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B2B企業が一般消費者向け製品を作る際の価格帯とプロモーション戦略

目次
B2B企業が一般消費者向け製品を作る際の価格帯とプロモーション戦略
B2B(企業間取引)を主軸に発展してきた多くの日本製造業が、近年、市場の成熟・国内需要の変動・グローバル化への対応などを背景にB2C(消費者向け)へ参入する動きが増えています。
既存技術やブランド力を活かし、新たな収益源として一般消費者向け製品を企画・販売する企業が目立ちますが、その裏には「価格設定」と「プロモーション」の壁が高く立ちはだかっています。
この記事では、長年現場で培った知見や失敗事例も踏まえつつ、B2B企業がB2Cへ進出する際に押さえるべき価格帯の考え方と、その実現のためのプロモーション戦略について現場目線で解説します。
B2BモデルとB2Cモデルにおける“価格設定”の本質的な違い
B2B:合理性が支配する価格決定プロセス
B2B取引では、価格設定は「原価+企業利益+取引スケール」など複数の理屈と実務的条件(納期、数量、長期契約等)に基づくことが多いです。
お客様は法人担当者、すなわちプロのバイヤーです。
彼らは
・コスト構造の透明化
・競争力比較
・トラブル時の対応力や品質保証
といった「総合力」で購買判断をします。
そのためB2Bでは、多少高額な商品でも合理性のある説明やサポート体制が伴えば成立しやすく、逆に根拠のない価格は即座に却下されます。
B2C:感情・直感・ブランディングが大きく作用
一方、B2C(一般消費者向け)の価格帯は、製造原価や付加価値から算出はされるものの、
・「買ってみたい」「贅沢だけど欲しい」
・「友達に自慢したい」
・「自分の生活がちょっと変わりそう」
といった感情が購買行動に強く影響します。
また、消費者は「同等の性能で価格が安い製品」を探す傾向があり、ネット上のレビューやSNS拡散も意思決定に影響します。
B2Bと同じ発想で価格を決めてしまうと、高すぎて全く売れない、または安すぎてブランドイメージまで下げてしまう、という失敗に繋がりがちです。
価格帯設定で失敗しやすいB2B企業のパターン
コスト積み上げ思考が“価格”を高くするワナ
B2B畑の管理職や現場がB2C向け製品の価格を決める際、材料費積み上げ・人件費配賦など「理屈で計算した最低限の利益確保」から離れられず、製造業特有の“安全マージン”や工数ゆとりを確保し過ぎて、どうしても高くなります。
B2Cでは、“コスト+利益”の考え方に過度にこだわらない市場認識が必須です。
「うちは品質がいいから高くて当然」と思い込むリスク
工場現場や技術者のプライドは、時として顧客視点を曇らせます。
B2Bに慣れた企業によくある失敗が「品質が高いから、消費者にもきっと評価される」という過信です。
消費者は、品質には一定の対価は払います。
しかし“必要十分”を超えるスペックや信頼性にはコストをかけません。
当たり前と思っていた価値が消費者には訴求できていない現実があります。
競合分析不足=適正価格帯が分からないままリリース
初めてのB2C製品でよくあるのが「とりあえず原価ベースの3倍で」と安易に価格設定するパターンです。
結果、既存の家電メーカー製品や通販ノーブランドより明らかに高く、まったく売れない。
BtoC市場では、たとえ高額でも「他社にない+αの価値」が伝わらなければ生き残れません。
価格帯設定の実践的アプローチ
現場主導の市場調査
昭和型の現場は「とりあえず上が決めたから」と価格戦略を立てがちです。
しかし、消費者へのヒアリングや競合・類似製品の市場調査は現場(設計・製造・営業)が主体で行いましょう。
店舗スタッフやコールセンターに来る声、ネットレビューも積極的に拾い、「消費者の価値観」を具体的に把握するのです。
コンフリクト・マネジメントで適正利益を再定義する
営業、開発、工場長など各部署が“譲れないコスト”を容赦なくぶつけ合い、最終的な原価構成や販売数量の現実解を導出します。
