付きの自動検査装置が広がっています。
ただし、全ての工程を初めから自動化するにはコストや人材面でハードルも高いのが現実です。
おすすめは「属人化しやすい検査ポイントだけ」ピンポイントで自動化を導入し、その結果を既存のアナログ記録と突き合わせる手法です。
最新の計測技術・ITと現場の知見を融合する「ハイブリッド型運用」は、昭和的な現場にもストレスなく浸透しやすいのが特徴です。
バイヤー目線・サプライヤー目線で考える属人化への期待と戦略
バイヤーとして求める「再現性」の重要性
バイヤー(購買担当者)はサプライヤーから調達する部品や製品に「ばらつきがない」「説明責任が果たせる」ことを強く求めています。
クレームが生じた際には、納入された製品の検査結果や判定基準が「第三者にも分かる」形で残っていることが必須です。
属人化が解消されていなければ、「再発のリスク」や「調査遅延リスク」を感じ、今後の取引継続にも慎重にならざるを得ません。
サプライヤーが実践できる透明化・標準化のアピール
逆にサプライヤーの立場では、「属人化を脱し、標準化・透明化を進めている」という姿勢を積極的にバイヤーへ伝えることが営業上の強みになります。
検査工程のマニュアル化や、定期的な教育・評価制度の導入、検査記録のデジタル管理化状況などを資料化し、提案活動や監査対応に活かすことが重要です。
また、クレーム発生時には如何に迅速かつロジカルに情報提供できるか、「説明責任を果たす力」が信頼に直結します。
ラテラルシンキングで考える「脱属人化」新戦略
自社検査工程を「商品」にする発想
検査=工程コストと捉えるのではなく、「再現可能な検査ノウハウ自体を自社の新たな強み」=付加価値サービスとして外部提供(他社へのOJT研修やコンサルなど)する道も十分選択肢です。
属人化脱却で蓄積した独自の「見える化ノウハウ」や「マニュアル一式」を外部に展開できれば、自社ブランディングはもちろん、ビジネスの新しい柱が生まれます。
「他社事例をわが社流にアレンジ」する柔軟性
他社が取り入れているAI検査システムを必ずしもそのまま導入する必要はありません。
むしろ、一部だけ切り出し自社の問題点解決に直結するようアレンジすることが重要です。
たとえば、「外観検査だけAI自動判定」「工程ごとに”チェックリスト方式”+写真記録」といったミックス運用は、現場の不安・不満を最小限に抑えながら業務改革する上で有効です。
経営層・現場・バイヤー・サプライヤーが一枚岩に
属人化を解消したい、クレーム長期化を防ぎたい。
この課題は実は企業の大小や地域性に関係なく、共通のテーマです。
だからこそ、経営層、現場、購買部門、サプライヤー、全てのステークホルダーが「脱属人化」の意義を共有し、同じベクトルで動くことが中長期的な解決に直結します。
現場目線で困っていること、バイヤーが求めていること、サプライヤーができること。
こういった「立場の違い」を超えて意見交換できる場・ネットワーク作りが、今の時代ますます重要になっています。
まとめ:今こそ脱属人化が競争力になる時代
属人化した検査が引き起こす顧客クレーム長期化の問題は、技術面・組織面の両方で根深い課題です。
しかし、属人化から脱却し「見える化」や「標準化」「最新技術との融合」を進めることは、将来的に自社の競争力強化に直結します。
現場の知恵とラテラルシンキングを融合させれば、昭和的アナログ現場でも一歩踏み出せるはずです。
業界全体の未来のためにも、「属人化」という壁をみんなで乗り越え、品質・信頼性・働きやすさの新地平を切り拓いていきましょう。
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