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なぜなぜ分析とゼロベース思考による問題解決と再発防止

目次
なぜなぜ分析とゼロベース思考による問題解決と再発防止
はじめに
日本の製造業は、長らく高品質・高効率を追求してきました。
それでもなお、現場では日々何らかの問題が発生し、同じようなミスやトラブルが繰り返される場面も珍しくありません。
その原因は、本質的解決に至らない“場当たり的な対応”や、“前例踏襲”といった昭和から続く仕事の進め方が根強いためです。
この記事では、現場の管理職経験者の視点から、なぜなぜ分析とゼロベース思考を組み合わせることで、真の問題解決と再発防止、組織変革への道筋を示します。
すでにバイヤーとして活躍中の方、これから調達購買やサプライヤーマネジメントを志す方、そしてサプライヤーの立場からバイヤーの視点を理解したい方にも役立つ内容です。
なぜなぜ分析とは何か?
なぜなぜ分析の基本と必要性
なぜなぜ分析は、日本の製造業現場で生まれた問題解決手法です。
「なぜ(Why)」を少なくとも5回繰り返して問い続けることで、表面化した問題の背後に潜む“本当の原因=真因”を探ります。
たとえば、
1. 製品に傷がついていた
2. なぜ?→作業台にバリが残っていた
3. なぜ?→作業後の清掃がされていなかった
4. なぜ?→清掃手順が作業標準書に明記されていなかった
5. なぜ?→標準書の改訂が長期間なされていなかった
表面的な「傷の除去」や「一時的な清掃」だけではなく、「なぜ清掃手順が定着していなかったのか?」という“組織や仕組みの問題”にまで突っ込むことができます。
なぜなぜ分析の落とし穴と現場での“形骸化”
実際の工場現場では、なぜなぜ分析が「5回繰り返しておしまい」「本音に踏み込まない」形で済まされるケースも多くみられます。
背景には、「とりあえず原因が書ければ良い」「納期が迫っているから深追いできない」「二度手間を避けたい」といった風土の壁も存在します。
また、手法そのものが目的化し、「誰の責任か」「部署の境界」にとらわれてしまうことも珍しくありません。
これではせっかくの分析も、根本的な再発防止にはつながりません。
ゼロベース思考のすすめ――“前例踏襲”からの脱却
ゼロベース思考とは何か?
ゼロベース思考とは、「今までこうやってきたから」「昔からこう決まっているから」という常識や前提をいったん白紙に戻し、現状に最適な解決策や手順を考える思考法です。
たとえば、生産ラインが慢性的に混雑している場合、
・「人を増やそう」
・「工程をバラす」
といった“従来案”だけでなく、
・「根本的に工程順序を見直す」
・「不要な検査プロセスを省く」
・「多能工化で対応」
など、枠を超えた発想で解決につなげることが可能になります。
なぜ昭和型の“前例依存”から抜け出せないのか
長い年月にわたり成功を収めてきた工場や組織ほど、「前例」「通例」「先輩の教え」が暗黙のルールとして根付きやすいものです。
こうした空気は、守るべきノウハウを伝承する一方で、新たな変化や抜本的な改善を阻害する“壁”ともなっています。
また“大失敗”を必要以上に恐れ、原因究明や改善提案をオープンに語り合うことを躊躇してしまいがちです。
ゼロベース思考は、そのような土壌に風穴を開ける手段のひとつとして位置づけられます。
なぜなぜ分析×ゼロベース思考=本気の問題解決
これまでのやり方に疑問を持つことから始める
なぜなぜ分析で顕在化した「真因」が、実は“組織の常識”や“前例”自体に根ざしていることは少なくありません。
たとえば、
・「同じような不良が毎年発生する」
・「伝言ミスで誤出荷が何度も起きる」
こうした場面では、“現行手順や体制そのものを根本的に変えなくては意味がない”と気付くことが大切です。
なぜなぜの「5回目」の先にある“問い直し”
現場では「5回問えば十分」と思われがちですが、実はその先に
・「そもそも私たちの目的は何か?」
・「理想をゼロから考えれば、最善の仕組みは何か?」
といったゼロベースな視点が重要です。
“なぜなぜ分析”で「作業標準書が不十分」という真因に行きついたとしても、「本当に標準書が必要か?」「今の運用は現場に合っているか?」といった新たな問いを自ら立ててみましょう。
このひと手間が、表面的な再発防止では得られない「構造的な変革」に繋がります。
調達購買・サプライヤーマネジメントへの応用
サプライヤーの立場から考える“なぜなぜ分析”
自社のトラブルだけでなく、調達先であるサプライヤーと何らかのトラブル(品質不良、納期遅延、書類不備)が生じた際も、“なぜなぜ分析”は非常に有効です。
ただし、「サプライヤーの責任」と矮小化せず、「なぜ我々が選定ミスしたのか?」「なぜ連絡系統が機能しなかったのか?」まで踏み込む視点が大切です。
調達購買担当は、サプライヤーと一緒になって“なぜなぜ分析”を行い、そのプロセス自体を“未来への資産”として共有しましょう。
バイヤーが持つべき“ゼロベース”マインド
調達購買部門の現場では、「昨年契約した業者をなんとなく継続」「取り引き条件を前年踏襲」といった旧態依然の判断が組織文化として根付いていることも。
この空気を打破し、真に付加価値を出すバイヤーになるには、
・「本当にこの仕入先で良いのか?」
・「今までのRFPに無駄はないか?」
・「必要な納期や品質レベルは本当に現状通りか?」
といったゼロベースの問いかけが不可欠です。
訴求力のある提案や価格交渉は、「相手(サプライヤー)も積極的に変革したい」と思える材料が揃ってこそ可能になります。
“昭和アナログ現場”の壁を超えるには
“属人化”から“組織知”へ
現場に根付く「ベテラン頼り」「口伝え文化」「帳票の手書き」などのアナログな業務の根強さは、今なお多くの日本の工場で存在します。
なぜなぜ分析やゼロベース思考を推進するには、こうした業務や知識を組織化・システム化することも欠かせません。
たとえば、ナレッジ共有のための標準化、IT化、見える化、相互教育の仕組みづくりがその第一歩です。
現場の“腹落ち感”を得る工夫
新しい手法や変化は、現場での理解と納得なしには絶対に長続きしません。
「なぜこう変えるのか」「どうして今までのやり方だと再発するのか」を、現場スタッフやサプライヤー一人一人に直接語りかけ、対話の場を設けてください。
コンピュータでシステム化するにせよ、紙でハンドリングするにせよ、“現場の声”が充分に反映されていることが、持続的改善への唯一の近道です。
まとめ:現場力×思考転換が製造業を進化させる
なぜなぜ分析は、問題の本質に迫るための「掘り下げる力」、ゼロベース思考は「創り直す力」と言えます。
どちらか一方では真の再発防止や、製造業全体の進化には結びつきません。
・なぜここで問題が起きたのかを真正面から問い直す勇気
・過去の当たり前や慣習に囚われず、“ゼロから”考える柔軟性
・バイヤーやサプライヤー、全ての関係者が対等な立場で知恵を出し合う土壌
これらが掛け合わさるとき、はじめて真の問題解決と再発防止、そして新しい付加価値創出への扉が開かれます。
製造業に携わる全ての方が、今一度“なぜなぜ”と“ゼロベース”という視点を現場と自分自身に重ね、次世代のモノづくりを切り拓いていけることを心より願っています。
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