投稿日:2025年9月4日

日用品OEMで選ばれる消耗品カテゴリと差別化戦略の実例

はじめに:日用品OEM市場の深化と現在地

近年、日用品のOEM(相手先ブランド製造)はその市場規模を着実に拡大しています。
とくにティッシュペーパー、ウェットシート、キッチン用品、マスクといった消耗品カテゴリは、生活者にとって日常になくてはならないアイテムです。
この普遍的な需要に支えられ、多くのメーカーや新興ブランドがOEMビジネスに参入しています。
一方、まだアナログ体質を根強く残す企業も多いのが現実です。
この記事では、20年以上の製造現場経験を持つ筆者が、現場目線で「どんな消耗品カテゴリがOEMで選ばれやすいのか」、そして「差別化の実例や戦略」を紐解いていきます。

OEMで選ばれる消耗品カテゴリとは

市場で安定した需要があるアイテム

消耗品の強みは、「絶えずリピートされる」という点に尽きます。
たとえばペーパータオル、トイレットペーパー、歯ブラシ、スポンジなどは、季節や景気に左右されず需要が安定しています。
こうしたアイテムは、小売店やEC事業者からも「定番品」としてのOEM依頼が非常に多いです。

生活スタイルの変化に対応した新商品分野

コロナ禍以降、除菌シートや使い捨てマスク、携帯用消毒スプレーなど、衛生意識の高まりを背景に新たな消耗品が生まれています。
これらはまだ成熟しきっていない分野なので、スペックやパッケージ、ロット・価格形成で差別化しやすい環境があります。
OEMではこうした“成長カテゴリ”への挑戦が特に注目されます。

製造現場の最前線:OEM商品企画のリアル

20年以上の現場経験を踏まえると、OEM案件で多いのは「ベーシックラインナップ」と「付加価値型OEM」の二極化です。
たとえば歯ブラシの場合、
・ベーシック型:大量生産型で、安価かつ迅速に供給できることが第一。
・付加価値型:「環境配慮型素材の採用」「独自のパッケージ」「OEM先ブランドへのロイヤリティ共同開発」など、差別化ポイントを明確に打ち出したものです。
実際には消費者の声や小売現場での要望が日々OEM側にもフィードバックされ、その改良スピードや柔軟対応力も選定理由になっています。

選ばれるOEMメーカーの特徴

調達・品質管理に強い工場が信頼される

消耗品ビジネスで最もトラブルが起きやすいのは「原材料の調達」と「品質の均一化」です。
たとえばペーパー類では、製紙原料の価格変動や調達リスクが非常に大きい。
また、ロットごとの肌触りや色合いの微妙な差が、BtoC市場でクレームにつながる場合もあります。
長く選ばれるOEMメーカーはサプライチェーンの安定感、工場管理職による綿密な品質保証体制、また大手ベンダーとの継続的な取引実績が評価されています。

提案力・対応力のある窓口担当

OEMビジネスの現場には「打てば響く」ようなスピーディーで柔軟な担当者が必要不可欠です。
開発初期から、「このパッケージデザインは法規制に合致しているか」「店頭・物流現場での使い勝手はどうか?」といった細部まで現場目線でサポートができる企業ほど、リピートや紹介が続きます。

昭和から続く“見えない壁”を超えて

日本の製造業の現場では、いまだFAXや電話、押印文化が根強く残っています。
一方で最新の自動化設備やIoTを導入することで、アナログとデジタルのハイブリッド管理を実現している工場は、バイヤーやサプライヤーの信頼度も高いです。
古い体質から一歩踏み出す工場の進化が、差別化要素になっています。

差別化戦略の実例1:素材・エコ対応

環境対応素材の開発とパートナーシップ

今や、小売大手も「サステナブル商品」への切り替えを急速に進めています。
OEMでも、例えば「生分解性素材を使ったスポンジ」「パッケージレス設計のトイレットロール」など、環境に配慮した商品が新たな差別化要素となっています。
開発現場では調達購買部門と連携し、海外メーカーや新興素材ベンダーとのパートナーシップを築くことも増えています。

