投稿日:2025年10月7日

プリント柄のかすれを防ぐスクリーン目詰まりと粘度管理手法

はじめに:プリント柄の「かすれ」問題はなぜ発生するのか

製造業の現場で日々直面する「プリント柄のかすれ」。
印刷工程の品質トラブルの中でも、スクリーン印刷の目詰まりとインク粘度管理は大きな悩みの種です。

昭和から受け継がれる現場の知恵と最新テクノロジーが交錯するこの分野では、「なぜ目詰まりや粘度問題が発生するのか」「どうすれば未然に防げるのか」という実践的なノウハウが極めて重要です。

この記事では、ニッチで現場的な視点も交えつつ、グローバル化・自動化の進む製造業における課題感や解決の道筋を、20年以上の現場経験を活かして詳しく解説します。

スクリーン印刷の現場でよく見られる「かすれ」とは?

なぜ印刷面が均一にならず、かすれが発生するのか

スクリーン印刷の「かすれ」は、インクがスクリーン(メッシュ)を均一に透過できず、印刷面で色ムラや線切れ、ドット抜けが発生する現象です。

主な原因は以下の通りです。
– スクリーンの目詰まり
– インクの粘度変化(高粘度化・低粘度化どちらも)
– スキージ圧や角度、スピードの不適正
– 印刷環境(温度・湿度)の変化

とりわけ「目詰まり」と「インク粘度」の2点は、手作業主体の昭和型アナログ現場から、自動化設備が進んだ最新工場に至るまで、形を変えて根強い課題となっています。

スクリーン目詰まりの原因を深掘りする

インクフィルムの厚みと粒子径から見た目詰まり

インクの顔料粒子サイズがメッシュの開口径に対し大きすぎる場合、スキージの往復時に開口部へ物理的に詰まりが発生しやすくなります。

特に近年は「高精細・微細パターン印刷」の要求が高まり、従来のメッシュ(100〜200メッシュ)から、250〜400メッシュと極細化傾向にあります。
それに応じたインク選定(微粒子化)や粘度調整が必要不可欠となっています。

乾燥・皮膜化による目詰まり

印刷現場は一般に膨大な稼働時間に晒されるため、スクリーン上のインクがゆっくりと揮発・乾燥し、開口部で薄皮膜を形成しやすい環境です。

特に有機溶剤系インクを使用する場合、換気や温度管理が不十分だと皮膜が一気に厚くなり、目詰まりを誘発します。

また、薄皮まではいかなくても、インクの粘度が経時的に変化し「徐々に目詰まりを起こす」といった、見えにくい課題もあります。

現場に根付く「洗浄の文化」の罠

長年の経験則から、かすれが起きた際はまず「スクリーンを洗浄する」のが現場の常識となっています。
しかし、このメンテナンスが不十分だと、インクの残渣や溶剤がスクリーンに蓄積し、かえって目詰まりを促進することがよくあります。

特に自動化ラインでは、1日1回・2交代の目視洗浄が限界というケースも多く、日々の点検ルーチンが「昭和の感覚」のままで運用されている現場も散見されます。

インク粘度管理の失敗事例と成功パターン

粘度上昇の見逃しが連鎖トラブルに直結

スクリーン印刷インクは、ごくわずかな溶媒揮発や温度変化でも粘度が敏感に変化します。
「出始めは綺麗に出るが、1時間ほどで急にかすれだしてしまった」といった経験はありませんか?

原因の多くは、現場でのインク供給時や補充時に粘度を測定しないこと。
あるいは、「勘と経験」頼みで増粘剤や溶剤を追加し、逆に最適ゾーンから外れていたという事例です。

現場でできる工夫:粘度測定の自動化とデータ蓄積

現在は、回転式粘度計やカップ式粘度計など、安価で現場設置できるツールも登場しています。
「ロットごとに必ず計測し、標準値を見える化」しておくのみならず、「経時変化」もグラフ化することで、未然に大きな異常を察知できます。

ここにITツールやIoTセンシングを持ち込めば、「工場の属人化」を脱した科学的な粘度管理へと大きく一歩踏み出せます。
この流れは、デジタル化が進まない日本の製造業の現場でこそ、差別化と競争力強化の鍵になるのです。

