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なぜなぜ分析とゼロベース思考による問題解決と再発防止

目次
はじめに:製造業の「問題解決」とは何か
製造業の現場では、日々さまざまなトラブルや課題が発生します。
設備の不具合、納期遅れ、品質不良など、その内容は多岐にわたります。
これらを「なんとなく」やり過ごしてしまうと、また同じ問題が繰り返されることになります。
問題解決の本質は、「なぜ起きたのか」「本当に対策できているのか」を深く考え、組織や現場の仕組みに根本的な変化をもたらすことにあります。
ここで重要なのが、「なぜなぜ分析」と「ゼロベース思考」です。
この二つのアプローチは、一見似ているようで異なりますが、両者をかけ合わせることで、現場の根深い課題解決や再発防止に効果を発揮します。
この記事では、私自身の現場経験・管理職経験もふまえ、「なぜなぜ分析」と「ゼロベース思考」の実践的な活用法と、昭和的なアナログ体質が今も色濃く残る製造業界で、どうアップデートしていくべきかについて語ります。
なぜなぜ分析とは何か? 現場目線で考える基本と本質
なぜなぜ分析の基本:現場が「腹落ち」するロジック
なぜなぜ分析は、問題の原因を一段、一段と掘り下げて追求する手法です。
「なぜこのトラブルが起きたのか?」を問い、その答えに対しもう一度「なぜ?」を重ねていきます。
一般的によく「5回なぜを繰り返せ」と言われますが、回数は本質ではなく、「現場が心から納得できる根因に到達するまで」繰り返すことが重要です。
例えば部品の不良が発生したとします。
「なぜ不良が発生したのか?」「選別工程で見落としたから」。
「なぜ選別工程で見落としたのか?」「検査基準があいまいだったから」。
「なぜ検査基準があいまいなのか?」。
こうして掘り下げていくと、「現場管理者の基準説明不足」や「社内教育体制の不備」など、単なる作業者ミスではない、本当の問題点が現れてきます。
なぜなぜ分析の落とし穴:アナログ体質との闘い
昭和からの「とりあえず対症療法で…」という風土が強く残る現場では、多くが「なぜ」で終わってしまいます。
作業者に注意して終わり、マニュアルを作って終わり。
これでは根本解決になりません。
表面的ではなく、「人」「仕組み」「設備」「情報」と、全体像から本質的な原因をあぶり出すことが重要です。
ここにリーダーや管理職の目線、そして「現場の声を聴き取る力」が求められるのです。
ゼロベース思考とは何か? 業界の「常識」に挑む視点
ゼロベース思考の定義とその重要性
ゼロベース思考とは、「これまでのやり方や前提条件をすべて白紙に戻して、本当にあるべき姿を考える」問題解決手法です。
「こうするのが当たり前」「この設備はこう使うもの」「予算や人手がないから仕方ない」。
こういった既成概念に縛られると、新しい発想も、根本からの再設計も生まれません。
例えば、工程のリードタイム短縮を課題にした場合、「今のラインをどう改善するか」と考えるのではなく、「そもそもこの工程は必要なのか」「工程間の待ち時間ゼロにならないか」「この工程自体を設備化できないか」とゼロから発想します。
昭和的管理の限界とDX時代への転換
日本の製造業は長らく「経験と勘」に頼ってきました。
紙の帳票やExcel集計、場当たり的な人海戦術――。
デジタル化や自動化が進んできた今でも、「前からこうしてる」「現場が混乱するから」といった理由で本質的な改革はなかなか進みません。
ゼロベースで考えると、「そもそもこの情報記入は何のため?」「システムで自動集計できないか」「外部サプライヤーともっと分業できないか」など、新しい地平線が広がります。
この発想が、製造業の本当の競争力強化に直結します。
なぜなぜ分析とゼロベース思考をかけ合わせる実践法
流れ1:なぜなぜ分析で本質原因を特定する
まずは「なぜなぜ分析」によって、問題の根本原因を抽出します。
現場で多いのは「人がミスをした」という表面的な結論で終わるパターンですが、何段も掘り下げていけば、「工程設計の甘さ」「情報伝達の断絶」「教育体制の形骸化」といった構造的な原因が見えてきます。
