投稿日:2025年6月28日

粉体ハンドリング貯槽供給輸送で起きる不良とトラブル対策

はじめに:粉体ハンドリングの重要性と現場課題

粉体ハンドリングは、製造業の多くの現場で不可欠な工程です。

特に食品、化学、医薬品、金属加工など多様な業界で、原料の保管(貯槽)、供給、輸送という一連のプロセスが品質と歩留まりを大きく左右します。

しかし、その現場では今なお昭和の時代から続くアナログ的な管理方法が根強く残っており、さまざまな不良やトラブルが頻発しています。

この記事では、長年製造現場に携わった実体験をもとに、具体的なトラブルとその対策について現場目線で深く掘り下げて解説します。

また、調達購買やサプライヤーの方がバイヤーの“気にしていること”を理解できるヒントも交え、SEOにも強い内容を意識して構成します。

粉体ハンドリングでよく起きる不良とトラブル

粉体の“つまり”と“フロー障害”

粉体の貯槽から供給、輸送において最も多いトラブルは、やはり“つまり”です。

現場では「ブリッジ」や「ラットホール」といった現象が発生すると供給が途絶え、装置が止まることもしばしばあります。

これらは粉体物性(粒径、形状、水分、付着力など)のアナログ分析が甘かったり、設備の設計が実際の現場に即していない場合に起こりやすいです。

例えば、食品工場の原材料貯槽において高湿度の環境下で細粒粉体(小麦粉など)を扱うと、粉体同士が付着し合い、コンベアやスクリュー内で詰まってしまう事例が多発します。

分級と銅製品混入などの品質不良

粉体ハンドリングでは、搬送時の振動や衝撃によって“分級”(粒径ごとの分離)が起きやすく、仕込み時に均質な原料でなくなってしまうこともあります。

また、製造ラインや設備内部からの金属摩耗カスやネジ類の混入リスクも考慮する必要があります。

とくに食品・医薬品分野では異物の混入は重大なクレーム案件に直結します。

計量・供給量のバラツキと歩留まり低下

粉体は流動性や固結度合いが一定でないため、定量供給の制御が難しくなります。

オペレーターの勘や経験(いわゆる“ベテラン頼み”)で設定値を都度変える現場も多く、これによる計量ミス、歩留まり低下、追加投入による原価増加という課題が発生しています。

静電気・粉じん爆発のリスク

粉体の搬送では、摩擦などで静電気が溜まり、放電による火災・爆発リスクも無視できません。

化学プラントや金属加工工場では粉じん爆発の大事故も過去に多発しています。

このようなリスクを“想定外”とせず管理することが安全運営の要です。

根本原因はなにか? 属人化とアナログ文化の課題

“標準化”できていない現場のリアル

多くの工場では、粉体ハンドリング関連の標準作業手順書(SOP)が未整備、または曖昧な運用のまま属人的に管理されているのが現実です。

たとえば「詰まりそうな時はこうやる」「この粉は雨の日は早めに入れる」といったノウハウが個人に偏在しており、属人化を極限まで助長しています。

その結果、突発トラブル時の初動対応もバラバラになりがちです。

ひと昔前の“設備まかせ”・“現場合わせ”

「入れれば流れる」「詰まったらバンバン叩く」…今でも昔ながらのアプローチに頼る工場は多いです。

また、原材料のスペックが少し変化しただけで、設備側の微調整でしのぐ文化が根強いのも日本の現場の特徴と言えます。

自動化装置を導入しても、運用を現場の裁量や職人気質に任せてしまうと、トラブルはゼロにはなりません。

トラブル対策:現場主導の実践的アプローチ

粉体物性データの“見える化”とデジタル管理

すべての原材料ごとに、①粒径②形状③比重④吸湿性⑤流動性を必ず定量的に測定し、現場でも即座に確認できるデジタルデータベースを作ることが第一歩です。

既存の粉体特性評価装置(アンギュラリー、測定シリンダーなど)を活用し、数値化による“見える化”を進めましょう。

また、データを設備の基準へ反映させ、材料変更時も流動性・供給量の変動を事前に予測できる環境づくりが大切です。

設備の“標準化”と“定期的な再設定”