大企業ほど「縦割り稟議で誰も本気で責任を取らない」状態になりがちなので、経営層が率先してコンフリクトを仕掛けることが重要です。
「コストダウンによるヒト削減」でなく、「消費者が払う価値」に見合った仕組み設計を徹底しましょう。
テストマーケティングによる価格帯の絞り込み
いきなり全国展開せず、ECサイトやクラウドファンディングを利用してテスト販売を行いましょう。
これにより、消費者がどれくらいまで払うかをリアルタイムで把握できます。
また、この過程でランキングやフィードバックから「B2C消費者に求められるスペック」「売れる価格帯」が具体的に分かります。
B2B企業の“勝てる”プロモーション戦略
ブランドヒストリーをB2C向けに再編集する
「技術一筋50年」「高い信頼性」「プロだけが知る隠れた名品」
こうした企業の歴史や現場の熱意は本来、価格に“付加価値”を持たせる武器です。
B2Bで当たり前だった技術力や安全性を、消費者の生活や想いとリンクさせて再編集し、“ストーリー”として発信しましょう。
近年のヒット事例では、工場見学や製造過程を動画SNSで公開し、信頼・安心×エモーショナルなブランドイメージ構築に成功しています。
“体験重視”のイベント・サンプリング施策
消費者は「工業製品」の良さや違いを実感できると一気にイメージが変わります。
家電・生活雑貨メーカーを中心に、現場系B2B企業も
・ものづくり体験イベント
・ポップアップストア
・試用キャンペーン
などに積極投資しています。
小ロット開発や特別仕様(特注色やイニシャル刻印など)も有効です。
現場スタッフを“ブランド大使”に
B2C向きの販促では、開発者や職人、工場長が直接商品をアピールすることが非常に効果を発揮します。
現場スタッフの思い、徹底した品質管理や工夫、ヒューマンなストーリーをSNSやイベントで発信すると、“人”の魅力に共感してくれるユーザーが増えます。
アナログな動きとデジタルを融合させる
製造業ではまだFAXや紙カタログ、電話営業が根強く残っています。
しかし、新規B2C施策においてはこれにデジタルツール(SNS・YouTube・公式サイト・LINE公式アカウントなど)を乗せて、複数チャネルでアプローチすることが重要です。
昭和時代の良き“対面”と現代の“多チャネル戦略”を融合することで、新規ユーザー層の獲得が加速します。
バイヤー・サプライヤーの立場から見た“B2C化”
バイヤー視点:消費者への提案力を磨く
B2Bバイヤー経験者も、B2C向けを視野に入れることで
・企画提案の幅が広がる
・ライフスタイルや個人ユーザのニーズをくみ取る勘所が磨かれる
という利点があります。
「現場目線の価値提案」「品質保証を前面に出す差別化」「現場トラブル対応力」などB2Bの強みを生かし、購買プロフェッショナルとして更なる成長が期待できます。
サプライヤー視点:バイヤーの“消費者志向”を先取りする
従来は価格・品質だけで取引条件が決まりましたが、今後は提案型・共創型のバリューチェーン構築が不可欠です。
B2C市場のトレンド、消費者が本当に求めている機能やデザインのニーズを先読みし、バイヤー企業に積極提案することで信頼関係が深まります。
まとめ:B2B企業だからこそできるB2Cの価格・プロモーション戦略を
B2B主力だった製造業が一般消費者向け製品に参入する際は、B2BとB2Cでは全く異なる“価格帯設計”と“プロモーション手法”が求められます。
現場が主体となった市場調査や、現場スタッフの熱意を訴えるブランド戦略が重要です。
加えて、アナログ的良さとデジタル活用を組み合わせることで、製造業ならではの“確かなものづくり”を消費者の心に響かせましょう。
昭和から続く合理性や現場力、B2Bで培われた品質や業務管理の知恵を活かしながら、新しい地平線としてのB2C市場で飛躍するための“挑戦と実践”を、現場目線で推進していきましょう。
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