この段階では、一次情報(現場へのヒアリング、実物観察、データ記録)を徹底して集めることが極めて重要です。
流れ2:ゼロベース思考で「あるべき姿」を描く
つぎにゼロベース思考を発動します。
一度頭の中を真っ白にして、「今のやり方にこだわらず、本当はどうあるべきか?」を考えます。
たとえば、
「人手作業で検査しているが、自動化でムダを省けないか」
「帳票記入をやめ、IoTデバイスで自動記録できないか」
「委託工程ごとアウトソーシングして良いのでは」
といった具合に、課題そのものの枠組みを再設定します。
ここで大事なのは、「できない理由」ではなく、「できるためには何が足りないか」の発想転換です。
社内の権限や予算の壁、業界のしがらみを一旦すべて取り払い、「理想」を言語化することがスタート地点となります。
流れ3:現実的な「変革ロードマップ」へ落とし込む
とはいえ、理想論だけでは現場は動きません。
ここから「現実的な落としどころ」をつくるのが、現場経験者の真価です。
・まずは小規模ラインで試験運用する
・システム化する部分/人がやる部分を現場と一緒に切り分ける
・バイヤー側、サプライヤー側の目線で見直す
サプライヤーから見れば、「この発注仕様、本当に必要?」「工程間の無駄な検査や帳票、短縮できない?」
バイヤー(調達担当)からすれば、「納期遅延の真因はどこ?ルール・仕組みを根本から再設計できない?」
このように、なぜなぜ分析とゼロベース思考で現場の感情と理想、双方に根ざした解決策を作りこむのです。
現場でよくある具体的な事例と、その打開策
ケース1:部品納期遅延の再発防止
【なぜなぜ分析】
納期遅れが頻発→なぜ?→納入直前に検査NG時が多い→なぜ?→製造工程で手直し工程が常態化→なぜ?→工程内の不良流出を許容してしまう慣習がある
【ゼロベース思考】
「分納・一時納庫方式」や「工程内品質監査の強化」「自動化でエラー検知」といった策が導き出される。
「そもそも手直し前提の工程を組まない」「検査タイミングを工場外部に委託」など、根本を変える方法も考えられます。
ケース2:クレーム対応のルーチン化からの脱却
【なぜなぜ分析】
同じ顧客から同様クレームが周期的に発生→なぜ?→仕様の曖昧さと情報伝達ミス→なぜ?→仕様書と現場作業がリンクしていない
【ゼロベース思考】
「顧客とオンライン仕様確認システムを設ける」「見積段階で仕様交渉を徹底する」
「サプライヤー段階でも最終顧客視点で対応できるチーム編成」など、従来の業務の流れごと見直す発想が活きます。
今こそ必要な「現場×変革」目線のマインドセット
「なぜなぜ分析=現場の本音を聴く場」
単に問題点を列挙するだけでなく、「気付き」と「現場目線」で納得感のある原因を特定しなければ、永続的な改善にはなりません。
現場のリアルな声を拾うこと、自分で現物を見て判断すること、ここを徹底しましょう。
「ゼロベース思考=未来創造の第一歩」
今ある手段に「最適化」し続けるだけでは、競争力は向上しません。
「本当に必要な『あり方』とは何か」「やり方を根本的に変えればどうか」。
小さな例外、大きな変化――両方を想定しながら「空想と現実化」の間を行き来しましょう。
まとめ:昭和的アナログ業界をアップデートする力
製造業は、多くの分野で「やり方の惰性」や「仕組みの積み重ね」が問題の温床となっています。
なぜなぜ分析で根本原因を探り、ゼロベース思考で新しい解決策を描く――。
この2つを組み合わせ、「現場の知恵」と「ラテラルな発想」を融合することで、日本の製造業はいま一度、真の競争力をよみがえらせることができるはずです。
バイヤーを目指す皆さん、またサプライヤー側でバイヤーの本音を知りたい方も、そして現場のリーダーも。
現実を直視し、なぜなぜ分析+ゼロベース思考というツールで、粘り強く「変革」を推進していきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次の現場での実践に、この記事が少しでも役立つことを願っています。
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