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問題発見分析からカイゼン提案まで未然防止力を高める実践講座

目次
はじめに:製造業に求められる「未然防止力」
製造業の現場では、日々さまざまな課題が発生します。
納期遅延や品質不良、原材料の不足、工場のラインストップ…。
こうした「問題」は、起こってから対処するのでは遅く、コストや信頼の大きな損失につながります。
そこで重要になるのが、「未然防止力」です。
これは、問題の芽を早く見つけ、事前に手を打つ力のことを指します。
長年、調達・購買、生産管理、品質管理、そして自動化の現場で培ってきた実践経験、そして昭和から続くアナログな業界ならではの特性も踏まえながら、「未然防止力を高めるための問題発見・分析からカイゼン提案まで」の実践的なノウハウを共有します。
サプライヤーの皆さんや、バイヤー職を目指す方にも役立つ「現場のリアル」を込めました。
なぜ今、未然防止力が重要なのか
業界全体に根付いた事後対応からの脱却
昭和の高度成長期から日本の製造業は、現場の頑張りと、圧倒的な「やり抜く力」で乗り切る傾向が根強く残っています。
問題が起きてから素早く動く「火消し型」対応は、ある意味では日本の製造業の強みでした。
しかし、グローバル化による時間的・コスト的な制約、高度化する品質要求、そして人材不足。
これらを前に、「事後対応」だけではもう立ち行きません。
まさに今「未然防止力」が全社的な持続的成長のカギとなっています。
なぜ多くの現場で「後手」に回るのか
では、なぜ未然防止が難しいのでしょうか。
主な理由は次の通りです。
・問題の「兆候」に気づかない(または放置する)
・現場の暗黙知(ノウハウ)が属人化している
・各部門やサプライヤーとの壁、情報伝達の遅さ
・「管理資料」や「会議」のための記録が形骸化している
・上意下達の文化で現場の声が吸い上げられない
こうした古い業界構造や文化をアップデートするのも、「未然防止力強化」の一部だと言えます。
問題発見力を鍛える — 「見える化」の徹底
現場での「違和感」を言語化せよ
多くの問題は、最初はごく小さな「違和感」として表れます。
例えば、工程を移った直後のへんな音、作業者のちょっとした手間の増加、締め切り間際に続くちょっとした部材不足。
しかしこの「小さな違和感」は、日々の作業の中に埋もれてしまいがちです。
現場リーダーやバイヤー、サプライヤーは、この「違和感」を積極的に拾い上げ、言語化する訓練が必要です。
現場のパトロール記録や朝礼でのKYT(危険予知トレーニング)に、「些細な変化」「気になる点」といった自由記述欄を設け、現場担当者の気づきを吸い上げましょう。
情報の「見える化」で真因を掴む
違和感の記録やデータを集めたら、見える化が不可欠です。
古くはヒヤリハットノートや現場ボード、最近ではIoTによるパトライトや稼働監視システムなど、デジタルツールの活用も進んでいます。
ここで重要なのは、「気になる現象」を蓄積し、全体像を把握することです。
単独の異変やトラブルが「偶然」ではなく、パターンや相関の中にあることを可視化できます。
例えば、
・一定の曜日に部品遅れが発生
・特定の作業班でしか不良が出ない
・同じサプライヤーの特定ロットのみ品質不安定
こうした傾向をグラフやヒートマップで「見える化」することで、潜在課題が浮かび上がります。
問題分析の実践 — 「問い続ける」力
なぜなぜ分析は終わりを作らない
問題が起きた時、「なぜ?」を5回繰り返す「なぜなぜ分析」は有名ですが、実務ではここで止まってしまいがちです。
大事なのは、「本当にその原因で解決できるのか」を問い続けることです。
製造業の現場でよく見られるのが、
「A機械の故障原因:メンテナンス不足」
「理由:マニュアル通り実施されていなかったから」
ここで終わってしまいます。
しかし、
「なぜマニュアル通りにできなかったのか?」
「なぜ教育を受けていなかったのか?」
「なぜ新人にはチェック体制が弱いのか?」
このように、現場工程・人・仕組み・文化など、多層的に「問い」を深めていくことが肝要です。
サプライヤー・外注も巻き込んだ多層分析
現代製造業は、社内だけで完結しません。
