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投稿日:2025年12月17日

部材のトレーサビリティが不十分でクレーム対応が混乱する現場

はじめに:部材トレーサビリティの重要性を再考する

部材のトレーサビリティ(追跡可能性)は、製造業の現場において欠かせない要素となっています。

これが不十分な場合、不具合発生時のクレーム対応が混乱し、信頼の維持や取引先との関係にも大きなダメージを与えます。

「なぜこんなに混乱するのか」「どうしたら改善できるのか」。
これは昭和の時代から根強く現場を悩ませてきた永遠のテーマとも言えるでしょう。

今回は、現場で20年以上経験を積んだ目線から、部材トレーサビリティ不足によるクレーム対応の混乱と、そこから抜け出すためのヒントを実践的かつ深堀りしてお伝えします。

部材トレーサビリティとは何か?基本の「き」を再確認

トレーサビリティは責任を持つしくみ

トレーサビリティとは、「いつ、どこで、誰が、どんな材料を使って、どのような工程で製品を作ったのか」を後追いできるようにしておくことです。

現在はこの考え方が多くの分野で標準化されつつありますが、昭和時代の“現場力頼み”だったころは「だいたいこれで問題なかった」という感覚で済ましてしまう風潮が根強く残っていました。

現場におけるトレーサビリティは、単なる管理手法ではありません。

工程ごとに責任を持ち、問題発生時に素早く原因を特定し、再発防止策や迅速な取引先対応につなげるための土台なのです。

なぜトレーサビリティ不足によるクレームは混乱するのか

トレーサビリティが不十分だと、部材や製品に対して「どこで問題が発生したのか」「影響範囲はどこまでか」を特定できません。

結果として、品質保証部や生産現場、購買・調達、サプライヤーが場当たり的な情報提供を繰り返すことになります。

最悪の場合、「この部品の責任はどこにもない」とクレームがたらい回しになり、顧客の信頼を簡単に失う結果となるのです。

トレーサビリティ不備が生む現場の混乱、リアルな実例

実例1:工程順に進むほど“どこでズレたか”分からない

自動車製造業においては、10社以上のサプライヤーから届く部材を使い、何百もの工程を経て製品が完成します。

この過程で「どのロット」の「どの部材」が、「どの工程」をどの順番で流れたかを追えない場合、不具合発生時に該当範囲が特定できません。

一つの部材が不良だっただけで、全ライン停止、多大なリワーク(手直し)、取引先全社への謝罪という混乱も珍しくありません。

実例2:“紙伝票”の限界と現場負担

昭和型工場で未だ根強く残っているのが、紙伝票での管理です。

製品一つひとつに貼られた伝票、工程ごとに積み上がる作業報告書…。

いざという時、どこにその記録があるのか分からず、現場スタッフ全員が夜遅くまで倉庫を駆けずり回った、そんな体験談を持つ方も多いでしょう。

しかも、手書きゆえのミスや紛失、同じ番号が複数存在する“伝票かぶり”も日常茶飯事です。

実例3:サプライヤー側の認識ギャップ

“工場の外”であるサプライヤー管理も、トレーサビリティ観点からは無視できません。

バイヤーとして仕入れた部材の履歴が不明確だと、クレーム発生時に「うちの納入ロットは違う」「いや、この資料では該当するはず」など、言った言わないの水掛け論に発展する場合も。

