- お役立ち記事
- 破壊力学と有限要素法による材料強度解析の実務活用ポイント
破壊力学と有限要素法による材料強度解析の実務活用ポイント

目次
はじめに:なぜ今、破壊力学と有限要素法なのか?
製造業の常識やルールが令和の時代になっても根強く受け継がれている現場では、今なお多くの判断が経験や勘、アナログの試験データに依存しています。
一方でデジタル技術やシミュレーション手法は年々進化し、製品不良リスクの低減や開発スピード向上、コスト削減に大きく寄与しています。
特に「破壊力学」と「有限要素法(FEM)」の実務知識は、新たな発想でものづくりに革命を起こす技術として、現場の第一線で不可欠なものとなっています。
この記事では、製造現場で20年以上にわたり培った経験を基に、破壊力学と有限要素法がどのように材料強度解析に活用されているのかについて、実践的な視点で解説します。
昭和から続く慣習と、デジタル時代の最先端手法がどのように共存し、これからの現場がどこを意識すべきかについてもお伝えします。
破壊力学とは何か?現場視点で捉え直す
材料強度解析のキモとなる理論
破壊力学とは、材料や構造物の微小なき裂や欠陥が、どのようにして進展し、最終的に破壊に至るかを明らかにする理論体系です。
従来の設計現場では、引張試験や高温試験など「全体の限界強度」を求める手法が中心でした。
しかし実際のトラブルは、ほんの小さなクラックや応力集中、溶接部の内部欠陥といった「微細な弱点」がきっかけとなり、突発的な破壊事故につながります。
現場で起きる典型的な例として、繰り返し荷重のかかる部品における疲労破壊や、溶接構造物の内部欠陥によるクラックの進展があります。
こうした現実の”あるある”を定量的に予測・評価するには、破壊力学の知識が不可欠です。
破壊力学の具体的な活用シーン
– 自動車・産業機械部品の設計時に「仮想欠陥」を想定して最悪ケースを計算
– 客先クレーム(現品事故)における原因解析:なぜ破断に至ったかを遡及的に評価
– 新材料・新工法による製品化時の初期リスク評価
これらは従来の全体強度判断や単なる経験則では対応しきれない領域であり、破壊力学の登場によって現場の安全性・信頼性レベルが大きくアップしました。
有限要素法(FEM)の本質と現場適用のカギ
有限要素法の概要と製造業での位置づけ
有限要素法(FEM:Finite Element Method)は、複雑な形状・構造物を小さな「要素=パーツ」に細分割し、それぞれの力の伝わり方や変形を数値的に解析するシミュレーション手法です。
事務系の方からは「専門家だけの世界」と思われがちですが、今ではノートパソコン1台で解析可能なレベルまで進化しています。
設計者や生産技術者、品質保証、時には調達担当やバイヤーも「FEMの基礎結果が読める」ことが競争力につながる時代です。
FEMの導入により、
– 実物試作の回数削減(コスト・納期短縮)
– 信頼性保証(エビデンスの提供、品質トラブル回避)
– 軽量化・コストリダクション提案(ムダ肉削り、機能最適化)
など、ものづくり全体のPDCAサイクルが効率化されつつあります。
現場が苦労するFEM実務の落とし穴
有限要素法は「魔法の万能解析ツール」ではありません。
実務でよく陥るのが、以下のようなポイントです。
– モデル化の前提条件が現実とズレている
– 境界条件や荷重条件のミスに気づかず、ありえない結果を信じてしまう
– メッシュの細かさや材料パラメータの選定など、”現場感覚”と”理論”とのギャップ
このため、FEM解析は現場の経験知とエンジニアの創意工夫が不可欠です。
たとえば、「ねじ1本の締め付けトルク」「ひずみゲージで得られる応力レベル」といった、現場で得た肌感覚を入力データや解析設定に活用することが、信頼できるシミュレーション結果に直結します。
破壊力学×有限要素法:相乗効果で進化する強度解析
FEMによる応力解析の先にある“破壊”の評価
近年はFEMで得られる「応力集中部位」をピックアップし、その領域のき裂進展や破断限界を、破壊力学理論で評価する手法が主流になりつつあります。
たとえば、
– FEMで溶接部の応力分布を解析→高応力点を特定
– 破壊力学のパラメータ(K値、J積分等)を算出
– 欠陥を仮定して、残寿命や許容き裂長などを見積もる
といった“ハイブリッド手法”が、実務現場の高度な安全設計・信頼性評価には不可欠です。
現場でよくある解析事例
– アルミや高張力鋼など軽量材料の新規適用品で、クラック進展解析を行い適正板厚や溶接手法を選定
– 顧客・バイヤーから求められる「数字で示す安全性保証」に、FEM×破壊力学のレポートを提示
– サプライヤーとの交渉時、スペックダウンやコストリダクション提案の根拠データとして活用
これらは、単なるカタログデータや従来のマージン設計では対応できない、“数値で証明する”設計・品質管理手法です。
昭和的な現場に根付く「課題」と今後の進化方向
アナログ慣習とデジタル解析手法のギャップ
多くの現場ではいまだに「長年の勘や経験」「先輩からの言い伝え」が最強のツールとして幅をきかせています。
ところが、複雑化・高機能化する製品、さらには海外顧客・グローバルバイヤーの要望に応えるには、数値による根拠提示が必須になりつつあります。
たとえば、
– 「昔からこれで壊れなかったから大丈夫」という感覚的判断
– 「現物が壊れるまで実験する」ために膨大な製作と工数
これでは新規材料や新工法へのチャレンジ、高スピードな開発競争に対応できません。
破壊力学とFEMを取り入れることで、こうしたアナログ的な課題への突破口が開けます。
今後の実務者が目指すべき方向性
1. アナログ現場知とデジタル解析の融合
現場の肌感覚や経験談もFEMや破壊力学解析の「前提条件設定」「データの妥当性確認」に活かすことで、実務に即した“使える解析技術”となります。
2. サプライヤー・バイヤー間の共通言語
納入側・調達側双方が強度解析の基礎を理解し、「欠陥やリスクも織り込んだ安全設計」の交渉・合意がしやすくなります。
これにより、コスト、品質、納期のトリプルバランスが高次元で実現できます。
3. 資格・知識の標準化と若手への継承
解析ツールの高度化や自動化が進む中で、現場実務者が破壊力学・FEMの基礎理論や使いどころを体系的に学ぶことが求められます。
また、OJTだけでなく「社内解析コンテスト」「教育プログラム」の導入などで、若手エンジニアのスキル底上げを図ると良いでしょう。
まとめ:革新的な現場づくりのために
破壊力学と有限要素法は、単なる理論やツールではありません。
アナログ全盛の昭和的現場から脱却し、トラブル未然防止、納期・コスト短縮、革新的な設計提案にまで貢献する“現場の武器”です。
今後は
– 現場実務と解析技術のハイブリッド人材の育成
– サプライヤー⇔バイヤー間での解析結果を活用した合意形成
– 若手へ「現場で使える解析ノウハウ」の継承
こうした取り組みが事業の競争優位につながります。
昔ながらの“なんとなく安全”から、“数値で根拠ある安全・安心”へ。
ものづくり現場の未来は、破壊力学と有限要素法が切り拓きます。
最先端の解析技術を、現場感覚と融合させてください。
そして、日本の製造業が世界で選ばれるための次の一歩を、共に歩みましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)