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保管スペース不足が起きる企業に共通する在庫管理の甘さ

目次
はじめに:現場から見える「保管スペース不足」の真の要因
保管スペースが足りない——この言葉は、私が長年現場を管理してきた中で何度も耳にしてきたフレーズです。
特に歴史が長い工場や、急激な生産量増加に直面している企業ほど、この問題が顕在化しやすくなっています。
しかし、表面的には「モノが多い」「置く場所がない」と聞こえがちなこの課題の根っこには、実は組織的な在庫管理の“甘さ”が深く関わっています。
この記事では、保管スペース不足が起きやすい現場に共通する在庫管理の本質的な課題と、時代とともに変化が求められる「ものづくり」の現場思考について掘り下げていきます。
なぜ保管スペースがあふれるのか:アナログ業界に根付く在庫管理の落とし穴
1.「見える化」されていない在庫がスペースを圧迫する
製造業の多くの現場では、いまだに手書きやExcelで在庫管理をしているケースも珍しくありません。
一度に大量仕入れを行い、数か月先の需要分まで棚に積み上げてしまう。
担当者の「念のため置いておこう」という心理から「死蔵在庫」や「隠れ在庫」が棚の奥や通路に押し込まれます。
見える化されていない在庫は、現場スタッフの記憶や経験に頼ることになり、本来なら不要なモノにも「いつか使うから捨てられない」と過剰な保管場所を割り当ててしまいます。
2.過剰発注・バッファ過多が慢性化
生産計画が固まらず、顧客からの注文が変動しやすい場合、どうしても安全在庫を多めに持とう、という心理が働きます。
「材料切れでラインが止まるよりは、ちょっと余分でも置いておこう」とバッファ在庫が積み上がっていきます。
発注の都度バラバラの担当者が、個々の経験値で仕入数量を決定するため、全体の適正在庫水準がコントロールされません。
そのため、計画性なくスペースが“食いつぶされて”いくのです。
3.工程ごとの「縄張り意識」と縦割り構造
現場ごとに担当者や部門が「これはウチの材料」「あれは製造用」などとスペースを専有するケースがあります。
各工程ごとに“余分目”の在庫を持ちたがり、現場全体の最適化が進まず、限られた倉庫や棚をどんどん圧迫していきます。
伝統的な日本の製造業にありがちな傾向ですが、この“縄張り意識”によるスペース争いが成果を損ねています。
4.アナログ慣行が生む「チェックされない在庫」
年に1回の棚卸だけ、もしくは現場担当者の感覚任せでロケーションや数量を把握している。
このような場合、実際には消費期限切れ・型落ち部品・欠品といった在庫が死蔵され、スペースを無駄に消費します。
情報の更新が追いつかない中、結局“あると思っていたものがない”“どこかに使えるスペースがあるのに気付かれない”といった非効率が長年放置されている現場も多々見受けられます。
現場でよく見る「スペース不足」の典型パターン
生産ライン脇や共有通路に在庫があふれる
本来は一時的保管しか想定されていない通路や通い箱置き場、フォークリフトの通路にまで在庫商品や資材があふれるパターン。
通行の妨げになるだけでなく、安全上のリスクも増大します。
「積み重ね」で棚の奥行きを使い切る
パレットや箱を積み上げて棚の奥まで詰め込む現場。
必要になった時に一番奥から引っ張り出すのに多大な時間と労力がかかり、現場作業の効率が著しく低下します。
不要品・不良品の「仮置き」が定位置化
仕分け待ちや処分が後回しの「いったん置き」の在庫が、そのまま“定位置”化していくケース。
こうしたよどみが新たな不要な在庫流入を招き、結果としてスペース不足を悪化させます。
本質的な改善のカギ:「在庫管理の甘さ」にどう挑むか
1.全社的な棚卸しとデータの「見える化」
まずは物理的な棚卸しを徹底することが第一歩です。
どこに、何が、どれだけあるかの正確なデータを取得し、エクセルや管理システム上で「全社レベルで統一した在庫リスト」を作成しましょう。
現場担当者だけでなく、調達購買、生産管理、品質管理が同じ情報を共有する。
