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プラスチックゴム耐久性評価寿命予測と耐久性向上策徹底解説

目次
はじめに:プラスチックとゴムの耐久性が問われる時代へ
製造業の現場において、プラスチックやゴム製品は欠かせない存在となっています。
自動車部品から家電、OA機器、医療機器、さらには食品包装資材まで、私たちの生活や産業の根幹を支えています。
しかし、その重要性と裏腹に、「いつ壊れるかわからない」「経年劣化が読めない」といった課題はつきものです。
特に耐久性評価や寿命予測は、バイヤー・サプライヤー双方にとって極めて重要なスキルとなっています。
本記事では、プラスチックとゴムの耐久性評価と寿命予測について、現場の実体験を交えながら解説します。
また、寿命を伸ばすための具体策や、アナログ体質が残る製造現場での注意点も徹底解説します。
プラスチック・ゴムの耐久性評価が求められる背景
なぜ耐久性が重視されるのか
昭和から令和へ、ものづくりの現場は大きく変わってきました。
かつては「壊れたら直せばいい」「予備品を持てばよい」という考え方が主流でしたが、今やサプライチェーンはグローバル化し、ムダも許されない時代です。
リードタイム短縮、コストダウン、環境規制対応――すべては「壊れにくい部品」の調達と生産が前提となっています。
耐久性は“設計品質”の根幹
プラスチックやゴム部品は、金属に比べて軽量で加工しやすい一方、長期間の使用においては物理的・化学的な劣化を起こしやすいという重大な特徴があります。
ゆえに、部品仕様や設計段階での耐久性評価が求められるのです。
製品のライフサイクル全体にわたり「壊れたら即大損失」という時代になっているため、バイヤーやサプライヤー双方が耐久性評価のノウハウを持つことは避けて通れません。
プラスチック・ゴムの主な劣化要因
材料劣化のメカニズム
プラスチックやゴムが劣化する主な要因は次の通りです。
・熱(高温/低温)
・紫外線(UV)
・酸化
・オゾン
・加水分解
・機械的応力(圧縮・引張り・曲げ・摩耗)
例えば、紫外線はプラスチック分子鎖を分断し、UV焼けや脆化を引き起こします。
また、ゴムの場合はオゾンがdouble bondを切断しミクロクラックや亀裂を生成します。
使用環境がすべてを左右する
使用される場所や温度、湿度、接触する薬品、圧力、摩耗――こうした現場環境次第で、寿命は驚くほど変動します。
設計図面上では同じ材料・形状でも、現場の一次情報を重視しなければ、適切な寿命予測は不可能です。
プラスチック・ゴム耐久性評価の代表的な手法
加速劣化試験(Accelerated Aging Test)
製品を実際の使用環境と同等またはそれ以上のストレス(高温・高湿・UV・オゾンなど)で短時間に曝露し、数年間の劣化を数日~数週間で再現する手法です。
寿命フィードバックを得やすく、現場にも馴染みの深いテスト方法です。
繰り返し応力試験(Fatigue Test)
特にゴム部品では重要です。
繰り返し負荷によってクラック発生→進展→破断までのサイクル数を測定します。
“何回使えるか”の見積もりに役立ちます。
材料物性評価(Tensile、Elongation、Hardness etc.)
