投稿日:2025年9月5日

ペット用キャリーバッグOEMで注目されるデザインと安全性

はじめに:ペット用キャリーバッグのOEM市場の現状

ペット市場の拡大とともに、ペット用キャリーバッグの需要が年々高まっています。

特に、オリジナルブランドを展開したい企業や新規参入を狙う事業者にとって、OEM(相手先ブランドによる製造)は迅速かつコスト効率の良いソリューションとして注目されています。

その一方、かつてのキャリーバッグは機能性やコスト重視の商品が多く、デザインや安全性は「プラスα」として扱われてきました。

しかし、令和に入り消費者ニーズが多様化するなか、キャリーバッグに求められる価値も大きく変わってきています。

この記事では、製造業現場で培った知見をもとに、最新のOEM動向から業界が抱える根深い課題、そしてバイヤー・サプライヤーともに持つべき視点を掘り下げていきます。

ペット用キャリーバッグのOEMが選ばれる理由

短納期・低コストだけじゃないOEMのメリット

OEMのメリットとしてよく語られるのは「既存設備・ノウハウを活かせることで低コストかつ短納期で生産できる」点です。

しかし、成長著しいペット業界においては製品開発速度の向上も重要なファクターです。

特に、既存の生産ラインや設計フローを活用することで、トレンドを素早く商品に落とし込み、シーズンごとの小ロット多品種生産にも柔軟に対応できます。

また、OEMによる品質の均一化や、ロット間でのバラつきの低減など、安定供給を実現しやすいことも大きな魅力です。

小規模ブランドにとってのチャンス拡大

近年では、D2C(メーカー直販)の潮流とともに、ベンチャー企業や個人事業主もペット用キャリーバッグの市場に参入できるようになりました。

自社で一から製造設備を揃える必要がなく、最低ロットも柔軟になってきていることで、オリジナルブランドを比較的低リスクで立ち上げられる状況が生まれています。

一方で、OEMであっても「選ばれる理由」づくりが非常に重要となってきました。

今、ペット用キャリーバッグOEMで求められる“デザイン進化”

共感型デザインへのシフト

昭和・平成時代のキャリーバッグは「ペットを運搬する道具」として無機質なイメージが強く、カラーバリエーションも限られていました。

しかし、今やペットは「家族同然」です。

持ち歩くキャリーバッグも、“自分とペットの個性を表現するアイテム”としての意味合いが強くなっています。

消費者が求めるデザインは、単純な可愛さだけでなく、ファッション性・ライフスタイルへのマッチング・SNS映えなど、多層化しています。

また、女性ユーザーやファミリーユーザーはもちろん、男性ユーザーや高齢者など多様な層に配慮したカラーリングやレイアウトへのニーズも高まっています。

デザイナーはただ見た目の新しさや流行りに飛びつくだけではなく、“ユーザーが抱える深い悩み”を徹底的にリサーチし、“使われる現場”の視点を的確に製品へ宿すことが重要です。

ユニバーサルデザインとパーソナライゼーション

近年OEM発注で増えているリクエストのひとつが、「ユニバーサルデザイン」と「パーソナライズ性」です。

例えば、キャリーバッグの持ち手の長さ調整、片手で持てる軽量設計、視認性の高い反射材の使用、段差をスムーズに越えられるキャスター機構など、すべての人・すべてのペットにやさしい設計が重視されています。

さらに、消費者一人ひとりの好みに応じて「名入れ」「カスタマイズパーツ」「豊富なオプションパーツ提案」など、可変性の高い設計が市場競争力を持つようになっています。

OEMサプライヤー側も、元設計をシステム化しつつ、カスタマイズ対応範囲を広げる改革が進んでいます。

安全性――「あって当たり前」から「見せる安全」へ

法規制と安全基準の最新動向

ペット用キャリーバッグの安全性に関する基準は、国や自治体ごと、用途(車載・航空機内搬送など)ごとに異なります。

国内JISや国際的なSGマーク、あるいは欧米の各種安全規格(EN、ASTM等)への適合、生地の難燃性や化学物質規制も年々厳格化しています。

バイヤーは、これらの動向を常にウォッチし、OEMサプライヤーへ明確な要求仕様を伝えることが求められます。

また、「安全規格に適合しています」と書くだけでなく、具体的な試験方法や成績書の閲覧、トレーサビリティの確保まで目配りする姿勢が大切です。

現場目線での「危ない」の洗い出し

安全設計の肝は、カタログスペックだけでは語れません。

例えば、現場の使い方観察を通じて、
・ファスナーや開口部の突起でペットがケガをするリスク
・臭いやヨダレ・汚れが想定外に拡がることへの配慮
・使用中にペットが極端に暴れるケースへの強度確保
といった「実際に起こりうる事故・トラブル」を具体的に挙げ、その危険を1つ1つ潰し込んでいくことが重要です。