こうすることで、「手持ちの在庫が実は二重、三重に積み上がっている」無駄に気付きやすくなります。
2.需給予測とリアルタイム発注で適正在庫へ
顧客からの受注状況や生産計画をシステムで「見える化」し、需給バランスに基づいた自動発注フローを整備します。
発注は「経験と勘」から「データドリブン」へと移行。
担当者ごとの差異を排除し、全体最適な在庫量を維持します。
またJIT(ジャストインタイム)思想の導入で、「必要な時に必要なだけの資材調達」を目指し“置くだけ在庫”を最小限に抑えます。
3.現場主導の5S活動で「置かない文化」定着
全社で徹底した5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)活動を進め、
「余分なモノは持たない、使わない、置かない」文化の醸成が決め手となります。
仮置き・死蔵品を“見て見ぬふり”から“常に問い直す”仕組みへ。
現場リーダーが中心となり、週次・月次など定期的な在庫見直しをルーティン化することが重要です。
4.バイヤー・サプライヤーの連携強化
サプライヤーと調達方針や発注サイクルを共有し、できる限り小口納入・頻度高納入など受け入れ側の柔軟化を進めます。
また、バイヤー視点でも
「サプライヤー側の保管スペースや余計な在庫圧迫要因は何か」
「真に必要な納入数量・頻度はどこか」
といった目線で、仕入元とのコミュニケーションを一段深めることで、
両者にとって最適な在庫水準・保管スペース活用が実現しやすくなります。
昭和型アナログ発想から抜け出すために
日本のものづくりと「悪しき習慣」の正体
かつて日本の製造業は、「現場力」「現場の柔軟な対応」が最大の強みとして評価されてきました。
しかし、これが裏を返すと「人の勘や経験則に依存したブラックボックス化」「“念のため”文化」「責任・縄張り意識の分断」という“甘さ”を温存してしまった面も否定できません。
さらに、デジタル化や自動化の波に取り残された現場は、「昔と同じやり方に固執し、結果としてスペースがたりない」といった問題に直面しています。
デジタル管理と現場革新の両輪で乗り越える
デジタル管理ツールやIoT活用は確かに強力なソリューションとなりえます。
しかし、現場現物主義の重要さも忘れてはなりません。
管理システム導入や自動搬送機器の投入だけでなく、
「今置いているものは本当に今必要なのか」
「誰が・何の目的で置いているのか」
と、現場の一人ひとりが日々問い直す“思考習慣”を、経営層から現場リーダーまで一丸で定着させることが突破口になります。
在庫問題はバイヤー・サプライヤー双方の「意識改革」から
在庫管理や保管スペース確保の問題は、決して一方通行の話ではありません。
サプライヤー視点で見れば
「顧客はなぜ余分な在庫を欲しがるのか」
「本当に求めているサービス・納入条件は何か」
を理解することで、バイヤーから信頼を獲得しやすくなります。
逆に、バイヤー側にとっても
「調達先にどのような負荷・コストが発生しているのか」
「自社の在庫・発注方針に甘さがないか」
を冷静かつ客観的に見直すことが、無駄のないサプライチェーン最適化への一歩です。
まとめ:スペース不足“あるある”から抜け出すために
保管スペース不足は単なる物理的な問題、オペレーションのミスではありません。
現場に根付いた“在庫管理の甘さ”
アナログな習慣への無批判な継承
バイヤー・サプライヤー双方の「これまで通り」思考
こうした「見えない無駄」を徹底的に洗い出し、現場全員で本気で“適正在庫・見える化・5S・コミュニケーション”を高めていくことが、あらゆる改革の出発点です。
バイヤーを目指す方、サプライヤーとしてバイヤー心理を知りたい方も、ぜひ「スペース不足の陰にある本当の問題」と向き合い、自社の現場改革や顧客ニーズの深掘りに生かしてください。
製造業の持続的な成長のために。
本質的な在庫管理の見直しとスペース最適化こそ、民主化されたものづくりの未来像を切り拓く鍵となります。
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