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Kraljicマトリクスで戦略物資を切り分け交渉資源を最適配分するポートフォリオ設計

目次
Kraljicマトリクスとは何か?その本質を解く
Kraljicマトリクスは、1983年にピーター・クラリックによって提唱された調達ポートフォリオのための戦略フレームワークです。
調達購買の現場で身を以て実感するのは、全ての部品・原材料・サービスが同じように重要ではなく、価格交渉やリスク管理の優先順位も全く異なるということです。
クラリックマトリクスの最大の魅力は、調達品目を「リスク」と「影響度」の2軸で4象限に分け、経営資源やバイヤーの交渉アプローチを最適に配分する思考法にあります。
これにより、日々増大するコストプレッシャーやサプライチェーンリスクに対応しつつ、昭和時代から続く「どんぶり勘定調達」から脱却し、最先端の購買経営戦略へと進化することが可能です。
なぜKraljicマトリクスが“今”必要なのか
生産現場は「コスト低減と安定供給」という相反する課題に常に悩まされてきました。
昭和〜平成のやり方では「とにかく値切る」「老舗サプライヤーとはズブズブ」「紙頼みのアナログ台帳管理」など、属人的で現場依存体質から抜け出せず、変化への対応力に大きな課題を残しています。
一方で、世界的な部品不足・原材料高騰・災害リスク・エネルギーコスト上昇など、外部環境はますます厳しくなっています。
調達購買のプロフェッショナルとして、限られた工数や交渉リソースを“インパクトの大きい物資”に集中させ、些細な消耗品には最小限の管理で済ませる――これが激変の時代における調達戦略のセオリーです。
Kraljicマトリクスは、そうした現場目線の悩みに対し合理的かつ戦略的な解答を与えてくれる存在です。
Kraljicマトリクスの4象限で物資を分類する実践手順
1. リスク × 影響度で全調達品を区分
まずは、購入品やサービスを「供給リスク(調達難度)」と「事業への影響度(重要度)」の2軸で整理します。
– リスクが高い=代替困難で納期遅延・価格高騰リスク大
– 影響度が高い=原価インパクトやモノづくり品質に直結
調達品を一つ一つ棚卸しし、下記の4象限に分類します。
2. 4つのマトリクスタイプ
1. 非クリティカル品 (Lowリスク × Low影響度)
事務用品や消耗部品など。競争原理を活かしコスト低減・発注自動化を徹底。
2. レバレッジ品 (Lowリスク × High影響度)
相見積もりで大幅なコスト削減余地のある主要原材料や規格品。価格交渉の集中投下が効果的。
3. ボトルネック品 (Highリスク × Low影響度)
特殊な加工品や調達難度は高いが事業インパクトは小さめ。仕入先の複数化や在庫の積上げ検討。
4. 戦略品 (Highリスク × High影響度)
企業競争力を左右するキーパーツや重要原材料。長期パートナーシップや共同開発、リスク分散など、中長期視点での調達戦略が必須。
3. ファクトで判定することの大切さ
「うちのA社は昔からやってもらってるから皆依存してる」
「この品目は安いから神経質にならなくても良い」
こうした”感覚値”ではなく、実際の取引データ・納入遅延記録・供給元の与信・BCP(事業継続計画)観点も含めて事実ベースで区分することが肝心です。
昭和アナログ体質へのアンチテーゼとして使うKraljicマトリクス
帳票主義の落とし穴から抜け出す
年功序列や勘と経験で回してきた現場は、調達品の全体像を“脳内管理”に頼りがちです。
しかし、マトリクスを使えば根拠ある客観的な棚卸し(マッピング)が可能になり、本質的な効率化ポイントが明らかになります。
例えば「発注業務の8割が小物買い」だと判明すれば、ここは自動発注・間接材アウトソーシング・カタログ購買に振り切ることで業務負荷を劇的に軽減できます。
逆に『戦略物資部門』は個別ソーシングチームを設置し、上位サプライヤーとの深い対話や共同改善のリソースを重点投入可能です。
アナログ現場へのラテラルな介入
