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フリータイム延長交渉とデマレ抑制で繁忙期のコスト増を防ぐ港湾戦略

目次
序章:製造業と港湾物流 – 変動期に求められる戦略的アプローチ
製造業の現場では、製品開発や生産技術の進化だけでなく、調達・物流の最適化が競争力の源泉になります。
特に近年は、世界情勢の変化や自然災害、そしてCOVID-19パンデミックなどが複合的に絡み合い、サプライチェーン全体に不確実性が増しています。
この中で、港湾物流の効率化やコストコントロールは、かつてないほどの重要性を持つようになりました。
特に、「フリータイム延長交渉」と「デマレ抑制」を軸にした港湾戦略は、今こそ製造業のバイヤーや調達担当者、サプライヤーにとって押さえておきたい実践テーマです。
本記事では、現場経験と業界の最新動向を交えながら、アナログな港湾慣行とどう向き合うか、そして具体的な繁忙期対策について掘り下げていきます。
そもそもフリータイムとデマレとは何か
フリータイムとは:港湾物流の基本概念
フリータイムとは、コンテナが港に到着してから無償で保管できる期間を指します。
通常、輸出入の貨物は船会社や現地港によって定められた一定期間、追加料金(デマレやディテンション)が発生せずにコンテナヤードなどに留置することができます。
この期間内にコンテナの搬出入や通関手続きを完了することが基本です。
しかし、受渡処理や検査、社内物流などで想定外の遅延が発生することも珍しくありません。
デマレとは:港湾コストの代表例
デマレージ(通称デマレ)は、フリータイムを過ぎてなお港湾内にコンテナを留置した場合に発生する追加費用です。
特に、繁忙期や通関遅延、トラック手配難などが原因でフリータイムを超過することが多発するため、繁忙期のコスト管理を難しくする一因です。
結果として一つのコンテナごと、1日数千円から数万円の追加コストが積み重なり、最悪の場合は利益を圧迫する甚大なロスにつながりかねません。
繁忙期の“現場あるある” – フリータイム・デマレ問題の実態
繁忙期を迎えるたびに高騰する港湾コスト
春先の新年度需要、秋冬の年末商戦、あるいは中国の春節休暇前後など、製造業の港湾物流は周期的に混み合います。
このタイミングでは港の受け入れキャパシティもひっ迫し、トラックや通関業者の人員も不足気味に。
そのため、「予定通りに搬出できない」「社内処理にも滞留が生じる」といったケースが急増します。
この積み重ねが結果的にデマレ費用の高騰を招き、せっかく原材料や製品を安く仕入れても、物流コスト増で台無しになってしまう現場の悩みはつきません。
昭和時代からの“アナログ慣行”が根強い理由
なぜ、いまだに港湾業界には紙ベースでの情報授受やアナログな手配が多いのか。
その背景には、船会社や貨物利用運送業者、通関業者、それぞれの業界ごとのしがらみや、長年のローカルルールが深く根付いているからです。
「いつもA社に口頭でお願いする」「◯◯港は連絡がFAXのみ」など、デジタル化以前の慣習が今なお強く残っています。
このことが、データをリアルタイムで共有できず、現場どおしのコミュニケーションミスや情報遅延を引き起こし、フリータイムの有効活用やデマレ発生のリスク要因となっています。
フリータイム延長交渉のポイントと戦略
延長交渉の“切り札”を持つことの重要性
まず、バイヤーや物流担当として必須なのが、「事前交渉によるフリータイム延長」です。
港湾によっては、標準で3日〜7日のフリータイム設定が一般的ですが、事前に船会社やフォワーダーに依頼し、交渉によって10日、14日と延長してもらうことが可能です。
ここでの交渉材料は、単なる「お願いします」だけでは通じません。
「年間実績や過去の取引累積量」「今後の増加見込み」「複数コンテナまとめた大口案件」など、“相手にとっても利益になる約束”とセットで提示するべきです。
現場の信頼関係の積み重ねがモノを言う
船会社やフォワーダーも無尽蔵にフリータイムを延ばせるわけではありません。
他の荷主との船腹確保などでも需給調整が必要だからです。
そのため、普段からのコミュニケーション、無理な要求ばかりせず現場の苦労も理解した上で、信頼関係を構築しておくことが結果として好条件を引き出す最大のポイントです。
また、「なぜ延長が必要なのか(工場の生産キャパシティ、通関スケジュールの特殊事情)」までしっかりロジカルに説明できれば、より理解が得やすいです。
