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投稿日:2026年2月1日

NACE MR0175腐食対策材料選定の注意点

NACE MR0175腐食対策材料選定の重要性

NACE MR0175は、石油・ガス産業において腐食環境下で使用される金属材料の耐硫化水素応力腐食割れ(SSC)に関する規格です。

この規格に適合した材料選定は、安全・品質・コストの観点から、非常に重要なテーマです。

特に現場主義が根付いた日本の製造業では、従来の経験則や社内基準だけではカバーしきれないリスクが近年顕在化しつつあります。

では、なぜNACE MR0175が求められるのか。

腐食環境下での失敗事例やその背景を交えながら、その重要性について解説します。

NACE MR0175とは何か

NACE MR0175(ISO 15156)は、主に石油・ガス田で使用される金属部品が、硫化水素(H2S)を含む湿潤環境下で、SSCなどの破壊に対して一定の耐性を持つことを規定しています。

化学組成、熱処理、強度、硬さなど、細かな材質要件が定められており、油井管やバルブ、継手などの購入仕様に必須の規格です。

石油・ガス業界だけでなく、下流プラントや化学メーカーなど、多くの産業でグローバル認証基準として認識されています。

なぜ「SSC対策」が重要なのか

硫化水素(H2S)は金属材料と反応すると、材料内部に水素を拡散させ、局所的な亀裂を生じさせることがあり、これをSSC(Sulfide Stress Cracking:硫化物応力腐食割れ)と言います。