サプライヤー・バイヤー間で起きる「仕様ずれ」問題

バイヤー(調達側)は「インクは決まったスペックのものを納品してほしい」と考えがちですが、実際の工場ラインでは「朝と午後、夏と冬」でインク挙動が大きく変化します。

サプライヤーはいかに「標準レシピ」を守っても、実際の現場条件にマッチしないことがあるため、「現場の運用現実」と「調達担当の理想」とのずれがトラブルの温床になります。

この溝を埋めるには、双方が歩み寄り、実際の使用環境で「どう動くか」のデータ共有と知恵の融合が不可欠です。

業界動向:デジタル化・自動化の潮流と「かすれ」対策

目詰まり・粘度問題はIoTの力で根絶できるのか

日本の製造業は、アナログ感覚が根強く残る分野も多い一方で、IoTや自動監視カメラ、AIによる画像認識など、先端技術の導入も徐々に進んでいます。

– 目詰まり自動検出カメラ
– 粘度を常時計測し、自動補正するディスペンサー
– 印刷環境温湿度の自動記録・制御

これらの設備投資によって、従来のような「経験と勘」だけに頼らないロス削減と品質安定が可能になりつつあります。

それでも抜け出せない「昭和の現場」的ジレンマ

とはいえ、現実には「コスト重視・熟練作業員による現場合わせ」を重視する老舗工場も多く、完全自動・完全データ駆動にはまだ隔たりがあります。

– 小ロット・多品種生産による頻繁な切替
– 経験者の減少と若手育成の遅滞
– 設備投資費用の確保難

こうした現場事情を理解した上で、「今すぐできる工夫」と「将来的なデジタル化」のバランスを見極めた対応が必要です。

かすれトラブル防止のための具体的アクションガイド

スクリーン目詰まり対策 ベストプラクティス

– スクリーンの選定:インク粒子径に応じて最適なメッシュサイズを選ぶ
– 洗浄頻度アップ:自動洗浄装置の活用、1ロット毎の簡易洗浄ルール設定
– 開口部の表面処理:撥水・撥油処理でインクの滞留を減らす
– スクリーン交換サイクルの明確化と予防交換

インク粘度管理 実践ポイント

– 粘度標準管理表の作成と全員周知
– 粘度測定ツール(粘度カップ・粘度計)と点検記録の定着
– 温度・湿度環境を一定化する空調管理
– データを蓄積し、異常時の迅速な原因特定と再発防止

工程管理プロフェッショナルがやっていること

– 「なぜかすれるのか?」の五現主義(現場・現物・現実・現認・現況)徹底
– バイヤー(調達)とサプライヤーの密な二者三脚、現物による相互テスト
– かすれトラブル発生率、再発率の定期レビューと共有
– 最新の業界動向や技術トレンドのウォッチと即時反映

サプライヤー/バイヤーが知るべき「現場感覚」の真実

サプライヤーは製造現場の実態を見抜く

– どんなに最適化したインクでも、「現場条件(作業員の作業速度、ライン稼働温度)」で変化する
– 納品時の状態<実稼働時の状態を重視した共同開発姿勢が信頼につながる

バイヤーは「現場の苦労」に寄り添うことで価値を生み出す

– スペックだけでなく、運用実態・応答性・安定性の評価を重視する
– サプライヤーの改善提案やフィードバックを吸い上げ、標準化・規格化へ誘導する

まとめ:かすれトラブルの根絶には連携と変化が不可欠

プリント柄のかすれ問題は、品質保証・生産効率・コスト競争力、いずれの観点からも、放置できない永遠のテーマです。

現場・調達部門・サプライヤーそれぞれが単独で最善を尽くすだけでなく、「相互理解と連携」「最新技術と昭和的な現場勘の融合」が、持続的な品質向上のカギを握ります。

まずはご自身の現場で、今日から実践できる「目詰まり防止」や「粘度管理」の小さな工夫を始めてみてはいかがでしょうか。

そして、昭和から令和へ——現場目線で地道に見直し続けることが、揺るぎない製造現場力へとつながります。

製造業に携わるすべての方が、「根強いかすれ問題」に科学的・現場的に立ち向かい、新たな価値を創造されることを願っています。

You cannot copy content of this page