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方針管理TQM改善のポイント対象機器周期の決め方計測器管理コスト削減の切り口と具体例

目次
はじめに:製造業現場で求められるTQMと計測器管理
製造業界において、品質とコストの最適化は経営の根幹を成しています。
とりわけ日本のものづくり現場では、昭和時代から続く“現場力”という価値観が今なお生きています。
しかしながら、グローバル競争激化やデジタル変革の波の中で、古き良きやり方が通用しなくなってきています。
ここで改めて注目すべきなのが、「方針管理」「TQM(総合的品質管理)」「計測機器の管理とそのコスト削減」です。
特に、計測器管理の”これが正解”と言い切れる周期決定や、コスト削減をどこから着手するかというポイントは多くの現場で悩みの種となっています。
今回は、製造現場・調達、サプライヤーなど多面的な立場から、現場目線でTQM改善・計測器管理の勘どころ、そしてコスト削減の具体手法を深掘りします。
TQM改善の出発点:なぜ“方針管理”が必要か
目先のトラブル対応と本質改善の違い
現場では日常管理(維持管理)と改善活動が両輪となっています。
ルーチン業務の一つひとつを”こなす”だけでは、真の改善にはつながりません。
本質的な改善につなげるためには、会社・部門・工場単位での「方針管理」が出発点です。
方針管理=会社としての目標設定、方針→重点課題→具体的改善テーマへの落とし込み、進捗管理です。
ここが曖昧だと、TQM活動は形骸化し、「改善のための改善」に陥ります。
現場が“やらされ感”で動かないための勘所
方針管理が機能するためには、現場と経営側の視点のすり合わせが不可欠です。
例えば工場長経験者として感じたのは、“現場の困りごと”と“経営の目指す数値目標”の言語が異なることです。
「不良率削減」「稼働率向上」などの数値だけが独り歩きすると、現場は目先のごまかしや記録上の改ざんという“まやかし”に走りがちです。
現場担当者へのヒアリングを密に行い、共感と納得のもとで目標を一緒に作り込む。
このコミュニケーションこそが、地に足のついたTQMへの第一歩です。
計測器管理の現状と課題
なぜ計測器管理が重要なのか
製品の品質保証は“測定”から始まります。
計測器は「現場の目」とも言うべき最重要ツールであり、精度が狂えば不良品や事故のリスクが一気に上昇します。
また、IATF16949、ISO9001など自動車やハイテク分野では計測器の管理が監査の主要ポイントとなっています。
「いつ、誰が、どのように、どれくらいの周期で校正しているか?」がクリアでなければ、サプライヤー評価でも容赦なく減点されます。
昭和的“とりあえず年一回”の限界
多くの工場では、メーカー推奨に従い「年一回」または「半年に一回」といった一律校正を続けています。
これが実は現場の大きな負担(台数×校正費用+停止時間)に…。
しかも、使い方や故障履歴を見ずに“とりあえず全台校正”では、コストダウンの目も出ません。
計測器の“周期の決め方”とベストプラクティス
現場運用とリスクベースアプローチ
最適な校正周期を決定するには、「使い方」「故障率」「製造品の品質要求」「監査記録」を踏まえたリスクベース運用が鍵を握ります。
具体的には、
– 検査頻度の高い要重点測定器(例:出荷前の最終検査など)は厳密に管理
– あまり利用しない器具(例:予備で保管されているゲージ類)は周期を延ばす
– 故障履歴、点検記録を基に“実績評価”し、周期を定期的に見直し
– トレーサビリティが求められる校正は外部委託、現場校正可能なものは内製へ切り替え
サンプル手法:現場主導のABC分析
計測器管理の見える化には「ABC分析」がおすすめです。
A(最重要):品質保証上の死活問題となる機器。校正厳守。
B(重要):使用頻度高い。現場で簡易点検を増やし、周期を伸ばす。
C(低リスク):滅多に使用せず、故障実績もゼロ。抜き取り点検や3年・5年周期へ延伸。
このようなランク分け・棚卸しで、従来の“一律校正年一回”から脱却できます。