SSCは、外観上の異常が確認しづらく、突然破裂や漏洩といった重大事故に直結するリスクをはらみます。

過去には、大手化学プラントで配管のSSC破損による爆発事故も発生しており、人命・環境・ブランドイメージの損失が甚大です。

つまり、NACE MR0175遵守は想定外の大事故防止保険ともいえるのです。

材料選定時に陥りやすい現場の「落とし穴」

NACE MR0175材料選定では、単に「認証取得品を使えば良い」という単純な話ではありません。

実際の調達現場では、アナログ的な思い込みや情報伝達ミス、さらに人手不足による確認漏れなど、多くの落とし穴が潜んでいるのです。

スペックの「コピペ文化」と最新化の遅れ

多くの製造業では、過去の設計図面スペックや購買仕様書を“前例踏襲”でコピー&ペーストしがちです。

しかし、NACE MR0175は年々改訂されており、材料ごとの許容硬度値や、処理法の適合可否が細かく変わります。

最新規格を追いきれていない企業では、知らず知らずのうちに不適合リスクが高まっているケースが見受けられます。

サプライヤー任せの危険性

「NACE対応のものをお願い」という丸投げ発注も多いのが現状です。

しかし、サプライヤーによっては“自主規格”や“海外仕様”のまま納入している場合も珍しくありません。

その結果、検査時に発覚し納期遅延・再調達に発展した、という失敗談も多々あります。

したがって発注者自身が最低限の規格理解を持ち、要求水準や必要ドキュメント(材質証明や工程記録)の明確化が不可欠です。

調達コストと信頼性のトレードオフ

NACE材料は一般鋼材より価格が2割~5割高いこともしばしばで、生産現場では「コストダウン圧力」と「品質要求」の板挟みに悩むことがよくあります。

しかし、「安いものを優先して事故やトラブル時に数千万円・億円単位の損害が発生」するリスクに、経営責任者も現場リーダーも直面しつつあります。

コスト“だけ”の目線でなく、「全体最適・サプライチェーン最適」を常に意識した意思決定が求められます。

現場で使えるNACE材料選定の注意点

では、実際に材料選定・調達を進めるうえで、何をどうチェックすればよいのでしょうか。

バイヤー目線、サプライヤー目線、管理者目線で具体的な注意点を紹介します。

1. 最新規格と要求スペックを正確に確認

NACE MR0175は毎年のように細かな見直しが行われます。

購買仕様書・技術標準類は定期的に最新化し、「いつのバージョンに基づくか」を明記しましょう。

また、設計仕様書・図面と連動して材料仕様、熱処理条件、硬度要件、保証証明類(ミルシート、認証書)を揃える必要があります。

2. サプライヤーには「証明能力」を求める

多品種少量生産や試作・変種変量製造が増えるなか、サプライヤーの工程管理やドキュメント管理が追いついていないケースもあります。

NACE MR0175に対応するためには、使用材料ロットごとの材質証明書・硬度検査成績書・熱処理履歴などの提出要求が原則です。

一方、「出せるサプライヤー/出せないサプライヤー」があります。

単に価格だけでなく、証明能力の有無を事前確認したうえでパートナー選定を行いましょう。

3. 組織を超えた情報共有と連携

材料選定には設計、調達、生産、品質、保全部門など、複数部門の協働が不可欠です。

現場の改善活動やQCサークルなど、昭和から続く“横ぐし連携”を上手く活用すると、実際の現場ナレッジや失敗事例が活きてきます。

組織の縦割り意識を排し、「なぜNACE要件が必要なのか」「どんなチェックポイントがあるのか」を社内で愚直に共有し合う文化を醸成したいものです。

「昭和的」風土からの転換が競争力を生む

日本の製造業では「現場力」や「現物確認」が美徳とされてきた半面、膨大な紙文化や“言った言わない”の口約束文化が根強く残っています。

NACE MR0175のような高い信頼性基準を満たす現場力を活かした意思決定のためには、このアナログ的な常識から脱皮する必要があります。

「現場ナレッジ×デジタル管理」の融合

材料判定や記録類の管理は、ベテラン現場人の直感に頼りすぎず、デジタルデータとのハイブリッド運用が理想です。

例えば
– ミルシートや熱処理記録の電子ファイリング
– 材料ロットNo.管理のシステム化
– 検査記録の現場スマホ入力

など、小さなデジタル化から始めるだけでも、「証拠と履歴」が格段に確実になります。

購買部門主導で「紙から電子へ」を推進すれば、不適合トラブルや監査ストレスの大幅削減につながるのです。

「例外(特例)運用」の排除

「今回は納期優先で一時的に一般材を使う」「書類はあとから出してもらえばいい」という“場当たり文化”も根強く残っています。

しかしNACE MR0175分野において、こうした例外運用は致命傷となります。

例外対応は責任の所在が曖昧になりやすく、口頭伝達だと抜け漏れが発生・再発します。

結果的に現場担当者が個人責任を問われ、モチベーション低下→技術伝承停滞につながる負のスパイラルとなります。

規格遵守を「必ず守る」組織体制・標準運用を徹底しましょう。

未来への提言:NACE MR0175対応力が競争優位になる

製造業の現場を知ると、「これまで通り」「前例通り」「ベテラン任せ」で乗り切るのは限界です。

特にグローバル展開・海外サプライチェーンとの融合が進む現代では、NACE MR0175レベルの腐食管理対応が「営業力」「信頼力」そのものとなります。

材料選定・証明管理を含めた「サプライチェーンマネジメント」そのものが、日本企業の新しい収益エンジンとなり得るのです。

バイヤーに求められる新しい資質

単なる「価格折衝屋」ではなく、エンジニアリング知識・グローバル規格知識・サプライヤーオーディット能力など、多面的な知見を備えた「プロフェッショナルバイヤー」に進化することが求められています。

また、若手バイヤーにも調達現場を肌で学ばせ、「なぜNACE規格が大事なのか」を現場目線で徹底的に体感させる教育が必要です。

サプライヤーがバイヤーの本音を読み取る時代

サプライヤー側も「価格や納期だけで評価される時代」から、「どこまでバイヤー基準を理解し、要求事項に応えられるか」が生存競争の軸になります。

例えば
– NACE MR0175仕様の可否
– 証明書類のスピード対応
– 問い合わせに対する誠実な技術説明力

等、きめ細かな“現場交流力”がこれまで以上に重要視されます。

「昭和的美学」を活かしつつ、新しい挑戦を

「現場主義」「人づくり」「改善文化」など、昭和日本のものづくり現場に息づく遺伝子は、依然として強みです。

しかし、今回紹介したNACE MR0175対応をはじめ、現場の知見をデータや標準化・オープン化によって新しい地平へ拡張することが不可欠です。

現場最前線で悩む方、バイヤーを志す方、サプライヤー担当者の方——皆さんの一歩が、未来の製造業競争力をつくります。

まとめ

NACE MR0175に適合した腐食対策材料の選定は、“人と人” “現場と理論” “アナログとデジタル” “サプライチェーン全体最適”が問われる時代です。

伝統の強みと新しい知識・ツールの融合があってこそ、グローバル競争時代で選ばれる企業・人財となります。

明日から使える具体的なポイントを、ぜひ現場で実践してみてください。

そして、それが日本の製造業全体の進化 —— ひいては世界に通用する現場力の源泉になることを願っています。

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