- お役立ち記事
- OEMトレーナーで環境認証素材を扱う際の注意点とコスト影響
OEMトレーナーで環境認証素材を扱う際の注意点とコスト影響

目次
はじめに:OEMトレーナーと環境認証素材のいま
近年、アパレル業界を中心に、SDGsの潮流や消費者意識の高まりにより、OEM(Original Equipment Manufacturer)での衣服生産にも環境配慮素材の活用が急速に進んでいます。
特にトレーナーのようなカジュアルウェアは生産ロットが大きく、環境認証されたオーガニックコットンやリサイクルポリエステルなど、認証素材の選定がブランドイメージや市場競争力向上に直結するようになっています。
しかし製造現場では、従来のアナログな運用から脱却できていない課題も多く、「認証素材を使えばOK」といった単純な話ではありません。
本記事ではOEMによるトレーナー生産の現場で、環境認証素材を扱う際の具体的な注意点やコストインパクトについて、現場経験20年超の目線で詳しく掘り下げていきます。
バイヤー志望の方、サプライヤーとしてOEM事業を強化したい方にも有益な情報を、現場での実践的な観点からまとめます。
知っておきたい主な環境認証とトレンド動向
主要な環境認証の種類と特徴
環境認証素材には様々な認証マークがありますが、OEMトレーナーでよく使われる代表的なものは以下の通りです。
– GOTS(Global Organic Textile Standard):オーガニック繊維使用&工程管理を包括的に定める世界的認証。トレーサビリティや社会的配慮も評価対象。
– OEKO-TEX Standard 100:有害物質の排除を認証する国際基準。人体への安全性を保証します。
– Recycled Claim Standard(RCS)、Global Recycled Standard(GRS):リサイクル原料比率や加工管理を定める認証。
– BCI(Better Cotton Initiative):サステナブルなコットン栽培を推進する国際基準。
どの認証を選択するかは、ブランド側の意向、市場トレンド、コストや調達可能性によって決まります。
最近はGOTSやGRSといった広範な監査基準を持つ認証の要求が増える傾向にあります。
業界動向と現場のギャップ
SDGsの取り組みとして、営業や購買部門からは「認証素材を使いたい」「認証生地でしか受注できない取引が増えた」といった声が聞かれます。
一方で、実際の工場現場や二次・三次サプライヤーは、従来型の「価格と納期がすべて」「慣れたルートで手配」に未だ多く依存している現実があります。
また、「認証取得コストは誰が負担するのか」「認証書類管理のシステム化が進んでいない」といった“昭和的”なアナログ業務も色濃く残っています。
ここにこそ、コストインパクトや認証素材管理の落とし穴があります。
OEMトレーナーで環境認証素材を扱う際の具体的注意点
1. 原料調達:サプライチェーン全体の認証整合性
環境認証は、糸→生地→縫製→仕上げ、というサプライチェーン全体で、一貫して認証ルートで仕入れ・生産しなければならない特徴があります。
例えばGOTS認証であれば、認証されていない紡績工場の糸を使った時点で、その製品全体が「GOTS認証品」として販売できなくなります。
途中の「抜け道」が許されず、伝票や納入証明書も各工程で一貫して認証ロット管理を徹底する必要があります。
実際に起こりやすいのが、
– 生地メーカーがGOTS付きだが、糸メーカーが未認証だった
– 部分的に混用した素材原料の伝票を正しく分別管理できていなかった
というミスです。
OEM事業者が中間管理する場合は、受注時から生産委託先・下請け工場まですべて認証リストで管理し、証明書類を電子データでトレースできる体制が必須です。
2. 生産管理:ロット管理と混用リスク
認証素材は工場内での保管・生産時にも「物理的混用防止」が厳格に要求されます。
具体的には、
– 通常原料(一般コットン等)との保管区分け
– 縫製現場での専用スケジューリングや識別ラベル運用
– 生地在庫や副資材の棚卸し時にも認証・未認証を仕分け
など、“混ざったら全て無効”という制約のもと運用しなければなりません。
特に現場が忙しい時期や繁忙期には、「とりあえず空いているラインで動かす」「在庫が足りないから汎用品を混ぜる」といった“現場裁量”のクセが出がちです。
現場管理職としては、日ごろから「なぜここまで厳格な運用が必要か」を定期的に教育し、現場プロセスの見直しやシステム化も検討すべきです。
3. 書類管理とトレーサビリティの徹底
環境認証素材を扱う際は、全工程の認証証明書管理が求められます。
英語の証明書や各工程のロット対応書面を、最終納品時点まで誤記なく一元管理する必要があり、アナログ管理ではミスや漏れが発生しやすいのが実情です。