現場の“古き良きコア”は大切にしつつも、調達資源の配分をラテラル(水平的・新規視点での)に見直すことで、各サプライヤーとの関係性刷新や若手人材の活性化も期待できます。
Kraljicマトリクスは「徹底的な数値化」と「柔軟な組織横断アプローチ」の両輪を促す、今こそ必要な現場改革のツールです。
バイヤーとしての“交渉資源”最適配分法
全品目に気を配るは大間違い
バイヤーは限られた時間・知恵・人脈のなかで、どの商談にどれだけリソースを投下するか決断しなければいけません。
非クリティカル品は価格自動比較サイト活用や年一括契約で省力化。
レバレッジ品には競争原理を導入し、定期的に再入札や共通化提案を行う。
ボトルネック品は単独サプライヤー依存から複数調達や社内生産化を視野に。
戦略品は「絶対に切らしてはいけない」「技術力に依存している」からこそ、開発部門・製造技術・仕入先購買チームでの専任体制を組みます。
具体的なアクションは、調達物ごとの重要度・リスクを数字で“見える化”し、それに応じた権限委譲や意思決定プロセスを整備することです。
交渉スキルを磨く距離の取り方
Kraljicマトリクスを導入すれば、単なる価格交渉力だけでなく「この品目には何が効くか?」を冷静に見極めた“戦略的距離感”を養うことができます。
発注条件や納期優先度、開発協力要否などを品目ごとに情報管理すれば、現場と購買のギャップも埋まりやすくなります。
サプライヤーの立場で知っておきたい「バイヤーの思考法」
どんな情報に目をつけて分類されるか
バイヤーは、価格だけでなくロジスティクス・品質トラブル発生率・サプライヤー体力・納期柔軟性といった“供給安定性”を総合的に計っています。
「当社は戦略物資の納入先として、他の企業とどこが異なるのか」
「競合他社はどういう点でバイヤーから評価されているのか」
こうした視点で自社の納入品を分析し、他社との差別化提案やリスク対応事例を積極的にアピールすることが、パートナーシップ維持の近道です。
戦略物資分野のサプライヤーへの期待値
戦略物資と見なされた場合、共同開発や早期QCD情報の共有・サプライチェーンリスク対応など、格段に高い水準の対応力が求められます。
新しい提案や安定供給への体制づくり、海外サプライヤーとの協業推進など、バイヤー視点を先取りした施策が今後ますます重視されるでしょう。
Kraljicマトリクスの導入課題と現場流アレンジ
定期棚卸しと現場への落とし込み
時代とともにビジネス環境は変わります。
一度作ったマトリクスも、定期的なデータアップデートが必要不可欠です。
設備投資や生産モデルの変化、新規事業の立ち上げ時にも改めてポートフォリオを見直しましょう。
また、サプライヤーの現場の声・担当バイヤーの「肌感覚」も反映し、形式的なチェックシートだけでなく担当者全員で納得する棚卸し・マトリクスワークショップを実施するのが、成功ポイントです。
アジャイル型の購買戦略へ
これからの時代は、硬直的なマトリクス運用ではなく、変化に応じて機動的に分類し直せるアジャイル型の運用が必須です。
現場の意見、経営層からのトップダウン、サプライヤーの最新状況――これらをラテラルにつなげ、実用性と網羅性のバランスをとることが、脱昭和・現場改革の核心だと考えています。
まとめ:Kraljicマトリクスで製造業の競争力を磨く
調達購買の現場にKraljicマトリクスを取り入れることは、単なる理論導入ではなく「どこに時間をかけ、どこで割り切るか」という“経営的思考習慣”を現場全体にインストールすることに等しいです。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの思考を先読みしたい方、そして熟練の現場担当者すべてにとって、Kraljicマトリクスの意義をぜひ深く実感していただきたいです。
調達資源の最適配分とポートフォリオ設計――これこそが、昭和の延長線から一歩抜け出し、「真の現場進化」を叶える製造業バリューチェーンの核となります。
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