調達購買部門としては、サプライヤーの工程・管理体制・人の流動性などまで含めて、問題の深掘りが必要です。
そのためにはバイヤー主導で、サプライヤー企業・現場リーダーとの合同ワークショップや、現場でのプロセスマッピング、工程フローの棚卸しなど「巻き込み型分析」が効果的です。
これにより、お互いの暗黙知も「見える化」しやすくなります。
カイゼン提案へ:現場主導で「突破」するコツ
アイデアを出すための「多様性」と「場作り」
分析から得られた課題をカイゼン提案に結晶化するには、現場の「多様な視点」が不可欠です。
・ベテランと新人
・事務職と製造現場
・バイヤーとサプライヤー
こういった異なる立場、視点を持つメンバーを交えたミーティングやブレインストーミングで意見を引き出しましょう。
「こんな些細なこと…」と思うことこそ、未然防止には欠かせない材料です。
また、いきなり大がかりな改善策を練るのではなく、小さなテスト(仮説検証、PoC)を現場で素早く回す「現場主導型イノベーション」も、業務改善を加速させます。
「カイゼン文化」を根付かせるために
一年で終わる「改善強化月間」では意味がありません。
継続的カイゼンを根付かせるには、
・提案内容とその効果を全員で共有する仕組み
・「失敗しても次につながる」心理的安全性
・現場のアイデアを評価するインセンティブ(表彰・報奨)
など、「文化としての改善」の仕掛けが重要です。
管理者や工場長も、「現場の声に耳を傾け、一緒になって答えを探す姿勢」を示すことが、現場の活性化と未然防止力の底上げにつながります。
バイヤー・サプライヤーが押さえたい未然防止の共通言語
「指示」と「共創」のバランス
調達・購買部門やバイヤーの立場から見れば、取引先(サプライヤー)に対し、「問題ゼロ」「納期厳守」「品質安定」…と要求したくなります。
一方サプライヤー側には、「現場事情に即した改善の余地」「工夫の共有」など、多くの知見やノウハウが眠っています。
大切なのは、「指示通りやらせる」だけでなく、共に未然防止・原因究明に踏み込む姿勢です。
報連相(ほうれんそう:報告・連絡・相談)はもちろん、「つまずき事例の早期共有」や、「困ったことを一緒に考える合同カイゼン会」の開催など、オープンなコミュニケーションが未然防止力を何倍にも高めます。
リスク可視化による「攻めの調達」
先取り型バイヤーは、サプライヤーからヒアリングした現場リスク(稼働率・部品在庫・作業者のスキルばらつき)をデータで可視化し、経営層や設計部門と共有します。
これにより「調達戦略の最適化」「バッファ・代替策の設計」「柔軟なライン切替」といった次の一手が打てます。
ここにも、「未然防止力」が感じられるでしょう。
昭和アナログ業界でも実践できる未然防止カイゼン術
デジタル化 vs. アナログ文化の折衷策
いまだ紙・手書き・電話・FAXが中心という現場も多い日本の製造業。
しかしデジタル化が苦手だからといって、「カイゼンができない」と諦める必要はありません。
例えば、
・現場の“あたりまえ”を写真や動画で残す「事例データベース」
・手書きノートやボードをスマホで撮影し、グループチャット共有
・ローテーションで工程の「良い点・悪い点」を付箋紙で集める
こうした“ハイブリッドな見える化”からでも、十分実践できます。
むしろ中小メーカーや老舗企業の「現場力こそが最大の武器」だと自信を持ってください。
まとめ:現場知の結集で、変革は必ず起こせる
「未然防止力」は、単なる管理強化や監視ではありません。
現場で日々生まれる小さな気づきを組織知にし、問題の兆しを「見える化」し続けること。
分析は部門や社外に壁を作らず、多様な視点で問い詰めること。
そしてカイゼン提案は現場主導で、“挑戦と失敗”を許容し続ける文化を根付かせることです。
調達購買、生産管理、品質管理と立場は違っても、「未然防止力」は全ての現場が共有すべき最重要価値です。
これから製造業を目指す方、現場で苦悩する若手、サプライヤーの皆さん。
私たち“現場の知”を結集し、アナログもデジタルも融合させ、時代に強い現場力をともに築きましょう。
それが、世界に誇れる日本型ものづくりの、これからの競争力になると信じています。
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