- お役立ち記事
- トランジットビザ不足で陸送貨物が国境通過できないケースの予防策
トランジットビザ不足で陸送貨物が国境通過できないケースの予防策

目次
はじめに:製造業現場が直面するトランジットビザ問題
世界規模でサプライチェーンの複雑化が進む中、陸送貨物が国境を越える際に不可欠なのが「トランジットビザ」です。
トランジットビザは、輸送トラックの運転手や同乗者が迅速かつ合法的に他国へ物資を届けるために不可欠な存在です。
しかし、昨今の地政学的リスクや各国の出入国管理強化、さらにはコロナ以降の人員不足といった要因が重なり、トランジットビザ不足が製造業全体に深刻な影響を与えています。
ビザ不足が原因で貨物が国境で足止めを食らい、生産計画や納品スケジュールが根底から崩れるケースが増えています。
特に日本でも目立ち始めたこのリスクには、現場感覚での実践的な予防策が求められています。
なぜトランジットビザ不足が起こるのか? ─ 現場目線で原因を探る
1. ビザ発給の遅れ・煩雑な手続き
多くの国で、突然の政策変更による発給停止や審査の厳格化が起こっています。
また、通関業務のデジタル化が進んでいない国や、担当窓口での人員不足により発給までのリードタイムが読みづらい現実があります。
2. 陸送キャリア自体の担い手不足
トラックドライバーの高齢化と若手不足は日本だけではありません。
海外協力会社に委託している場合、ドライバーへの資格周知や申請漏れ、防犯リスクに対する適切な教育が追いついていないケースも多く見受けられます。
3. 想定外の国境規制強化
戦争や感染症の拡大、政変などの社会情勢により、突如として陸路の国境が閉鎖されたり、通過ビザの一時停止、制限が発生します。
アナログな慣習が根強い地域では、公式発表ではなく現地ライトな情報網頼みになることも珍しくありません。
4. 発注側(バイヤー)の準備不足
バイヤーや大手メーカー側が、現地ローカルルールや出入国動向に対するリスク管理、必要書類の事前精査を怠ることも根本的な原因の一つです。
書類ミスや情報欠損によるビザ申請の差し戻しは頻発します。
アナログ志向が残る業界の「落とし穴」とは
昭和から続く製造業では、現場力こそが成否を分けるとの認識が色濃く残っています。
実際、「現地に任せれば大丈夫」「昔ながらの手順でやれば回る」といった意識が抜けきれていません。
ところが、グローバル化・デジタル化が進んだ時代にこうした楽観主義は通用しません。
トランジットビザの発給状況や各国の出入国規制、渋滞・遅延情報などを、本社や拠点ごとにリアルタイムで共有できていない現場は、予見しやすいリスクさえ躱せなくなっている現実を直視するべきです。
現場で実践できるトランジットビザ不足の予防策
1. 輸送ルートとビザ要件の「可視化」と更新の習慣化
まず取り組むべきは、主要な輸送ルートごとのビザ要件を一元管理・視覚化し、法規制や現地事情の変化を定期的にアップデートする仕組みづくりです。
グーグルスプレッドシートや社内イントラの掲示板などでも構いません。
例えば「A国国境~B国通過で必要なビザ」「申請窓口と連絡先」「発給リードタイム」などを、常に最新版で共有できる体制を作ります。
海外サプライヤーや物流パートナーにも、日本語と現地語の両方で周知し、ミスや滞留の芽を早期につぶすことが大切です。
2. ビザ申請プロセスの標準化とダブルチェック体制の確立
どの国を経由するかによって必要な書類や担当部門が異なります。
手書き・FAX・郵送といったアナログ手続きが今も残る現場だからこそ、わかりやすいチャートやフォーマットを用意し、担当者以外でも全体の流れを把握している状態を築くことが重要です。
ダブルチェック、トリプルチェックの徹底は手間と思われがちですが、ビザ不足による数百~数千万円単位の遅延損失に比べれば、予防コストとしては極めて安価です。
習慣化すれば必ず現場力の底上げにつながります。
3. 「もしもの場合」の複数ルート確保と柔軟な代替提案
今や、ひとつのルート・業者だけに頼るリスクは極めて大きくなっています。
現場担当者とともに、代替ルートや追加業者を常にリストアップし、普段から簡単な仮発注やリハーサルを行いましょう。
また、調達・購買部門主導で「製品の一部だけ航空便に振り替える」「倉庫でのバッファ在庫を見直す」といった、ゼロイチでなく”グラデーション型”のリスクヘッジが求められます。
4. アナログならではの「電話と人脈」による情報ネットワーク復権
デジタル化は加速していますが、国境周辺の情報や急な法改正、現地の「今」の状況は、現地ドライバーや通関業者、協力サプライヤーからのナマ情報が最も早く・正確です。
日ごろから現地担当者との信頼関係を築き、「何かあればすぐ電話する」「最新情報はグループLINEで」といった、アナログなネットワークの強化が、危機時にものを言います。
5. バイヤーとサプライヤーのリスク共有意識の醸成
ビザ不足による納期遅延は、単に一次サプライヤーや物流業者の責任とは限りません。
発注側バイヤーも、「どこまで現場負担を減らせるか」「代替方法を一緒に考える」という姿勢が不可欠です。
例えば、「トランジットビザ取得の代行費用を一部負担する」「予備日や在庫を追加計画に組み込む」といった具体的な協力策を契約段階から織り込んでおくことで、現場レベルでもスムーズな施策実行が期待できます。
現場経験者が語る、トランジットビザ問題の真の怖さと重要性
私自身、海外生産拠点から日本向けに納品していた際、トランジットビザの手配漏れで2日間も国境でトラックが立ち往生し、生産ラインが完全にストップした経験があります。
付帯コスト(追加倉庫費用、スタッフの残業、顧客へのお詫び対応…)は数百万円にも膨れ上がりました。
何より、現場スタッフの士気とお客様の信頼を一瞬で失うリスクがあります。
「自分だけは大丈夫」「現地に任せれば平気」と思っていた慢心が、最大の敵です。
陸送の小さなミスが、会社・現場全体の信用毀損となりかねないのです。
これからの製造業が目指すべきサプライチェーン
トランジットビザ問題は、グローバル企業だけの話ではありません。
今後、海外サプライヤーとの取引や越境ECが加速する中、中小・中堅メーカーでも必ず直面する課題です。
昭和発想の「現地任せ」「慣習頼り」から脱却し、誰もがビザリスクを予見し・防ぎ・共有できる「現場主導のサプライチェーン改革」が必要です。
その要は、「情報可視化」「社内外のダブルチェック」「アナログな人脈とデジタル化の融合」です。
現場力の再設計こそが、日本の製造業がアフターコロナ時代を生き抜き、世界から信頼され続ける唯一の道だと、私は確信しています。
まとめ:今日から始めるトランジットビザ不足対策
トランジットビザ不足によるリスクは、待っていても消えません。
適切な準備を怠れば、必ず現場・サプライチェーンに深刻な影響を及ぼします。
今日からでも始められる予防策として、
・輸送ルートとビザ要件の「見える化」
・ビザ申請の標準手順化と二重チェック
・代替輸送ルート・キャリアの平時からの確保
・現場~サプライヤーを巻き込んだ最新情報共有
・発注側と供給側が対等にリスク共有・協働する姿勢
を徹底することが、今後の製造業の生存戦略には不可欠です。
遅延や損失を恐れるだけでなく、現場から「自分ごと」としてビザリスク対策を根付かせ、安心・強靭なサプライチェーンを未来へと繋いでいきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)