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植物繊維強化PLAハニカムコアと軽量ドアインナー音響減衰

目次
はじめに - 製造業における新素材の重要性
製造業は日々進化しており、持続可能性と高性能を両立できる新素材へのニーズが高まっています。
従来の金属やプラスチックだけではなく、環境に優しいバイオ素材の採用が世界的な潮流となる今、植物繊維強化PLAハニカムコアの登場はまさに業界のゲームチェンジャーと言えるでしょう。
本記事では、筆者が現場長としての実体験と業界潮流を踏まえ、軽量ドアインナーへの応用事例も交えて、現場目線で深掘り解説します。
植物繊維強化PLAハニカムコアとは何か
PLA(ポリ乳酸)の基礎知識
PLA(Polylactic Acid/ポリ乳酸)は、とうもろこしやサトウキビなどの再生可能な植物を原料とするバイオプラスチックです。
生分解性が高く、環境負荷低減素材として注目されていますが、機械的強度や耐熱性については従来素材より劣る点が課題でした。
植物繊維との複合化の意義
この課題に対し、植物繊維(主にパルプや麻、竹繊維など)を強化材として混合することで、強度や耐熱性を大幅に引き上げる技術が近年発展してきました。
この複合素材の利点は、以下の3点に集約されます。
・環境配慮とCO2排出削減
・機械的強度や耐熱性の向上
・原材料コストや安定供給性の確保
ハニカムコア構造とその特徴
ものづくりの現場で“ハニカムコア”とは、蜂の巣構造のような六角形のセルを持つサンドイッチ構造材料の中芯部を指します。
この構造により、軽量化とともに驚くほどの剛性とエネルギー吸収性が得られるため、自動車部品・建材・家電などさまざまな分野で採用されています。
昭和的なアナログ現場からの脱却-なぜPLAハニカムコアが必要なのか
製造業の現場には、「今さら新素材なんて…」「今のままでも十分」という昭和的な守旧派の声が根強く残っています。
しかし、現実問題として「環境対応」や「軽量化」「コスト競争力」は、企業生き残りのための喫緊のテーマです。
筆者が工場長として現場指導する中でも、「環境対応型新素材の切り替え」で受注を獲得できた事例が増えつつあります。
特にグローバル大手メーカーへのサプライヤーへ売り込む際には、「CO2削減のLCA(ライフサイクルアセスメント)データ添付」が必須条件となってきました。
このような時代背景こそ、昭和から抜け出して新素材導入を検討すべき最大の理由なのです。
軽量ドアインナーへの応用-現場で得られた成果と音響減衰の実力
ドアインナーの材料進化の歴史
かつて自動車のドアインナー(ドア内部骨格)の主流はスチールやPPなどの樹脂板でしたが、「軽量化」と「内装の質感向上」への流れから、様々なハニカム構造材が研究されてきました。
PLAハニカムコアは、その流れの最前線に位置しています。
試作・量産現場での成果データ
私が関わった某自動車メーカーの試作プロジェクトでは、「PPハニカム構造」→「植物繊維強化PLAハニカム」に切り替えたことで、以下のメリットを現場で確認できました。
・重量削減(約15%):燃費性能と取り回し性の向上
・剛性向上:車体剛性貢献度アップで安全性能も向上
・リサイクル性の高さ:使用後の廃棄も埋立ではなく、分解処理や再利用が容易
特筆すべきは、音響減衰性への貢献です。
伝統的な金属や樹脂素材では、「ばたつき音」や「ビビり音」が発生しやすく、 NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)対応が難題でした。
PLAハニカムコアは、細かなセル構造が内部振動エネルギーを効率的に吸収・拡散するため、遮音性・低振動性が大幅に向上します。
メーカーの実地試験では、従来比で平均2~3dBの騒音低減効果が得られたとの報告もあります。
バイヤー・サプライヤー両面からみた本素材の強み
バイヤー視点では、「軽量・高剛性」「環境配慮」「コスト優位性」「リサイクル性」と四拍子そろった素材は、本当に魅力的です。
サプライヤーとしては、「単なる安売り」から「機能提案型営業」へと進化できるチャンスであり、早期からの量産ノウハウ蓄積による先行優位性も狙えます。
現場導入時の注意点と実践ノウハウ
課題1:生産設備の変更と現場教育
従来ラインへのPLAハニカム材の適用には、以下の注意点があります。
・成形温度・圧力プロセスの最適化
・従来素材とのBonding(接着・一体化)条件の違い
・端材処理や廃棄プロセスの見直し
「切り替え=手間が増える」といった誤解も多いですが、実際に筆者が現場で主導した段階的な現場教育(座学×現物トレース×OJT)で、数か月後には安定稼働へ移行できた事例があります。
課題2:マテリアルコストと安定調達
PLAや植物繊維の市況は石油由来樹脂以上に価格変動が大きいため、「サプライヤーの複数化」「在庫管理体制の強化」がカギになります。
調達バイヤーは現場との連携を密にし、材料選定段階での「価格変動リスク」や、 “どのファブレス化”が活きるか?という視点でサプライヤーを評価する必要があります。
課題3:製品カスタマイズとバリューチェーン最適化
PLAハニカム材は、“設計自由度が高い”反面「設計負荷の増大」「二次加工やサブアセンブリ工程の発生」といった新たなボトルネックも見えてきます。
重要なのは「一社完結」へのこだわりから脱却し、材料メーカー・加工業者・最終アッセンブラーが“三位一体”となったバリューチェーンを形成することです。
業界動向-PLAハニカムコアの拡大とトレンド
欧州を中心に広がるエコドアインナー需要
欧州大手自動車OEMは、2020年以降「持続可能な原材料50%超」などのサステナビリティKPIを設定し、バイオマス由来部材の搭載比率を年々拡大しています。
日本でもトヨタ、ホンダ、日産など先進メーカーが本格採用を開始し、「二次市場」や「アフターパーツメーカー」でも追随する流れが見られます。
商品の差別化要素としての“音響アプローチ”
特に高級車市場では、「車内静粛性」がワンランク上の快適性をアピールできるポイントです。
「PLAハニカムで音が静かになった」という具体的なエビデンスが、バイヤーにとっても導入判断の決定打となります。
将来展望と課題
今後は、PLA以外の新バイオマス樹脂とのハイブリッド化や、多機能フィルムとの組み合わせによる耐候性・防湿性向上など、素材開発の余地が数多く残されています。
供給安定性や加工技術者の育成も、業界全体の発展には不可欠なテーマです。
まとめ-バイヤー・サプライヤー双方への提言
植物繊維強化PLAハニカムコアは、単なる環境対応素材にとどまらず、「軽量性」「高剛性」「音響減衰性」といった機能付加で、現場のニーズや川上・川下のバリューチェーン最適化まで一気通貫のソリューションを提供できる可能性を秘めています。
現場のバイヤーは、将来リスクへの備えや他社との差別化ポイントとして、“いち早く”この素材活用を提案できるサプライヤー選定を進めていくべきです。
サプライヤーにとっても、「新たな付加価値提案」「持続可能サプライチェーンの構築」で競争優位の一歩を踏み出す絶好の機会と言えます。
昭和的な発想から“未来志向”の一歩を―。
変わり続けるものづくりの現場だからこそ、「現場×素材×機能」の新たな組み合わせで、製造業界全体が進化を遂げていくことを期待しています。
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