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問題プロジェクトを未然防止し立て直す実践マネジメント術

目次
問題プロジェクトが蔓延る現場―なぜ未然防止が難しいのか
製造業の現場で「問題プロジェクト」に遭遇したことのない方は、ほとんどいらっしゃらないはずです。
特に昭和時代から続くアナログ志向の強い現場では、課題の発見も対処も「場当たり的」になりがちです。
私自身、20年以上にわたり調達・生産・品質・工場運営とさまざまな立場で現場を見てきました。
そして「トラブル対応」か「未然防止」かという根本的なテーマに常に直面してきました。
問題プロジェクトが頻発する背景には、情報伝達の遅れや属人的な判断、旧態依然の業務フロー、さらには「とりあえず進める」マインドが根強く残っています。
これでは不良品の流出や納期遅延、コスト膨張といった事態が後を絶ちません。
大切なのは、一歩引いて「なぜ繰り返すのか」を突き止めることです。
アナログ文化の功罪
現場ベテランの「経験勘コツ」は一朝一夕に真似できるものではありません。
ですが、その資質頼みの運営は、本質的な問題解決力の養成を妨げます。
紙ベースの日報、フェイス・トゥ・フェイスの打ち合わせ、現場での口頭指示…。
こうしたアナログ文化は強みである一方、情報共有や標準化を妨げ、潜在的なリスクを隠してしまいます。
プロジェクト初期段階の盲点
問題プロジェクトの多くは、初期段階の「曖昧な要件定義」「情報の非対称性」「関係者ごとの温度差」に端を発します。
例えば調達部門は仕様書の細部にこだわらずコストダウンに走り、生産現場は実現困難な要望にも「できる」と安請け合いしてしまう。
お互いを「わかってくれているだろう」と思う心理的バイアスが、大きな溝となって後日に現れます。
未然防止の第一歩―兆候の早期発見とチームの構造改革
問題を「未然に防ぐ」最大のカギは、兆候を見極める仕組みづくりにあります。
「いつもの感覚」で見落としてしまうサインを、いち早くキャッチすること。
そのためには現場力だけでなく、コミュニケーション構造と情報インフラのアップデートが必須です。
兆候管理:「おかしいな?」を声に出す風土づくり
「何かおかしい」と感じたら、立場にかかわらず即座に発信する。
これを徹底するには、「ミスを隠さない」「言い出しやすい」空気の醸成が最優先です。
例えば、調達段階でサプライヤーの納期遅延が発生していそうな予感をキャッチしたとします。
その情報が全体にリアルタイムで共有され、設計・生産・営業各部門が迅速に対応策を協議できるなら、大規模な納期トラブルには発展しません。
プロジェクトごとのゴールとリスクの見える化
「このプロジェクトはなぜやるのか」「どんなリスクがあるか」。
関係者全員がその答えを共有できているかチェックしましょう。
リーダーが一方的に進めるのではなく、現場担当者にもリスク想定への参加を義務付け、定性的な懸念点もリストアップ。
その仮説をもとに定例ミーティングやチャットツールで小さな情報も漏れなく共有する仕組み化が重要です。
マネジメントの本質―現場目線と経営目線を両立させる
マネジメントと言えば「管理」「指示」「チェックリスト化」と捉える方も多いでしょう。
しかし真の実践マネジメントは、現場への共感と経営視点のバランスこそが重要です。
アンテナの高い現場リーダーの育成
失敗事例をそのまま放置せず、「なぜ起きたのか」を現場の目線で掘り下げます。
現場担当に失敗の原因を報告だけさせるのではなく、「自分は次から何をするべきか」まで一緒に考えさせる。
ベテランの「経験知」だけでなく、若手の新しい発想も引き出します。
定期的なケーススタディやチーム討議は、ノウハウの横展開と属人化排除のために有効です。
現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進
昭和から続く製造業ほど、DXはつい「掛け声倒れ」になりがちです。
派手なIT導入は不要ですが、「雫情報」を標準化してデータで蓄積し見える化するだけで、一気に業務体質が変わります。
実際に私が担当した現場では、紙の日報に手書きしていた「不具合メモ」を、スマホの簡単入力に置き換えるだけで、不良品流出数の検知時間が半分以下になりました。
デジタルツールの投資効果は「定量的なリスク管理」と「状況共有スピードの極大化」に現れます。
問題発生時こそ「立て直し」のプロセスを標準化する
どんなに仕組みを強化しても、トラブルゼロにはできません。
むしろ「問題発生時の初動対応力」がマネジメントの優劣を分けます。
事態を収束させるためのフレームワークやノウハウを、現場の目線で標準化すること。
これが、同種トラブルの再発を即座に防ぐ鍵となります。
迅速な「事実集約」と「全体共有」
問題発覚の第一歩は、現場の最前線から事実を時系列で引き上げることです。
ヒヤリング項目をあらかじめテンプレート化し、報告内容のブレを最小化。
集めた情報は「全員の目に触れる」プラットフォームに即時掲示します。
隠すことからは何も生まれません。
バイヤーや顧客も含め、透明性こそが信頼回復の近道です。
QCDバランスの再設定
トラブル時はあわてて納期短縮やコスト削減に走りがちですが、「今最も優先すべき品質レベルはどこか」を、推進チームで即時再設定します。
サプライヤーが参加できるなら、バイヤー目線・現場目線の双方で対策会議を持つのがベストです。
Q(品質)C(コスト)D(納期)、すべて完璧は現実的ではありません。
「優先順位」「妥協点」「顧客への説明ポイント」を合意するフローを習慣化しましょう。
昭和の現場にデジタルとラテラルシンキングを
現場の課題は、技術や体制だけでなく、思考の幅や柔軟性に大きく左右されます。
ラテラルシンキング(水平思考)は、従来の常識にとらわれない解決策を導き出す武器です。
なぜいつも同じ問題が発生するのかを問う
「なぜライン停止が頻発するのか」
「なぜ毎回サプライヤー選定で揉めるのか」
一見バラバラなトラブルも、本質を探れば「情報不足」「役割不明確」「責任転嫁」という根幹的課題につながっています。
これらについて、現場・管理職・バイヤーそれぞれの立場で「なぜ?」「他に選択肢は?」と複眼的視点で議論すること。
過去の延長ではなく、新しい枠組みやルールを積極的に議論することで、現場に根付いた昭和の殻を打ち破ります。
バイヤー・サプライヤー双方の「本音」をぶつける
バイヤーは価格や納期だけでなく、「現場がどんな悩みを持っているのか」を知っています。
サプライヤーも表面上の要件だけでなく、「現実的にできる・できない」を正直に言いたいはずです。
お互いに腹を割って対話できれば、未然防止の精度が劇的に高まります。
定期的な相互訪問・オンラインワークショップなどで「本音の壁」を超えた連携体制を築きましょう。
まとめ―現場の知恵と新しい枠組みで、問題プロジェクトからの卒業を
製造業の問題プロジェクトは、単なる現場ミスや計画性の欠如だけではなく、組織的な課題や思考の枠組みによって引き起こされ続けます。
昭和時代から続くアナログな現場文化に、デジタル基盤・情報共有・水平思考といった武器を加えましょう。
チームで危険信号を早目にキャッチし、迅速に対応フレームを回す。
バイヤー・サプライヤー・現場が「別々」ではなく「一体」となって共通ゴールを持つ。
その地道な改善を積み重ねることこそ、問題プロジェクトの未然防止・立て直しにおいて最も実践的で強力なマネジメント術です。
明日の現場の瞳が、より前向きに、よりイノベーティブに輝くことを願ってやみません。
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