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ナイロンTシャツ印刷でインク密着を高めるためのプライマー選定と熱風乾燥条件

目次
ナイロンTシャツ印刷における密着性の重要性
ナイロン素材は、軽量性・耐久性・撥水性などに優れ、スポーツウェアやユニフォーム系Tシャツとして高い人気を誇ります。
一方で、表面にフッ素系などの撥水加工が施されていることが多く、プリントしたインクが剥がれやすいという課題が現場では根強く残っています。
インクの定着が悪いと、わずかな摩擦でプリントが剥離・ひび割れを起こし、品質クレームやリペア工数の増大を招きます。
そのようなトラブルを未然に防ぎ、ナイロンTシャツ印刷の品質を安定させるには「プライマー選定」と「熱風乾燥条件」の最適化が不可欠です。
この記事では、調達・購買経験や現場管理から得た知見をもとに、印刷現場で即実践できるプライマーと乾燥条件の選び方を深堀りしていきます。
なぜナイロン素材はインクが密着しにくいのか
ナイロンへのTシャツ印刷が難しい理由を正しく理解することが、トラブル防止の第一歩です。
ナイロン表面とインクの関係性
ナイロンは、ポリエステルや綿と比べて分子レベルの極性が低く、表面エネルギー(=インクを「濡らす」力)が低い素材です。
さらに多くのナイロン製Tシャツの生地表面には、撥水・撥油加工がなされ、ここに通常のプラスチゾルインクや水性インクを印刷しても「はじき」を起こしやすくなります。
結果、インクが正しい形で繊維に食い込まず、乾燥後しばらくして爪で軽くこすっただけで、表面がスルッと剥がれてしまうケースがみられます。
密着不良の現場リスク
「密着不良」は、生産数が増えて出荷後に大量クレームとなることも少なくありません。
管理コストや手直し作業はもちろん、ブランド価値損失にも直結します。
そのため、現場では「印刷密着の安定化」が常に課題となっているのです。
ナイロンTシャツ印刷用プライマーの選定指針
密着不良対策でもっとも効果的なのが、インクの前処理剤=「プライマー」活用です。
プライマーの役割と種類
プライマーは、ナイロン表面に塗布ないしスプレー塗布し、素材とインクを「化学的につなぐ」橋渡しをします。
代表的なプライマーには、以下の種類があります。
・イソシアネート系プライマー:二液反応型で高密着性を誇る。
・クロロプレン系プライマー:作業性が良くコスト安価。密着力はやや劣る。
・水性ポリウレタン系プライマー:最近増えている水性用で、環境負荷が低い。
どのプライマーも、ナイロン表面の極性を高めてインク定着を促しますが、同じナイロンでも撥水コーティングの種類や「繊維の編み方」によって密着性は大きく変わります。
たとえばフッ素撥水加工タイプは、イソシアネート系プライマーを選定しないと「密着が安定しない」ことが多いです。
プライマー選定時のチェックリスト
1. 生地メーカーから「撥水・撥油加工の有無」「表面コーティングの種類」を必ず調べる
2. 各種プライマーの「対応インク種」「作業性」「安全性」「コスト」「揮発性」を比較する
3. 可能なら小ロットで数種類のプライマーをサンプルテストし、乾燥・耐摩耗試験でベストを選ぶ
特に製造業の調達・品質部門では「現場作業者の安全管理」「有機溶剤等の法規制」「コストインパクト」も忘れず考慮しておきたいポイントです。
熱風乾燥条件設定の実務ポイント
プライマーとインクの最適な密着を引き出すには「乾燥条件」も重要です。
なぜ乾燥条件が大切か
ナイロンは熱に弱く、高温で急激に加熱すると生地の黄変や縮み、撥水性能の損失を引き起こします。
一方、インクやプライマーの揮発・硬化不良は密着不良の原因です。
つまり
・生地にダメージを与えず
・インク・プライマーの化学反応(硬化)をしっかり進める
両立させる条件を最適化しなければなりません。
熱風乾燥の推奨条件(目安)
多くの工場現場では、以下が標準的なスタート条件です。
温度:110〜130℃
時間:2〜4分
ただし、ナイロンの生地厚やプリント面積、搬送距離・風量等により大きく結果は変動します。
さらに、高密着タイプのイソシアネート系プライマーは「長めの段階加熱」を推奨する説明書が多く、クロロプレン系では「時短型の高温加熱」の方が効果的な場合もあります。
乾燥条件の調整プロセス
1. メーカー推奨値を参考に、現場設備での乾燥テストを実施
2. 完全乾燥前後、インク表面・生地裏の温度・乾き具合をサーモグラフィ等でチェック
3. 乾燥後に「クロスカット試験(テープで剥いでみる)」「摩耗試験」「洗濯耐久試験」を行い、密着度と生地ダメージを同時評価
4. 目標規格内に収まる温度・時間の“最適ゾーン”を決定
この調整には、「現場の数値管理」と「仕上がり外観」の両面を根気強く見ることが重要です。
現場の体感だけに頼らず、温度計・タイマー・品質テストを徹底活用しましょう。
アナログ現場でのプライマー・乾燥工程の定着テクニック
昭和からのアナログ体質が根強く残る現場では、新しいプライマー導入や乾燥条件の見直しは「抵抗感」がつきものです。
ベテラン現場とバイヤー視点のすり合わせ
現場作業者は「これまでのやり方」「経験則」に強い安心感を覚えがちですが、一方で調達・バイヤーや品質管理サイドは「規格値」や「原価管理」も加味して判断しなければなりません。
ここを乗り越える方法の一つが、「現場視点のデータ見える化」です。
例:新規プライマー導入時の耐久テスト結果をビジュアル(写真付き)で共有し、コストや安全性データも加えて全員が納得できる材料を用意することが大切です。
小ロットテスト&現場教育のすすめ
一気に全体導入せず、まずは「小ロットで十分な検証」「結果報告と現場教育」を徹底しましょう。
現場が新工程に慣れるまで、「双方向コミュニケーション」で細かいノウハウと注意点を確実に共有します。
バイヤーやサプライヤーの立場であれば、「なぜそのプライマー・条件を選ぶのか」「どんなリスクが低減でき、経営にどんなインパクトがあるか」を、現場目線でしっかり伝える技術が求められます。
これからのナイロンTシャツ印刷における展望
ナイロン印刷はこれから、より高性能な撥水加工・難燃処理生地や、SDGs観点から環境対応型プライマーなど新技術がますます登場していきます。
また、調達や購買の現場でも、従来型の「勘と経験のみに頼る調整」から、「データと現場知見を融合」した新しい品質管理の流れが太くなっています。
バイヤーや工場サプライヤーの立場であれば、単なる価格交渉だけでなく、「印刷密着の安定化」という技術テーマ自体を現場チームと共に考え、新しい地平線を切り開く姿勢が今後ますます評価されるでしょう。
まとめ
ナイロンTシャツ印刷の密着性向上は、「プライマー選定」と「熱風乾燥条件」の両輪があってこそ達成できます。
現場のアナログ技術や経験をリスペクトしつつ、調達・品質管理・製造各部門がデータ共有とチャレンジを積み重ねる姿勢が、現代の製造業界では何より重要です。
「現場での実験・失敗の経験」「設備の癖」「プライマー・インクなど素材特性の理解」といったリアルな現場目線を持つことで、どんな難題も必ず一歩前進させることができる―。
ぜひ貴社でも“ナイロンの印刷密着”を起点に、製造現場のイノベーションにチャレンジしてください。
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