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投稿日:2026年1月22日

日用品の量産コストダウンが設計変更から始まらないケースの問題点

はじめに:量産コストダウンは設計だけがスタート地点ではない

日用品の製造業における「量産コストダウン」は、あらゆる現場で追求されている永遠の課題です。

コストダウンと言えば、まず設計変更を連想される方が多いかもしれません。

しかし実際の現場では、設計部門からではなく、調達や生産部門など現場サイドでコストダウン施策が始まるケースも少なくありません。

この「設計変更から始まらないコストダウン」には、実は大きなリスクと問題が潜んでいます。

この記事では、なぜ設計変更がスタート地点とならないのか、その背景や、現場目線で見た場合の問題点、そして今後業界が進むべき方向性について深く掘り下げて解説します。

現場でよくある量産コストダウンの流れ

1. 設計変更が初手でない理由

製造業の現場では、量産立ち上げ後に「とにかく原価を下げろ」とのミッションが与えられることが多いです。

このとき多くの現場でまず行われるのが、「今使っている材料や部品をもっと安いものに替えられないか」「取引条件の見直しで調達価格を下げられないか」といったアプローチです。

なぜ設計から着手しないのでしょうか。

理由はいくつかあります。

一つは「設計変更=リスクが大きい、承認プロセスが煩雑、それに期間がかかる」という意識。

工場の現場では、既に立ち上げた製品を設計から見直すのは手間がかかり、品質保証や納期への影響も大きいと考えがちです。

さらに、設計部門と生産・調達部門のコミュニケーションが不足している会社では、現場側が「設計は変えられないもの」と最初から思い込む風土もまだ根強く残っています。

2. 「契約ありき」「仕様ありき」の伝統的手法

特に昭和期から続く日本の製造業では、「一度決まった設計は不変」という前提で、調達部門がサプライヤーとの契約によりコスト低減を図っていくというやり方が一般的でした。

サプライヤーからの値引きを交渉したり、購買ロットを増やしてスケールメリットを期待したり、既存設備を活用し短期的な現場改善による原価低減を目指していくのは今もよく見かけるアプローチです。

しかしこのやり方は、単発的なコストダウンに終始することが多く、本質的なコスト競争力向上に繋がりにくい欠点があります。

設計変更やデザイン段階からのコストダウンの意義

現代のベストプラクティス:初期段階でのコスト設計

先進的なメーカーでは、「VE(Value Engineering)」や「コストデザイン」と呼ばれる設計段階からのコスト低減活動が重視されています。

たとえば、製品コンセプトの立案時から購買、製造現場、品質管理など多職種が集まり、「この部品は本当に必要か」「一体化できないのか」「標準部品に置き換えできないか」といった議論を重ねます。

これにより、設計段階で不要なコストを未然に排除できます。

設計を変更する方が、量産立ち上げ後に調達価格を引き下げるよりも、潜在的なコストダウン余地が大きいのです。

言い換えれば、設計段階での一手が、量産後の数年間にわたり大きなコスト競争力の差となって現れてきます。

設計を排除するとどんな問題が起きるか

設計変更から始まらない場合、製品コストの大半を初期設計でロックインしてしまうことになります。

結果として、部品点数が多くて多品種少量生産になったり、特殊部品の採用でサプライヤーが限られ調達コストが割高になるなど、後工程で抜本的なコストダウンができなくなります。

一方で、無理なコストダウンを調達だけに押し付けると、サプライヤーの品質トラブルや納期遅延、強引な値引きがもたらす取引関係の悪化など新たなリスクも生じやすくなります。

昭和から続くアナログな風土とその限界

「現場は現場、設計は設計」という縦割り文化

多くのアナログな製造業の現場では、設計、生産、営業、調達といった部門間に壁があり、横断的な連携が希薄な場合が少なくありません。

製品開発会議も、設計と営業だけが出席し、現場視点や調達現場の実態が設計にほとんどフィードバックされないという会社もいまだに多いです。

これが、なかなか設計変更からコストダウン活動を始められない原因にもなっています。

デジタル化の遅れがコストダウンの機会損失に

設計情報や購買データ、製造原価情報が分断されていることで、全体最適な原価低減の打ち手が見えにくくなります。

設計も2D CADのまま、工程情報も紙ベースのため、その都度「調達さん、どこまでコスト下げられる?」とアドホックな形で要求してしまいがちです。

こうした風土は、サプライチェーン全体の最適化を阻害する大きな要因です。

サプライヤー・バイヤー双方からの現場目線

バイヤーのジレンマ

バイヤーは、短納期・低コスト・高品質のトリレンマと戦っています。

量産が始まった後にコストダウン命令だけが降りてきても、設計に手が出せない以上、既存の取引先や部品メーカーに無理難題を押し付けるしかありません。

価格交渉やサプライヤーへのコストダウン進捗管理だけで、根本的な競争力強化には限界があります。

サプライヤーの苦悩

サプライヤー側でも、いきなり一方的に値下げ要求が来たり、「似た別部品への変更はできないのか?」と相談もなく納期短縮を求められることがあります。

これはバイヤーとサプライヤーの間にある情報の非対称性、設計部門との連携不足が生み出す不条理なストレスです。

より本質的なコストダウンを実現するためには「何のための部品か」「どんな設計思想なのか」をサプライチェーン全体で共有し、共に知恵を出し合う姿勢が不可欠です。

業界が今後目指すべき地平線はどこか

ラテラルシンキング(水平思考)で新しい価値を生み出す

設計変更から始めるコストダウンができていない業界は、「今までの枠組み」「慣習」にとらわれすぎているのかもしれません。

これからはラテラルシンキング、つまり「本当にこの機能は必要か」「そもそもこの部材を使う必然があるのか」と枠組み自体を疑い、異分野の知見も積極的に取り入れることが必要です。

日用品でも、DXの力を使い、設計変更起点のコストダウン事例や、製造中に現場からフィードバックを得て設計へ反映するプロセスをどんどん生み出す必要があります。

オープンイノベーションと組織横断型チームの重要性

部門の壁を取り払い、開発・設計・調達・生産の各部門が一体となったチーム構成が求められています。

また、業界の枠を越えた異業種交流や、サプライヤーとの共同開発・共創も視野に入れることで、コストダウンと同時に価値向上も見込めます。

「設計部門が設計するものを、現場がそのまま作る」の時代は終わりです。

まとめ:設計変更起点のコストダウンがもたらす現場変革

今までの日本の製造業では、設計変更が量産原価低減のスタート地点とならない慣習が根強く残っていました。

その結果、現場や調達だけに無理なコストダウンを押し付ける非効率な構造から抜け出せていません。

今後は、設計段階からコスト低減活動を重視し、現場と設計、サプライヤーが壁を越えて連携する時代です。

コストダウンは単なる値下げ交渉ではなく、「本質的な付加価値の追求」こそが競争力の源泉となります。

現場で働く皆様、サプライヤーやバイヤーを目指す方々には、ぜひ自身の業務にラテラルシンキングを取り入れ、部門横断・業界横断でのコストイノベーションを起こしてほしいと強く願っています。

昭和の発想から抜け出し、新たな地平線を共に開拓していきましょう。

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