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見た目優先の要求に応えた結果、分解メンテがほぼ不可能になる悲劇

目次
はじめに:見た目優先の要求が現場にもたらす影響
製造業の現場において、製品の外観やデザインにこだわる顧客要求は年々高まっています。
市場競争が激化する中、他社との差別化をはかる上で、見た目の「美しさ」や「洗練された印象」は非常に重要な要素となっています。
しかし、その「見た目」に過度に重きを置いた結果、現場サイドでは意外なデメリットが発生していることをご存じでしょうか。
本記事では、外観重視の設計要求が現場の分解メンテナンスに与える厳しい現実と、その裏側にある業界の構造的な課題について現場目線で深掘りします。
バイヤーはもちろん、サプライヤーや製造現場の方々にも有益な内容となるよう、具体事例や実務的観点から解説します。
見た目優先設計がもたらす「メンテナンス不可」の実態
昭和的ものづくり精神の転換点
かつての日本のものづくり現場では、「耐久性」と「修理のしやすさ」が最優先されていました。
作り手と使い手が近い距離にいたため、たとえば配線や機構部分を容易に取り外せるようネジ留め構造とするなど、手直しやメンテナンスを見越した設計が当たり前のように行われていたのです。
しかし、平成から令和にかけて顧客ニーズは様変わりしました。
「とにかく他社より目立つ美しいデザインを」「ネジ頭すら見せるな」「カバーの隙間を無くして欲しい」。
こうした要望が業界横断的に常態化しています。
このデザイン至上主義がどう現場を追い詰めているのか、現実を紹介します。
表からは開けない、分解できない…その現場苦労
従来であれば部品交換や調整のため簡単にカバーを外し内部点検できた設備や製品が、見た目重視で設計変更された結果、隠しネジやスナップフィット(はめ殺し)方式が増加しています。
一例として、プラスチック筐体の家電では、基板へのアクセスが外からできないケースが続出しています。
また、隙間が極限まで減らされた板金ケースでは、ツメを折らずに分解できず、工具すら挿入が困難な場合もあります。
現場の作業員は、点検や修理時に傷をつけないように気を使いつつ、特殊工具や予備パーツを別途用意しなければならず、作業効率は著しく悪化しています。
「見た目はきれい」だけど「メンテナンスができない」。
このギャップの負担は現場、ひいてはサプライヤー企業に押しつけられているのが実情です。
なぜ“メンテナンスできない”製品が増えるのか
バイヤーとサプライヤーの齟齬
購買部門やバイヤーの方の多くは、最終顧客の満足度向上を至上目的としています。
その観点から「とにかくきれいに仕上げてほしい」、「競合との差で分かりやすい『付加価値』を形にしてほしい」など、どうしても外観要求が強くなる傾向です。
一方で、サプライヤーや生産現場は実際の修理コストやマンパワーの増加による影響、品質保証のリスク増など、運用面での弊害を厳しく感じています。
また、メンテナンス性の低下が原因でリコールや修理コスト増が発生しても、「見た目優先で作れと言われたから」という声を企業側は表立って出しにくいのが現実です。
現場目線の意見は、開発初期の段階、つまりバイヤーや設計担当との打合せ段階で捨象されるケースが目立つのです。
デジタル化の波と実務の乖離
業界のDX化が進む中、「VRや3D CADでわかりやすくイメージ共有」できるようになった一方、
実際の作業スペース確保や「この位置からこの工具が入るか」の検証は現物レベルでしか分からない問題が残存しています。
“デジタル上では完璧”に見える構造も、現場での試作段階で事故や分解不能が多発するケースも少なくありません。
解決策を考える:現場の知恵でバイヤーとの共創を
設計初期の「現場ヒアリング」の重要性
部品の分解性や点検性を考慮する「DFM(Design For Manufacturability)」や「DFX(Design For X)」という思想があります。
