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リップスティックの発色を安定させる顔料分散と固化プロセス

目次
はじめに
リップスティックは、多くの消費者にとって”色”が命の商品です。
鮮やかで均一な発色、塗りやすさ、そして長時間持続する美しさが求められます。
この要求を実現するために、製造現場では顔料の分散と固化という二つの重要なプロセスが焦点となります。
実際の生産現場に長年携わってきた経験を活かし、現場視点でリップスティックの発色を安定させるための具体的工程と最新技術動向、さらには、アナログが根強い業界構造ゆえの課題についても解説します。
リップスティックにおける発色の重要性
リップスティックの発色は、消費者の購買意欲に直結する最も重要な品質要素です。
使用した顔料そのものの質だけでなく、顔料を油脂やワックス成分といかに”均一”かつ”微細”に分散させるかによって、実際の色味や塗布した際の仕上がり、そして色持ちに大きな差が生じます。
これを疎かにすると、ムラや斑点、色の濁りなど、消費者クレームにつながる品質問題となりかねません。
顔料分散プロセスの基礎知識
顔料選択のポイント
顔料には無機・有機・パール系など多様な種類が存在します。
リップスティックでは、発色の鮮明さ、耐光性、皮膚への安全性を考慮し最適な組み合わせが要求されます。
顔料メーカーや商社から調達する際は、分散性、結着力、粒度分布などの詳細スペックを確認し、ロット差が小さい原料選定が品質安定に直結します。
分散の意義と難しさ
顔料をリップスティック基剤であるワックスやオイルに「均一で微細」に分散する工程は、極めてデリケートです。
分散度が不十分だと、色ムラ・発色不足の原因となります。
逆に、分散し過ぎても顔料粒子が過細分化し、光の乱反射による色あせや沈降リスクが高まります。
この「ちょうど良い分散」を実現するのが、現場の腕の見せどころです。
分散工程の具体的手法
主流は、3本ロールミルやビーズミルと呼ばれる分散機を用いて、高いせん断力で顔料粒子を粉砕・解繊する方法です。
この時の主なポイントは以下です。
– 混練粘度・装置温度の管理
– 分散時間と投入順番(顔料同士の凝集リスク管理)
– 溶剤や分散助剤の添加(新技術動向)
これら条件の最適化こそ、熟練オペレーターのノウハウや社内レシピの蓄積が物を言います。
現場で蓄積したデータを活かし、トライ&エラーで”最強レシピ”を構築することが安定品質の秘訣です。
リップスティック固化プロセスの要点
固化とは何か
顔料分散後のリップスティック基剤は、まだ軟らかく、一定温度以下で「固体」としての形状を保持する必要があります。
固化は、所定の容器(金型)に流し入れ冷却・硬化させる工程です。
この中で顔料が一部沈降せずに、全体へ均一分布したまま固体になることが求められます。
冷却と結晶化の管理
固化中、温度降下が急激すぎると油脂成分の結晶粒が粗大化し、透過性が劣化したり外観に粒状斑が現れる原因となります。
また固化遅延は操業効率低下に直結します。
最先端現場では、
– 金型の温度制御
– 高速冷却プレートの活用
– 添加ワックス成分改良
– 振動や攪拌による沈降防止
などを層別に最適化し、安定的な歩留まり向上へ取り組みます。
昭和のアナログ現場に残る課題と変革への兆し
ベテラン依存と情報伝承の壁
化粧品業界、特にリップスティック分野は「昭和型ものづくり体質」が依然強く残ります。
現場はベテランの勘と経験に支えられ、レシピやノウハウはブラックボックス化しがちです。
結果、品質波動や、世代継承に難ありの場合が少なくありません。
調達担当へのフィードバックや、外部サプライヤーとの情報連携も限定的な企業が目立ちます。
デジタル変革の必要性
近年、AI/IoT技術を駆使した分散工程のリアルタイム可視化や、分散度の自動測定、ロットトレース生産管理が急速に導入され始めました。
例えば、オンラインで粒度分布をセンシングし、異常兆候を即座にキャッチ、分散条件を最適化する仕組みが進化しています。
こうした設備投資は一見コスト高に見えますが、不良削減・クレーム減・安定供給による総合コスト低減と、現場力の底上げに直結します。
バイヤー視点で考える分散・固化プロセスの注目ポイント
原材料・分散安定性の事前検証
バイヤーが重視すべきなのは、顔料の品質・安定供給体制のみならず、”貴社のレシピで分散した場合”の挙動変化まで含めたバリデーションです。
カタログ値だけでなく、現場スケールでの本番テストを必ず実施し、分散処方との相性、沈降や斑点発生有無、固化までの挙動を細かく評価することが求められます。
サプライヤーとの連携とBOI(業界間情報交換)
顔料メーカーは、分散技術だけでなく分散助剤や沈降防止剤、添加ワックスの新たな提案力も経営視点で必要です。
また生産設備メーカー、分析センターなど業種横断のBOI(Best Open Innovation)が今後の主流になるでしょう。
新素材や画期的分散方法の提案ができるサプライヤーは、バイヤーから常に一歩先行くパートナーと見なされます。
まとめ:分散・固化プロセス最適化こそ安定品質の源
リップスティックは、”顔料をいかにして均一微細に分散し、それを安定したまま固化させるか”が品質のすべてを握ります。
昭和的な「手探り」から、データ駆動型の「科学的管理」へと現場が進化すれば、安定品質・コストダウン・競争力アップが同時達成できる時代です。
調達購買、生産管理、品質保証、製造現場それぞれの立場で、分散・固化という工程を「深化」させ続ける企業こそ、今後の化粧品業界をリードしていくことでしょう。
業種を超えてノウハウを共有し合い、レガシーから新時代へ――。
本記事が製造業の皆様の現場力向上とビジネス発展に寄与すれば幸いです。
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