現場目線の周期見直し手順(具体例)
1. 全計測器リストアップ・使用頻度・使用用途の集計
2. 過去の校正結果・故障履歴・品質監査履歴の確認
3. 各計測器について、製造工程(どこで何を測るか)と品質要求の関連を明確化
4. リスク評価(安価なノギスと高精度座標測定機で、求められる精度・影響度が異なる)
5. 社内関係者(現場リーダー・品質保証・生産管理)のレビュー会議で暫定方針決定
6. 1サイクル回して、不具合・監査指摘等を評価して微調整
校正周期の可変化にともなう注意点
周期見直しは、必ずエビデンス(根拠)を残すことが重要です。
監査時に「なぜ周期を2年に延ばしたのか」「1年周期ではだめなのか」と問われた際に、使用記録・故障実績・品質不良件数データを提示できないと、ルール破りと見なされてしまいます。
常にPDCA(計画→実施→評価→改善)を回しつつ、柔軟かつ論理的な運用こそが理想です。
計測器管理コストの削減ポイントと具体例
コスト構造を分解する
計測器のコストには主に以下の種類が含まれます。
– 校正費用(外部委託/内部工数)
– 測定器本体や付属品の購入費
– 校正・点検でストップする工程の損失
– 不適合品発生時のリスクコスト(再検査、人件費、顧客対応など)
単純な“経費カット”だけでなく、①必要性の見極め、②校正そのものの効率化、③現場力強化の視点が重要です。
コスト削減のアプローチ
1.内製化による校正費圧縮
高度な校正はプロに任せる必要がありますが、マイクロメータ、ノギス、ダイヤルゲージなど汎用機器は現場レベルでの校正も十分可能です。
適切な校正器(ブロックゲージ等)を備え、社内認定者を育成することで、外部委託費用を圧縮できます。
2.デジタル管理による工数削減
紙台帳やエクセルによる管理(“昭和式”)から、クラウドシステムやQRコード貼付によるデジタル管理へ移行すると、
– 検査予定の自動通知
– 機器情報・履歴の一元管理
– 管理担当者の引継ぎ・教育負担軽減
– 不要な機器や校正誤りの削減
など、余分なコストが確実に減ります。
3.“持たない”戦略のススメ
計測器の冗長在庫や、すでに使われていない機器が現場に多数眠っていませんか?
ABC分析で明らかになった不要計測器は、下取りやリース返却、廃棄等に回すことで、管理コストを根本から削減できます。
また工場間の貸し借り、メーカーからの無償レンタル活用など“所有しない”工夫も有効です。
4.工程FMEAでコア機器のみ選定
工程FMEA(故障モード影響解析)を用い“この工程、この設備ではこの計測器が本当に必要か?”を分析します。
例えば、すべての段階で厳密な測定が必要なのか、工程内の管理はシンプルなチェックリストのみで十分か(“品質は工程で作り込む”思想)洗い直しをすれば、無駄な計器は減ります。
5.改善提案活動の推進
現場スタッフが日々の業務で感じている「この管理って本当に要る?」という気付きや、
外部校正から自社校正への切替案、機器統合による効率化案などを“自分ごと”として上げられる仕組みづくりが、コスト改善サイクルの要です。
まとめ:現場の知恵×データ活用で、過度なアナログから脱却しよう
現代の製造業現場では、従来からの体系的なTQM・工場での現場力は大切にしつつも、過度なアナログ管理からどう脱却するかが問われています。
方針管理・TQM改善では、“現場の生の声”と“経営の数字”を本音で結び付けるコミュニケーションが必要です。
計測器管理は「リスクベース」と「データに基づくエビデンス化」で、無駄な経費・ルーチンを見直すことがコスト削減の肝となります。
たとえ世代交代や自動化の波が来ても、管理の原理原則=品質リスクを見極め、正しい周期・点検を粛々と回し続ける。
そして“現場の気付き”を集めて改善に落とし込む習慣さえ育てれば、メーカー力は間違いなく高まります。
この記事が、バイヤーやサプライヤー、現場の皆さまの“当事者目線による改善”のきっかけ、そして自社の管理手法見直しのヒントになれば幸いです。
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