これを防ぐためには、
– 発注時から「証明書の電子化と伝票連結」を依頼先に徹底する
– できれば仕入れ~製造~納品管理の各工程をシステムでつなぐ
– 納入チェックリストを標準化して、“抜け証明書”の発見をルーチンにする
といったデジタル管理の工夫が効果を発揮します。
現場に負担をかけ過ぎずに証明管理を効率化するスキーム作りは、今後のサプライヤー競争で差につながります。
4. コスト構造:どこにコストが発生するのか
「環境認証素材は高い」と一言でまとめてしまう現場もまだ多いですが、コストアップ要因は大きく分けて4つあります。
1. 原料価格プレミアム:オーガニックコットンやリサイクル素材は海外由来が多く、需給バランスや為替で相場変動も大きいです。
2. 認証維持の管理費用:工場が認証取得・維持するための監査・年会費など、通常原料よりも販管費がかかります。
3. 生産現場の運用費用:混用禁止のためライン切替や工程清掃など、通常より手間賃やロスコストが増えがちです。
4. ドキュメント・証明書管理:アナログ対応の場合は特に、書類作成・チェックマンパワーの費用が隠れコストとして累積します。
業界的には、「○○認証指定で10~15%価格アップ」はよくある水準ですが、この中身を分解し、「どこを改善すればコスト増を抑制できるか」を現場と一緒に検討する発想が不可欠です。
アナログ業界に埋もれた“昭和的課題”とデジタル時代の突破口
まだ残るアナログ運用の壁
日本の製造業、特に縫製業界では、FAXや紙伝票ベースの手配文化がいまだ根強く残っています。
日々の多忙な現場では、「新しいITシステム導入は現場の混乱を招く」「毎回書類への手書きが安心」といった心理が根付いているため、急激なデジタル化が進みません。
その結果、
– 証明書の不備が判明した段階で全て作り直しになる
– 認証ロットが分からず、顧客からの監査に冷や汗をかく
– 現場責任者が属人的に証明書を管理し、「あの人がいないと分からない」体質から脱却できない
というリスクも多々見られます。
デジタル活用による現場改革の実践例
この昭和的運用から一歩抜け出すためには、段階的にでも「認証トレーサビリティのデジタル化・自動化」を進めていくことが重要です。
具体的には、
– 仕入れ先から納品証明データをExcelやCSVで一括管理
– 生産指示書と認証証明をバーコードラベルで紐づけ
– クラウド上で証明書データをサプライチェーン全体で共有化
– 内部監査をAI OCRで効率化し、ヒューマンエラーを削減
中小規模の縫製工場やOEM事業者でも、こういった“部分デジタル化”の取り組みは徐々に成果を上げています。
導入に抵抗感がある場合は、まず「認証トレーサビリティの見える化」から小さく始めるのが効果的です。
OEMバイヤー・サプライヤー双方の視点:コストと価値の再定義
バイヤーの視点:認証素材の本質的価値と比較ポイント
バイヤー目線では、「認証指定=コスト増=価格転嫁」の単純思考ではなく、以下の比較ポイントでサプライヤー選定を進めるべきです。
– 証明書類が正確・迅速に揃うか
– サプライチェーン全体で透明性が維持されているか
– トレーナーの品質や風合い・機能性に違いが生じないか
– サステナブルやトレーサブルであることを消費者訴求に活かせるか
価格交渉だけでなく、認証素材活用の“構造的な強み”がブランド価値を高めることへの期待値を持つことが短期的なコスト増を超えた利益を生み出します。
サプライヤーの視点:現場力と透明性のアピール
一方サプライヤー側は、単なる価格勝負ではなく、
– 現場での混用防止オペレーション
– 電子証明管理への取り組み
– コスト構造の見える化や提案力
– 急な仕様変更対応など柔軟性
といった“透明性と現場力”を武器に、差別化を図るべきです。
いち早く現場の昭和的課題を解消し、デジタル時代のトレーサビリティやサスティナブル調達のスキームを他社より先行して確立できれば「選ばれるパートナー」となります。
まとめ:OEM時代の現場パワーとサプライチェーン改革のすすめ
OEMトレーナーの生産現場で環境認証素材を扱う際は、単なる素材選定を超え、サプライチェーン全体の認証管理、現場での混用防止、証明書の電子管理、そしてコスト構造の分解と運用改革が肝心です。
今後はAI・クラウドなど先端ITと現場の実務知見を融合し、本質的なコスト低減と差別化価値の最大化を目指す「ラテラルシンキング的」な新アプローチが必要とされます。
この記事が、OEMバイヤーの方、サプライヤーの方はもちろん、製造業に関わるすべての方の「SDGs×現場実践」のヒントとなり、日本のものづくり現場改革の第一歩となれば幸いです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)