これらは設計と現場サイドが密に連携することで実現されます。
具体的には、設計初期段階で下記のような質疑・共創が必要です。
・分解後に元通りに組めるか
・交換部品の標準化ができているか
・専用工具や特殊な治具が必要か
・交換時の工数と安全性はどうか
バイヤーとサプライヤーが互いに現場負荷や品質リスクについて正直に情報共有し、
場合によっては「見せ方」と「メンテナンス性」の妥協点を探ることが不可欠です。
リバースエンジニアリング視点での提案
現場では、製品を一度分解して不具合解析を行い、改修設計案を検討することが求められる場合があります。
この際、「どこにストレスがかかるのか」「再組立て時に安全が確保できるのか」など、メンテナンスの実践的視点から逆算で設計提案を出すことが強みとなります。
たとえば、「表に見えない隠しネジでも、ここにサービスホールを設ければ傷をつけずに分解できる」といった改善案や、
「この嵌合部をもう1mmだけ広げることで、確実に工具が入る」など、現場経験に裏打ちされた具体的指摘が顧客やバイヤーの信頼を勝ち取ります。
「メンテしやすさ」がブランド資産になる時代へ
今後は、脱炭素やサーキュラーエコノミーへの対応として「製品寿命を伸ばす=メンテナンス性を確保する」ことが、ブランド力や顧客満足度に直結する時代へとシフトしていきます。
サプライヤー側から「見た目も重視しつつ、修理しやすく再利用しやすい」という新たな『提案価値』を高めていく動きが加速します。
バイヤーも「壊れたら即交換」から「長く使い続けられる製品の提案」という視点へ少しずつ切り変えていく必要があります。
業界動向:デザインとメンテナンスは本来両立できる
海外メーカーの取り組み例に学ぶ
グローバル競争の中、欧州メーカーなどは「デザイン性」と「サステナビリティ」「メンテナンス性」を同時に追求する事例が増えています。
たとえばドイツの家電メーカーでは、製品デザインを損なわずに、工具レスで内部点検できる構造の開発や、交換部品のエコ化・モジュール化を積極的に進めています。
日本でもこの流れを取り入れ、「美しさと実用性」を両立した設計文化へのパラダイム転換が必要でしょう。
市場・環境トレンドが現場の考え方を変える
今後「分解しやすさ・修理しやすさ・再利用しやすさ」という視点は、環境規制(RoHS, WEEE, リサイクル法など)や社会的要求、さらにはSDGsの文脈でもますます重要視されていきます。
また、エンドユーザーのリペア意識やサステナブル志向の高まりも、設計思想へ影響を与え、業界構造自体にも大きな変革が訪れると予想されます。
現場のプロが伝えたい「設計とバイヤーに望むこと」
分解メンテがほぼ不可能な悲劇を繰り返さないためには、業界全体で価値観のアップデートが必要です。
バイヤーや購買担当は、顧客の要望に応じるだけでなく「メンテナンス性も設計現場と協議しながら詰める」姿勢を持つこと、
設計や技術部門は「どうやって現場の運用リスクやコストを減らせるか」を考え抜くことが今後の競争力強化に直結します。
サプライヤー、現場担当、技術者の知恵と経験を最大限に発揮し、「美しさ」と「タフさ」を両立した、次世代製造業をともに作り上げていきましょう。
まとめ:意識改革が現場を救う
見た目優先の要求にただ従うだけでは、分解メンテナンス不可という“悲劇”を生み、結局は顧客も現場も損をします。
これからの製造業に必要なのは、「デザインも、メンテナンスも、どちらも妥協しない」新たな発想力と現場との密な連携です。
現場で培われてきた知恵や工夫を、バイヤーや設計にしっかり伝えながら、現実的な落としどころを模索すること。
それこそが、昭和・平成・令和を通して日本のものづくりがさらに世界で羽ばたき続けるための鍵であると私は考えます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
共に業界の新たな地平を切り拓いていきましょう。
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