脱プラスチック・リサイクル素材の活用

消耗品OEMの分野は、従来のような“安さ競争”から、“エコな価値提案”へとシフトしています。
たとえば「再生パルプを90%以上使用したティッシュ」、「リサイクルプラスチックのごみ袋」など、環境配慮をフックにOEM事業を伸ばした事例は枚挙にいとまがありません。
バイヤー・サプライヤー間でも“サステナビリティ調達ガイドライン”が一般化しつつあります。

差別化戦略の実例2:BtoB特化型OEM

業務用市場に特化したニッチ戦略

消費者向けBtoC OEMがレッドオーシャン化する一方、介護施設・ホテル・病院など業務用のBtoB市場では、今も高付加価値型OEMの需要があります。
たとえば、「抗菌・抗ウイルス機能付きの客室用トイレットペーパー」「洗濯に強い使い捨てタオル」など、機能・耐久性を極めたプロ仕様商品が生き残りの鍵になります。
このようなBtoB特化商品は、大量生産には向きませんが、粘り強い開発と営業戦略で高収益化が実現できます。

現場目線でのフレキシブル対応

業務用市場で重視されるのは、「納期厳守」と「細かいカスタマイズ」への即応力です。
筆者の工場長経験では、現場の担当者が直接クライアント(施設側)に定期的にヒアリングを行い、ロットサイズ・包装仕様・保管利便性を最適化する取り組みが高評価につながりました。
OEM工場のライン柔軟性やチーム力も、大きな差別化要因になります。

差別化戦略の実例3:ブランド体験の再設計

パッケージと体験価値のイノベーション

単なるOEMから一歩進み、自社で「デザイン性」「ストーリー性」「ギフト需要」など独自のブランド体験を作り込んだ例も増えています。
たとえば、アーティストとのコラボパッケージや、「開封した時にメッセージが現れるティッシュボックス」など、商品そのもの以上の体験価値を重視したOEM依頼も存在します。

ロイヤリティの共同開発=バイヤーとの共創

現代のOEMでは、サプライヤーは「モノを作るだけ」の立場を卒業しつつあります。
バイヤーや販社とともに、商品ブランドの立ち上げから“売り方ノウハウ・販促キャンペーン”まで共同開発するプロジェクトも増加中です。
自社の製造ノウハウを、ブランド体験の構築と一体化させることが、貴重な差別化資産になります。

ラテラルな発想で開くOEM新時代

異分野ニーズの混合による新商品開発

たとえば、キッチンペーパーの高吸水性技術を応用して、アウトドア用の除菌ウェットシートをOEM開発するなど、「既存技術×異分野ニーズ」のマッチングも新たな成長戦略です。
現場目線の知恵と、大企業ならではの技術蓄積が融合することで、これまでにない消耗品が生まれるチャンスがあります。

CX(顧客体験)を最大化するDX活用

昭和型のアナログ取引から脱却し、受発注の電子化・進捗トラッキング・リアルタイムQA対応など、DX(デジタルトランスフォーメーション)はOEM現場でも急速に進んでいます。
見積もり・品質改善・在庫管理までワンストップで“見える化”を実現することで、バイヤー・サプライヤー双方が“納得感のある取引”を構築できます。

これからOEMの現場を生き抜くために

消耗品カテゴリにおけるOEM市場は、今後も安定した需要が見込まれます。
一方、安易な安さ競争に頼るだけでは、レッドオーシャンから抜け出せません。
調達力・品質力・フレキシブル対応力をベースに、いかに独自価値や体験、共創ストーリーを生み出すか。
現場で磨かれた知恵と、従来のアナログ文化を活かしつつ、先端技術やデジタル化を取り入れて進化することが求められます。

バイヤーを目指す皆さま、またはサプライヤーの立場でOEMビジネスを深く知りたい皆さまにとって、この記事が新たな競争軸やアイデア創出のヒントとなれば幸いです。

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