投稿日:2025年12月30日

塗工厚を左右するコーターマシンで使うアプリケータロール部材の問題点

はじめに

コーターマシンは、フィルムや紙、金属など多様な素材にコーティング(塗工)を施す製造業の現場にとって、なくてはならない存在です。
特にその中核となる「アプリケータロール部材」は、塗工厚の均一性や生産性、さらには製品品質そのものを左右します。

しかし、昭和時代から続くアナログな管理手法のままでは、思わぬトラブルやチャンスロスを生んでいるケースが少なくありません。
本記事では、コーターマシン現場で実際に起きている問題、そして時代の変化に即した改善ポイントを、長年の現場経験と業界動向を踏まえ現場目線で解説します。

アプリケータロールとは何か?

まず、基礎的な部分から整理します。
アプリケータロールとは、コーターマシンで塗工液をワーク(基材)上に転写する機能部品です。
ゴムやメタル、セラミックなど素材選定の幅が広く、塗布方式や液特性、ワーク素材に合わせて最適化されています。

一方で、その機能は「高精度化・安定化・長寿命」という現場要求との絶え間ないせめぎ合いでもあります。
わずかなコンディションの乱れや部材摩耗で「塗工厚のバラつき」が生じれば、品質不良や歩留まりの大幅低下につながるからです。

アプリケータロール部材で起きている主な問題点

現場目線で見ていくと、アプリケータロール部材に関する主な課題や悩みは、以下のようなものに集約されます。

1. ロールの「面精度」不良による塗工厚ムラ

ロール表面の直径ムラ(真円度・円筒度)、表面粗さムラが発生すると、コーターマシンの心臓部が乱れます。
見落とされがちなのは、「ミクロン単位」での微細な凹凸でも工程仕上がりに大きな影響を及ぼすという点です。

古い設備や、定期メンテナンスの煩雑化による微妙な劣化進行も見逃せません。
昭和から続く「熟練者の手触りチェック」ではもうコントロールしきれない領域に入っているのです。

2. 表面のコート適性(濡れ性、不純物付着)

ロール表面の劣化や異物付着は、塗工液の濡れ性(付着状態)に大きく影響します。
使用初期には問題なくとも、長期運転によるワックス汚れ、静電気による粉じん付着、溶剤残渣などが表面に残ると、「目視不可のレベルで」塗工不良が多発します。

これは定期的なクリーニング・メンテナンス体制の不在だけでなく、現場の「見えないコスト意識」の低下がせめぎ合う問題です。

3. ゴム硬度・素材劣化と構造信頼性の課題

アプリケータロールのゴム部は、経時劣化や化学薬品、温度変化による疲労が避けられません。
摩耗の進行過程で硬度変化が起き、ロール圧や塗布厚管理がブレ始め「なぜ突然ムラが出たのか?」と現場が悩む事例が絶えません。

また、ゴム以外のセラミックや金属部でも、「溶射剥離」「クラック」「ピンホール」といった微細なトラブルサインを見逃すと、ロール自体の交換頻度やコスト増に直結します。

4. 交換・メンテナンスサイクルの非効率化

アプリケータロールに限った話ではありませんが、「いつまで使えるのか」「どこまで我慢できるか」の判断を現場任せにしている工場が案外多いのが実態です。
ロール1本で数十万円~数百万円の高額消耗材にも関わらず、曖昧な管理ルールが歩留まり不良や無駄な在庫・費用計上の温床となるケースは意外と多いです。

なぜ、こうした問題が温存されやすいのか?