特に体験設計(UXデザイン)の考え方を取り入れて、サンプル段階から私自身も工場に足を運び、現場の声や実使用シーンを4M(人・機械・材料・方法)で徹底分析してきました。

製品カタログに載せるだけでなく、実物のデモ・耐久試験動画・事故事例のフィードバックといった「安全性を可視化する」工夫も求められています。

業界に根強く残る“アナログ体質”をどう打破するか

設計・品質・生産管理、それぞれの壁

多くのOEM工場では、今なお設計図面・検査成績書のやりとりがFAXや手作業といったアナログな方法に頼りがちです。

これによる伝達ミス・データロスは、後工程での品質不良や納期遅延につながります。

一方で、「長年の経験」に裏打ちされた現場ノウハウや繰り返し改善の文化は、品質日本一を支える財産でもあります。

これからのOEMパートナーには、IT化とアナログ品質の良いとこ取り――たとえば設計部門間では3Dデータでシームレスなやりとり、現場の最終チェックは熟練工の目視検査とIoTデバイスのダブルトラッキング、といった“ハイブリッド管理”の導入が求められています。

バイヤー視点:パートナー選びの基準が変わる

上記の点を踏まえると、今後は
・仕様変更への柔軟な対応力
・トレンド情報や現場課題を自社でリサーチ・提案できる体制
・設計・試作・量産に関するPDCAを厳格に回せるプロセス
・事故発生時の情報開示や迅速なリカバリー能力
など、「本当のパートナー力」を重視するバイヤーが増えていくでしょう。

一方的に「コストと納期だけ」を重視する取引から、知識のあるサプライヤーとアライアンスを組み、互いの強みを活かし合う共創志向への変化が求められています。

OEM現場を動かす“人の力”と“つながり”

現場のモチベーションと成果物の関係

今日、キャリーバッグのOEM生産現場には多国籍、多年齢、多部署のスタッフが関与しています。

彼らの意欲や創造性をいかに高めるか――それが仕上がる製品品質や開発スピードに直結します。

たとえば、定期的な現場会議でバイヤー、設計、生産、品質管理の全員から意見を募り、“気づき”や“困っていること”を速やかに解決する文化を築く。

昭和の「黙ってやればいい」から、「みんなで課題を共有する」時代への転換が、OEM現場でも不可欠となっています。

サプライヤーが語る、バイヤーへのメッセージ

サプライヤーの立場から申し上げるなら、OEM取引は単なる外注ではありません。

優れたバイヤーは、現場に具体的な要望を惜しみなく伝え、サンプルや仮仕様段階で素早いフィードバックを返すことで、「作り手のやる気」と「製品完成度」の両方を引き上げてくれます。

逆に仕様が曖昧なまま任せ切りの発注をすると、工場側も「こうすればもっと良くなるのに…」というノウハウや工夫を提案しにくくなります。

これからのOEMは、単なるコストダウンではなく、“現場力”を活かした付加価値創出――バイヤーとサプライヤーがパートナーとして手を取り合う姿勢が、結果的に市場で勝てるものづくりへの近道なのです。

まとめ:OEM時代に必要な“深い洞察”と“現場感覚”

ペット用キャリーバッグのOEM発注は、短納期・低コスト・柔軟な開発など、今やさまざまなメリットを享受できる時代に入りました。

しかし、これから差がつくのは「本当のニーズを捉えたデザイン力」と「現場のリアルな課題を見逃さない安全設計」、そして「アナログとデジタルを融合させた運営力」です。

決して表層的なコスト競争に陥らず、
――消費者・ユーザーの“幸せな体験”をいかに実現できるか
――現場の「気づき」「改善提案」をどこまで巻き込めるか
これを日々追求する姿勢こそが、これからのOEM業界を大きく発展させる鍵となります。

製造業に関わる皆さまには、ぜひ現場目線で、そして未来を見据えた深い洞察力で、これからのペット用キャリーバッグ市場に新たな価値を創り出していただきたいと思います。

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