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輸入時の植物検疫・動物検疫の対象品目と対応手順

目次
はじめに
グローバルなサプライチェーンが進化する現代、製造業では海外からの原材料や部品、製品の輸入が日常的になっています。
しかし、輸入時には意外と見落とされがちな検疫手続きが業務の大きな壁となることもしばしばです。
特に植物検疫・動物検疫は法規制が厳格で、調達購買担当者や生産管理、現場担当者にとって悩みの種となっています。
この記事では、輸入時の植物検疫・動物検疫における対象品目や具体的な対応手順、昭和的な根強い課題、そして現場目線の実践的なポイントを分かりやすく解説します。
これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーの立場でバイヤーの思考を理解したい方にも役立つ、業界の「知っておくべきこと」をまとめました。
植物検疫・動物検疫とは何か
検疫の基本的な役割
植物検疫・動物検疫とは、国外からの有害生物や病原菌、疫病の国内流入を防ぐための行政手続きです。
貿易の自由化が進む一方で、検疫業務はますます重要になっています。
これは産業界のリスク管理、安全保障の最前線と言える仕事です。
どの法律・機関が関与しているか
植物検疫については「植物防疫法」、動物検疫については「家畜伝染病予防法」が根拠法令です。
所管は主に農林水産省、その下に植物防疫所および動物検疫所が全国主要港湾・空港に設置されています。
現場業務ではこれらの組織と直接やり取りすることが多く、法令遵守の意識を常に持つ必要があります。
対象となる主な品目
植物検疫の対象品目
植物検疫の主な対象は、種子・穀物・野菜・果物・花・観葉植物の他、包装材としての木材やパレットも該当します。
加えて、これらに付着した土壌や病害虫も、規制対象になる点に注意が必要です。
例えば、以下のような具体例があります。
– 生鮮果物(リンゴ、バナナ、オレンジなど)
– 穀物(大豆、トウモロコシ、小麦)
– 生花、苗木
– 原木、木箱、木製パレット
意外に見落とされがちな包装資材ですが、未処理の木材を使ったパレットや箱は国際規格(ISPM No.15)に準拠した熱処理や燻蒸処理が義務付けられています。
動物検疫の対象品目
動物検疫の主な対象は、豚肉・牛肉・鶏肉などの食肉、新鮮卵、乳製品、生きた家畜、さらに加工品の一部です。
また、動物の精液や受精卵、家禽の羽毛にも規制があります。
具体例としては、
– 生鮮肉(牛・豚・鶏など)
– 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)
– 生乳・乳製品
– 生きた家畜・ペット
– 家畜用飼料、動物用医薬品の一部
清涼飲料水や菓子でも、ミルク成分や動物由来のゼラチンが含まれる場合、対象となることがあります。
検疫の流れと対応手順
輸入準備段階でのポイント
輸入手続きをスムーズに進めるには、まず「自社で輸入しようとする品目が検疫の対象かどうか」を正確に把握することが最重要です。
ここで多いのが、調達担当者やバイヤーの認識不足によるトラブルです。
– 事前確認: 輸出国での加工方法や成分表、輸入予定地の植物防疫所・動物検疫所の最新ガイドラインを必ず確認しましょう。
– 書類整備: 輸出先からは「植物検疫証明書」や「動物検疫証明書」(ヘルスサーティフィケート等)の取得が必要です。
輸入時の検疫手続き
1. 事前申請
インターネット(NACCS等)での申請、もしくは窓口持ち込みでの申請を行う必要があります。
2. 書類提出
対象となる証明書類(原本が必要なことが多い)、インボイス、パッキングリストなど。
3. 現物確認・検査
必要に応じて現物サンプリング、X線検査、目視検査などが実施されます。
場合によっては輸入品の一部を抜き取り検査、または全部検査、廃棄や燻蒸、返送の措置となることも。
4. 合格・不合格の判定
合格の場合は「輸入許可」または「持ち出し指示」等の許可が下ります。
不合格の場合は即時対処が必要です。
5. 通関手続きへ進行
許可証を税関に提出し、通常の通関業務へ進みます。
現場で起きうるリアルなトラブル
– 書類不備や保管サイクルの違いによる通関遅延
– コロナ禍以降、現地検査官の人員不足による物理的な遅延
– 産地偽装や汚染リスク案件に巻き込まれるケース
現場目線では「書類さえ整えばすぐに通る」という甘い考えは危険です。
検疫所・税関からの呼び出しには即応できる体制と、社内関係者間の情報共有が何より肝要です。
バイヤー・サプライヤー両方が持つべき視点
バイヤーとしての留意点
– 初回取引や新興国サプライヤーとの取引では、「現地検疫証明」の取得経験や信頼度、フォロー体制を事前チェックする必要があります。
– サンプル発送の段階から検疫の必要性を社内で啓蒙すると、トラブルを未然に防げます。
サプライヤーとしての心得
– 顧客バイヤーの側に立ち、必要な検疫証明書を確実に用意する「現場力」「書類力」が競争力に直結します。
– 日本の検疫基準は世界トップレベルに厳格であり、輸出側の担当者教育や現地物流の協力体制を強化すべきです。
アナログな業界背景とデジタル化の必要性
多くの製造業現場では、検疫に関する事務処理や書類作成がいまだに手書きやFAX、表計算ソフトベースで回っています。
また、検疫フローの情報が各担当者の「経験や勘」に依存し、属人化している現場が珍しくありません。
この昭和的な業界文化が未だ根強く残る理由は、最新情報が日々変わり続けていたり、現場判断の柔軟性が求められるからという事情もあります。
しかし、NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)をはじめとした電子インフラの活用や、チェックリスト・ナレッジマネジメントのシステム化が急務です。
– 書類不備によるリスク低減
– 納期遅延・トラブル発生時対応の標準化
– 経験値の社内蓄積と後輩バイヤーへの継承
これらは、今後の競争力強化・省力化の観点からもますます重要になっています。
今後の業界動向・製造現場のラテラルシンキング
植物検疫・動物検疫の制度は、アフリカ豚熱(ASF)や新種のウイルス問題など、世界の感染症動向にダイレクトに影響を受けます。
また、持続可能なサプライチェーン(SDGs)推進の観点からも、検疫コンプライアンスはグローバル調達の前提条件といえます。
今後は、AIやブロックチェーン技術を用いた検疫証明書のデジタル化・偽造防止、サプライチェーン全体の安全性可視化が進むことが予想されます。
現場の担当者は「何となくやってきた現場書類」をExcelや紙ベースから、組織横断的な情報システムへ切り替えるラテラルシンキング=横断的思考が強く求められます。
「検疫は手間がかかるから面倒」
そう思うのは自然ですが、これからは「検疫対応力」が新しいバリュー基準になる時代です。
調達・品質管理担当者こそがサプライチェーンのサイレントキーパーになれる、そんな可能性が広がっています。
まとめ
輸入時の植物検疫・動物検疫は、製造業サプライチェーンにおける「基礎体力」です。
現場での実践的な知識と書類力の強化、そしてアナログ業界ならではの小回りや現場感覚を大切にしつつ、最新動向やデジタル化への対応を怠らない意識が不可欠です。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとして顧客力を高めたい方も、ぜひ検疫関連の基礎知識と実務経験を積み上げ、自社そして日本のものづくりの安全・安心のレベルアップに貢献していきましょう。
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