引張り強度、伸び、硬さ、永久変形など基本特性を測定します。
新規サプライヤー採用や材料見直し時の選定基準となります。
実使用シミュレーション(リアルワールド耐性試験)
製品を実際の運用条件下や、現場装置に組み付けて長期間テストします。
加速劣化試験と併用することで、より現実的な寿命予測が可能になります。
分子レベルの解析(FT-IR、DSC、TGA等)
材料中の化学変化や構造変化を分光分析や熱分析で捉え、メカニズム解明と早期不良対策に活かします。
寿命予測の具体的な考え方
Arrhenius式を用いた寿命推定
特に温度劣化については、Arrhenius式(劣化速度は温度に指数関数的に依存する)を用いて計算します。
例えば、温度60℃と80℃で10倍違う劣化速度になる材料も多く、現場温度の厳密な把握が肝となります。
現場ヒヤリハット、実データの活用
机上の試験よりも実際の「故障のトレンド」「どこでどんな劣化現象が起こったか」といった1次情報は貴重な財産です。
現場の声や過去のトラブルから“経験則”を積極的に反映しましょう。
これが昭和型現場でも根強く残る「現場主義」の強みです。
設計段階からのDFM(Design For Manufacturability)
設計段階で「どの程度の寿命を想定するのか」を明確にして部品仕様に落とし込むこと。
サプライヤーと緊密に協議し、できるだけ“安全サイド”で設計・調達できる体制が理想です。
耐久性向上のための現場実践策
1. 材料選定の徹底
仕様書任せではなく、「現場環境に最適なグレード選定」「実績ある材料か」「製造ロットごとのバラつき有無」などをサプライヤーと協働で確認しましょう。
廉価材料より長期安定性で評価の定まった材料を優先すべきです。
2. モノづくり現場の自動化・省人化と耐久性の両立
自動化ラインやロボット装着部品の多くがプラスチック・ゴムを使っています。
オートメーション化が進むと“微妙な耐久性不足”による全ライン停止リスクが増加します。
現場オペレータの気づきを記録し、AI・IoTで自動監視する仕組みと組み合わせることで、兆候検知や予防保全につながります。
3. 設計・生産・調達の三位一体での現場対策
従来は“設計部だけ”で寿命を決めていた現場も、昨今では品質管理、生産現場、調達部門がタッグを組むケースが増えています。
例えば「サプライヤーが材料変更した」「成形方法を変えた」といった細かな変化が、寿命短縮の原因になる場合もあります。
4. 日々進化するメンテナンス手法の導入
昭和時代は“使い切り”や“とりあえず清掃・注油”が主流でしたが、今はデジタルデータをもとに摩耗限界を予測し、最適な交換タイミングを割り出す流れにシフトしています。
メンテナンス履歴情報の蓄積と解析は従来のアナログ業界が今すぐ取り入れるべき分野です。
調達・バイヤー視点の「耐久性主義」とは
“安さ”より“長期耐久”を価値にする時代
短納期・低コスト競争が激しい一方、部品交換の都度にライン停止や修理コストが発生するリスクが増加しています。
バイヤーに求められるのは、目先の価格だけでなく“トータルライフコスト”で最適解を選ぶ力です。
現場を知るバイヤーの強み
自分の購入する部品が「どの部署で、どのような現場環境で、どんな不具合が起きているのか」を現場目線で把握できるバイヤーは信頼されます。
自分も現場で20年以上購買・生産・品質の狭間に立ち続けてきた経験から、現場の声・試験データ・メンテ頻度を“自分の目で確かめる”重要性を痛感しています。
サプライヤー・バイヤーの本音と建前
「うちの材料では大丈夫」「毎回検査しているから安心」―こういった“表の声”の裏に、「たまにバッチ間で品質差が出る」「現場で不具合が頻発している」といった“現場のリアル”が隠れています。
部品の仕様書・材料データシートだけで安心せず、テストサンプルや現場リポートを通じて、リアルな耐久性情報をやりとりする文化の醸成が不可欠です。
アナログ体質から脱却するヒント
現場知見×データ活用=最強タッグ
アナログで職人的な現場の感覚は、今でも非常に強力な「武器」です。
しかし属人的なノウハウを“暗黙の了解”で済ませるのは危険です。
ExcelやIoTでデジタル化し、故障や交換実績を見える化することでトラブル低減&人材育成の新しい形が生まれます。
業界横断のベンチマークとラテラルシンキングのすすめ
自動車、家電、食品、医療、半導体など、さまざまな業界の“良い部分”を取り入れることもポイントです。
業界の“常識”にとらわれず、異分野の現場知見やテクノロジーを水平展開することで、耐久性向上の突破口がひらけます。
まとめ:現場目線で耐久性評価と改善を進めよう
プラスチック・ゴムの耐久性評価と寿命予測は、設計・生産・調達・品質部門が一丸となって取り組むテーマです。
現場からのリアルな声と確かな試験データ、そして先端のメンテナンス手法やIoT技術を柔軟に取り入れることが、現代の製造業の持続的成長につながります。
最後に――
あなたがバイヤーなら、耐久性こそが調達力の“差”を生みます。
サプライヤーなら、現場理解に基づく提案が他社との差別化ポイントとなります。
そして現場に立つすべての製造業従事者に、今日から使える知恵としてこの記事を活用してください。
耐久性評価と寿命予測の新たな地平線を、ぜひあなた自身が切り拓いてください。
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