これでは建設的な問題解決には至りません。

クレーム対応現場で見えてきたトレーサビリティ強化の本質

“記録を残す”を単なる作業で終わらせない

現場でよくあるのが「とりあえず記録はあるが、活用できない」という問題です。

記録を残すこと自体が目的化し、本当の生産性や品質向上にはつながっていません。

実際、紙やエクセル管理だと担当者依存が強くなり、「あの人がいないと分からない」「夜中に電話で呼び出される」となるケースも多々あります。

記録の持つ意味を「現場の保険」から「現場の価値」へと進化させる。

これがトレーサビリティの本質です。

“見える化”が現場の安心感に直結する

例えば簡易なバーコードシステムを導入するだけでも、「部材の流れ」が見える化します。

トレーサビリティ確保により、現場スタッフも「何か起きても暗闇の中で探すより、地図を見ながら歩ける」ような安心感を持てるのです。

これにより、無用な心配や負担から現場を解放することができます。

業界動向:なぜ“アナログ管理”から脱却できないのか

昭和的気質の根強さ

製造業界では「長年これで問題なかった」という意識が残りがちです。

ベテラン作業者による経験則と勘、作業日報を積み重ねて記録する文化…。

それが悪いわけではありませんが、デジタルに移行しやすい他業界と比べても、変革の速度が極端に遅いのが現実です。

現場のITリテラシーと“導入後の運用ハードル”

現場にはITに不慣れな方も多く、「新しいシステムは面倒」「結局、記録を残しても現場負担が増えるだけ」といったネガティブな先入観が導入の壁となります。

また、システム導入後は日常的な運用・教育が必須ですが、これを軽視すると、トレーサビリティは絵に描いた餅になりがちです。

経営サイドの投資判断と“費用対効果”の壁

トレーサビリティシステムの導入には費用も手間もかかります。

「今すぐ困るわけじゃない」「コストカットが最優先」と短期的判断になりがちで、結局、強い危機感を持つ事例(大量クレームやリコール)に直面するまで動かない企業も少なくありません。

トレーサビリティ強化:現場発で進めるための5つのヒント

1. 小さな現場単位から“見える化”を始める

大規模投資よりも、まずは一工程・一ロットなど、ミニマムの単位で気軽に導入できるバーコード管理や簡易履歴表からスタートしましょう。

「現場の苦労が減った」「特定範囲の追跡が簡単になった」という成功体験の積み重ねが全社展開の原動力となります。

2. “例外パターン”を最初から排除しない

現場には「標準では説明できないが、どうしてもこうしたい」例外パターンがつきものです。

システムや運用ルールにもある程度の柔軟性を持たせ、“やっつけ記録”にならないよう工夫しましょう。

たとえばメモ欄への補記や、手入力機能などが役立ちます。

3. サプライヤーとの連携を強化する

バイヤーやサプライヤーの関係において、トレーサビリティ項目を事前合意し、定期的な情報交換や現地監査を通じて二者で目線を揃えることが重要です。

Win-Winの関係になることで、「部材事故の責任転嫁」ではなく「共に再発防止策を考える」姿勢につながります。

4. クレーム発生時の“初動フロー”を定期的に訓練

何かあってからやみくもに情報を探すのではなく、クレーム発生時の初動対応フロー(誰が、何の情報を、どの順に集めるべきか)をマニュアル化し、ロールプレイ訓練しておきましょう。

“本当に必要な記録”が現場から逆算して見えてきます。

5. “トレーサビリティ充実”による顧客価値を現場で意識する

単なる手間増加と捉えるのではなく、自社のトレーサビリティ水準が「顧客から見て選ばれる理由」「次の仕事につながるポイント」になることを現場全員で共有します。

特に“品質にシビアな”顧客を相手にする業態なら、その姿勢自体が大きな信頼につながります。

おわりに:トレーサビリティ強化は現場の矜持である

部材のトレーサビリティは、クレーム対応の混乱を防ぎ、サプライチェーン全体の信頼性や現場の安心感を支える基盤です。

昭和の現場力から一歩踏み出し、泥臭くも「デジタルとアナログのいいとこ取り」を模索し続ける…。

それこそが、日本の製造業が次の時代も選ばれ続けるために欠かせない“現場目線の改革”なのです。

あなた自身の現場でも、まずできることから始めてみてはいかがでしょうか。

答えはすぐ近く、日々の現場にあるはずです。

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