供給・輸送設備は原材料設計値の変動が生じるため、“一度やったら終わり”ではなく、定期的な再設定・再キャリブレーションが必要です。

また、運用現場ごとに最適化された設定値のばらつきを統一する手順書整備が極めて重要です。

取扱説明書通りの運用だけでなく、現場の実態に合わせたチェックシートの作成と見直しを推進しましょう。

異物混入対策:工程ごとの見直しと冗長化

分級と異物混入対策としては、工程内のふるい(シフター)、マグネットセパレーター、メタルディテクターの導入・点検に加え、搬送経路の死角となる部分の清掃頻度アップが効果的です。

また、供給元と供給先の双方で二重のチェック体制を取り入れることでトラブルの冗長化を図ります。

気をつけたいのは「設備を導入しただけで安心しない」ことです。

現場のオペレータが“機能しているか”構造的に監視する運用の標準化も不可欠です。

静電気・粉じん爆発リスクの管理

帯電対策としては、設備のアース接続、導電性ベルトの採用、環境湿度の管理が最も即効性のある方法です。

また、高リスク材料の場合は防爆仕様の電気機器を徹底して使用しましょう。

“安全は全てに優先する”という文化づくりを現場リーダーが先頭に立って推進してください。

業界動向:脱アナログ・自動化DXの現状と課題

IoT・AI活用と現場への落とし込み

近年、粉体ハンドリング分野でもIoTやAI監視技術の導入が進みつつあります。

「つまり予兆の検知」「流量自動記録」「異物混入の画像解析」など、設備のセンシングと連動した新たなトラブル予防アプローチが登場しています。

しかしながら、アナログ文化が強い現場では“道具”としての本質的な活用が進まず、かえって現場の混乱要因となる例も見受けられます。

現場教育・交換世代へのノウハウ継承

粉体ハンドリングは「現場百遍」と言われるほど、経験の積み重ねがものを言う分野です。

将来を見据えて“暗黙知”の形式知化(ナレッジベース蓄積)、異世代社員が一緒に課題解決できる教育フローの構築が業界共通のテーマとなっています。

調達購買・バイヤーを志す方へのアドバイス

粉体設備提案や改善依頼の勘所

バイヤーや購買担当が粉体ハンドリング関連の設備・部材を選定またはサプライヤーへ改善要求を出す際に、単なる価格比較だけでなく「現場の使い方・不良パターン・属人化リスク」を必ずヒアリングする姿勢が重要です。

購入後の“使いにくさ”“歩留まり悪化”は責任が自社に跳ね返るため、机上のスペック比較ではなく現場実態・過去年間トラブルデータまで突っ込んだ確認をおすすめします。

サプライヤーが知っておくべき現場バイヤーの視点

バイヤーは設備性能/価格よりも、“不良・トラブル”をいかに予測・低減できるかという“将来的なコストと安定供給”を重視している傾向があります。

現場ノウハウを交えた価格提示や改善提案が、差別化・採用率アップにつながります。

また、QD(Quality-Delivery)問題へのアジャイルな対応を社内全体で徹底することで、パートナーとしての信頼構築も強化できます。

まとめ:未来志向の粉体ハンドリング現場へ

粉体ハンドリングの不良・トラブル・工程管理は、いまだ昭和の時代から受け継がれたアナログ文化に根差した課題が山積しています。

ですが、その一方でDXや自動化、IoTに支えられた次世代の現場効率化も現実味を帯びてきました。

大切なのは、ただ設備やシステムを導入するのではなく、「現場のリアルな課題×蓄積されたノウハウ×新技術の融合」というラテラルな発想で、一歩先を見据えた変革を進めることです。

この記事が現場で悩む方、そしてバイヤーやサプライヤーとして関わるすべての方の“地に足のついた改善”のヒントとなることを願っています。

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