多くの製造業工場では、「昭和型の現場力」=ベテラン作業者の技能と感覚に大きく依存した歴史があります。
一方で、市場競争の激化、グローバル調達、SDGs(持続可能性)対応など、外部環境が想像以上のスピードで変化しています。

その過程で下記のようなギャップが生じてしまうことが、問題温存の一因です。

– 部材規格や仕様が「昔ながらのテンプレ」でアップデートされていない
– 不具合解析やデータ蓄積が属人的で「ノウハウの見える化」が進まない
– サプライヤーとの擦り合わせも「阿吽の呼吸」になってしまい、不良時の根本原因追求が不十分
– 予防保全やデジタル化投資が「後回し」になりがち

現場では「変えるリスク」の方が「このままやるリスク」より大きい、という心理バイアスも働きやすいのです。

最新技術と業界動向:進化するアプリケータロール部材

一方で、時代は着実に前進しています。
デジタル化やサステナビリティ対応の潮流はロール部材の世界にも波及し、「見える化・最適化・持続化」がキーワードとなっています。

精度・機能が進化した新素材・新技術ロール

昨今では、従来のNR(天然ゴム)、NBR系合成ゴムに加え、EPDMやフッ素系、SiCコーティング、溶射セラミックなど多様化が進んでいます。
これにより、耐薬品性・耐久性・精密加工作性が向上し、数ミクロン以下の均一塗工が可能になりました。

また、デジタルセンシングを活用した「ロール表面状況の自動監視」「摩耗量見える化」などのスマートメンテナンスが、一部工場で導入され始めています。
同時に「環境対応型(リサイクル・省資源)」ロールの開発も加速しています。

サプライヤーとの連携刷新—購買・品質管理の新パラダイム

バイヤー視点で重要なのは、単なる価格交渉だけでなく「共創パートナー」としてサプライヤーの工場工程管理、分析・トレーサビリティ体制、短納期・小ロット対応力をきちんと精査・対話する姿勢です。
トラブル発生時も「点検データ共有」「分析結果オープン化」により問題構造そのものを可視化し、ともに長期最適解を追求する流れが世界的に広がっています。

また、IoT連携による消耗品自動発注やメンテナンス予実一元管理など、サプライチェーン全体でのDX化も日本の大手製造業で導入が加速しています。

現場で実践できる5つの「即効性」改善アクション

では、これら問題点を踏まえ、現場でも今すぐ実践できる改善アクションを提案します。

1. ロール管理台帳の「デジタル化」推進

部材ごとの装着日時・メンテ記録・摩耗進行データ・交換履歴をエクセルや専用ソフトで管理し、トラブルごとに「根拠ある」最適タイミングで交換してください。
ペーパー管理からデジタル転換するだけで、歩留まり改善・予兆保全につながります。

2. ロール表面の「可視化」検査体制の標準化

拡大鏡やマイクロスコープ、簡易表面粗さ計などで、「五感任せ」から「数値管理」へのアップグレードを図りましょう。
定期的なサンプリングチェックも忘れずに。

3. サプライヤー評価軸を「現場力+データ」で再設計

見積もり比較だけでなく、「異物検査体制」「管理工程」「ロール長期寿命実績」など定量データを必ず提示してもらいましょう。
現場現物現実(3現主義)で「本当に頼れる」パートナーか、バイヤーが目利きする時代です。

4. ロールごとの個体差分析(傾向管理)の強化

不具合ごとに「同じ型式、同じサプライヤー、だけど何度も同じ場所が悪くなる」など傾向が見えたら、個体差起因の不良か、工程全体のバランス不良かを必ず洗い出してください。
単なる部品交換で終わらせないことが重要です。

5. 塗工厚管理の自動計測・統計化の導入

自動厚み計や塗布ムラセンサーの導入、AIによる異常検知など「人の目」+「データ」の両輪で、人的ミスや見落としの削減に取り組みましょう。

まとめ:これからの製造現場とアプリケータロール部材管理

塗工厚を決するアプリケータロール部材の管理は、単なる消耗品扱いではなく、工場全体の収益・品質に直結する最重要テーマです。
現場力・買う力・つなぐ力を磨き、「昭和型の属人化」から「令和にふさわしい可視化・最適化」へ、発想転換することが製造業再生のカギとなります。

本記事が、現場の実践者、バイヤー志望者、そしてサプライヤーのみなさんにとって、新たな問題解決の一助となれば幸いです。
未来の“強いものづくり”現場を、一緒に作り上げていきましょう。

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