デマレ抑制に向けた実践策 – 制度・現場・デジタルの三位一体
制度改善と社内ルールの見直し
まず見直すべきは、受け入れから搬出までの社内フローの明確化です。
製造業の現場では、「誰が何をいつするか」「通関手続きはどこで詰まるのか」「納品トラックの配車可否」など、ボトルネックが意外と属人的・アナログに管理されています。
デマレ発生状況をKPI化し、超過コストを数値で見える化することで、組織的な意識改革を促します。
また、「搬出可能日直前まで待ってから手配」という従来型の習慣は、繁忙期リスクに極めて弱いため、先手先手で搬出枠の確保・通関指示を出す仕組みを設けることが重要です。
現場力強化 – 社内外連携の“ワンチーム化”
港湾物流の現場は、多くの部門や外部業者が複雑に関与しています。
自部署だけで最適化を図ろうとしても、肝心のトラック不足や通関業者との連絡ミスで結局デマレが発生することは“あるある”です。
調達・生産・物流・営業部門を横断する「港湾コスト管理プロジェクト」の設置や、定期的な情報共有会議で繁忙期スケジュールと発生予測を“先読み”する体制を作るのがカギになります。
また、サプライヤーや協力会社にも「来期のピーク時期予測」「必要コンテナ台数」「調達リードタイム変動」などを積極的に伝えてもらうことで、港湾利用の“山”を分散しやすくなります。
デジタル化の推進 – 二律背反の解決策
紙ベース、Excel手入力が未だ主流の港湾連絡。
その原因は、各企業のシステムや業界のデジタルリテラシーに大きな差があるためです。
とはいえ、ここ数年でSaaS型のクラウド物流サービスや、輸出入進捗を可視化する「ダッシュボード」ツールが急速に普及してきました。
これらを使って、現場ごとの“温度差”を極力減らす工夫がデマレ抑制の新しい地平を拓いていきます。
もちろん、最初から100%ペーパーレス化するのは難しいですが、せめて情報共有や進捗管理部分だけでもエクセルからSaaSアプリに乗り換えるだけで、意思決定スピードと現場対応力は飛躍的に上がります。
業界動向と港湾戦略の未来 – ラテラルシンキングのすすめ
世界の港湾はどう“革新”しているのか
グローバル製造業の集積地、例えば中国沿岸都市や東南アジアの主要港では、高度な自動化やAI活用による効率化が進んでいます。
無人搬送車やIoTセンサーでリアルタイムにヤード状況を監視し、船会社・荷主・通関業者のデータを一元で連携させる「スマートポート」化が加速中です。
一方、日本の伝統的港湾はいまだに“現場主義・人海戦術”が根強く、変化のスピード感は遅いのが現実です。
しかし、気候変動や人手不足、グローバル調達の多様化という追い風をうけ、いよいよ本格的な変革期が到来しようとしています。
ラテラルシンキング – 型にはまらない発想の重要性
「デマレは仕方ない」「港湾物流はアナログで当たり前」と思い込んでいませんか。
これまで“常識”とされてきた慣行も、実は外の世界ではすでにイノベーションが進行中です。
たとえば、サプライチェーン上流から港湾物流のボトルネックをデジタルで可視化し、ピーク時の混雑予測にAIを使う。
あるいは、複数社で“港湾シェアリング”のような共同物流を起ち上げて、繁忙期のコスト変動を平均化する仕組みを導入するといった、横断的発想がこれからのカギになります。
困難を“定数”とせず、新しい視点で現場の仕組みを組み替えていく覚悟が問われる時代なのです。
まとめ – 今日からできる港湾戦略のアップデート
繁忙期のコスト増を抑えるためには、単なるコストダウン交渉だけでは不十分です。
フリータイム延長交渉を“中長期戦略”と位置付け、デマレ抑制のための社内外連携と現場ルール見直し、そしてデジタル活用による情報鮮度向上が求められます。
さらには、業界慣行を“当たり前”とせず、ラテラルシンキングで新たな打ち手やみんなで持てる“共通ビジョン”づくりにも挑みましょう。
バイヤーを志す方にはもちろん、サプライヤーでも「お客様(バイヤー)が何を求めているか」視点を持つことで、より本質的な改善提案や信頼構築にもつなげられます。
港湾戦略こそ、製造業のダイナミズムを支える最前線です。
現場主義と先端テクノロジー、双方の知恵を活かし、激変時代を勝ち抜いていきましょう。
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